車で細い道を通った時。

運悪く、対向車がやってきた。

そのまますれ違える余裕がなかったので、

ちょっとしたスペースを見つけて、

対向車が通るのを待つことに。


しかし、


対向車の前には、

ゆっくりのんびり歩く、

おばあちゃんが一人。


背後から車が近づくことに、

まったく気づいていない。


対向車も、クラクションを鳴らすのは気が引けるのだろう。

ただ、ゆっくりのんびり進んでいる。


こりゃ、おばあちゃんに、

後ろから車が来ていることを知らせねば、

と思い、

だいぶ近づいたときに、


「う し ろ か ら 

く る ま」



と口をぱくぱくさせて訴えてみる。


すると、おばあちゃん、

一発で気づいてくれた。

そして、こっちを見て、

にこにこしながら、口を動かした。


「こ ん に ち は」


…、

いや、違うんだよおばあちゃん…。


「う し ろ!!」


言ってみたが、

またもや、にこにこしながら頭を下げている。


結局自分の横を笑顔で挨拶しながら、

通り過ぎて行った。


何か通じ合ったような、いないような。


「すれ違った12月6日は、読唇術記念日」