(「こら~、うちの娘に何をする~」からの続き)
会社で虐められ、家には居場所が無く、帰りの電車の中で男の姿を見つめている時間が、明子にとって唯一心が休まる時間となっていました。
たまに男が乗って来なかった時は、「残業かしら、休みなのかな」などと心ここにあらず。余計な心配をする明子。まだ幼い子供の様です。
この頃から、明子は「私の悩みなんて、この人の悩みに比べたら大した事ないのかも知れない」と思う様に成り、思い切って転属を申し出ようと言う気になっていました。
「ダメならダメでいいや、後の事はその時考えよう」と、昼休みに製造課長を訪ね、転属を願い出たのです。すると・・・。
「あ、そう、丁度良かった、検査班に欠員があってね、補充を考えていたんだよ、ついて来なさい」とあっけなく了承されました。
そして、「今からこちらで働いてもらうけどいいね、君の班長には私から言っておくから」。明子に文句があろう筈がありません。
こうして検査班で働く事になったのですが、てんてこ舞いしていたところに助っ人が現れたのです。検査班では誰もが歓迎してくれて、明子の悩みは1つ無くなったのでした。
時々前の班長が今の班長のところに来て何か話をしている様ですが、明子は気付かない振りをしていました。顔を見るのも嫌だったのです。
ある日の事、今の班長が「君は前の部署で優秀だった様だね、あっちの班長が褒めていたよ、毎日の様に君の事よろしくって言って来ているよ、良い子に来て貰ったなぁ~」。
「嘘でしょ、彼奴がそんな事言うなんて、それなら何で私の事虐めたのよ」と信用しない明子でした。と言うより、そんな事如何でも良かったのです。
仕事は前よりもハードでしたが、彼奴に遭わなくて良い事が嬉しくてたまりませんでした。「これで会社辞めなくてもやっていけそう」と心の平穏が訪れたのです。
そして帰りには僅かな時間とは言え、遇いたい人の姿を追って至福の時を過ごすのです。ささやかな幸でした。
そんな時、父と母に呼ばれ、父が「お前に縁談話が来た」、「え、私まだ結婚なんてしたくないよ」、「何言ってるんだ、昔なら子供の一人や二人居ていい歳だ、今度の日曜日だぞ」、「・・・」。
今と違って、この頃は親の言う事は絶対です。明子は何も言えませんでした。「結婚なんて」と呟く明子の脳裏には、電車の中で見かける男の事が・・・」。思わず頭を抱える明子。
「神様、如何かこの縁談が上手く行きません様に」と本気で願う明子。「私って如何して何時もこうなのかしら、やっと平穏が訪れたと思ったのに」。しかし、最早如何にも成りません。
翌日、仕事が手につかず、初めて会社で叱られました。帰りの電車でも男には遇う事が出来ず、何故かこれ以降見かける事はありませんでした。
そしてとうとう縁談の日がやって来たのです。自分の運命を恨む明子。
父と母に連れられ、項垂れながら席に着く明子。「もう終わりだ」と悲しみに浸る明子。ふと相手の顔を見た途端・・・。
びっくりして顔を伏せた明子の顔は、恥ずかしさと嬉しさでみるみる紅潮して行くのでした。「嘘~、何であの人が」。 そう、目の前には電車の中で恋い焦がれていた男が・・・。
神様と言うものは、時として悪戯をするのですね。そして、明子の願いを叶えてくれたのです。喜びに胸震える明子の耳に飛び込んできた言葉。
「私の縁談の御挨拶に伺ったのですが、何かの手違いがあった様ですね、娘さんはまだお若くて、私の様な年寄りには不釣り合いです、御仲人さんには私から文句を言っておきますので、如何かお許しください」。
「え、何、何で・・・」。明子の心が伝わったのか父が「君は私の娘が気に入らないと言うのかね」。それにこたえる様に男が「貴方はこんな年寄りに大事な娘を預けられるのですか、私なら御免被りますよ」。
更に、「本当に失礼いたしました、必要ならば御仲人共々改めて御詫びに上がりますので、今日はこれで失礼させていただきます」と言って席を立ってしまったのです。それを追いかける母。
何と言う事でしょう。明子は地獄から天国へ上ったと思ったのも束の間、今度は奈落の底へと叩き落されたのです。
神とは人間よりも残忍なものなのかも知れませんね。でも、縁談が上手く行かない様に願ったのは明子自身なのです。自業自得と言うものでしょうか。
神は明子の願いを救い上げただけなのです。信じる者は救われるのですね。
(つづく)
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