認知症の高齢者 10年で倍増 | ラフィーネさんのブログ

認知症の高齢者 10年で倍増

前回、もの忘れ・認知症について書いたその日、
「認知症の高齢者、300万人超す 10年で倍増」
というタイトルの新聞記事を見つけ驚きました。

「認知症の高齢者が300万人を超えたことが24日、厚
生労働省の推計で分かった。149万人だった2002年か
ら10年間で倍増しており、65歳以上人口に占める割合
は約10%になった。従来の予測を上回って急増……」
(日本経済新聞、8月24日)

高齢者の10人に1人の割合かぁ……!
この数字、他人事にするには高すぎますよね。

T生、20年程前に取材した医師を思い出しました。
青梅慶友病院院長(当時)・大塚宣夫医師です。

当時、自宅で親を介護ずることの大変さが話題でした。
特にアルツハイマーの呆け老人が夜中に徘徊し、
家人は24時間気の休まることがなく、
共倒れになるケースが注目されていたのです。

「面白いお医者さんがいるから取材してみたら」と、
知人から大塚医師を紹介されました。

大塚医師は内科医としての研修を終えたのち、
自分はどういう医療にかかわっていこうかと考え、
日本が高齢化社会を迎えるのならばと、
老人医療に興味を持ったと言います。

そこでいろいろな老人病院を見学し、
自分なりの実態調査をしたそうです。
そこで大きな疑問を持ちました。

ある老人病院でのことです。
「あれ、なぜに静かできれいなんだろう?」
本来、呆け老人がいれば徘徊はあるし、
きれいな生活はあり得ないはずだからです。

その病院では病気の老人をクスリで抑えていたのでした。
この状態で何年かするとお亡くなりになります。
家人も困って入院させていますから文句は出ません。

このような老人病院が結構あったそうです。

大塚医師はこうであってはならないと考えました。
どういう病院経営がよいかを学ぶために留学。
帰国後、患者主体の病院を設立します。
それが青梅慶友病院でした。


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(ミソハギ、小石川植物園)

「患者を束縛しない老人病院」
「家族が安心して預けられる老人病院」
言うは易く、行うは難しです。

呆け老人は徘徊しますから、安全が大切になります。
階段に柵を設けたり、危険なものを置いておかないなど、
当時、いろいろな工夫をされていました。
また、呆け老人は下の世話を自分ではできないし、
食事も食べ散らかしたりします。

しかし、ワン・フロア内は患者を束縛することなく、
自由行動を確保していました。
病院スタッフの苦労は並大抵ではないはずです。

そこで、興味深いのは病院スタッフの採用方法です。
自分のポリシーに賛同できる人しか採用しません。
採用後のスタッフ教育にも熱心でした。

その語り口は静かでしたが、自分の経営方針を
社員に徹底しようとする経営者のそれでした。
したがってT生も医師というよりは経営者の話を
聞いているような気がしたものです。

その中で医師としてなるほどという言葉が2つありました。

「みなさん、年を取って呆けることを心配していますが、
呆けたらね、呆け勝ちなんですよ。徘徊することも、
身の回りが汚くなることも、本人の問題ではなくて、
周囲が困る問題です。本人はそんなことに頓着しません。
自由でさえあれば、意外と幸せなんですよ」

「ただね、家族の顔が分からなくなっていても、
感情は残っています。時折会いに来ていただいて、
話しかけたり、スキンシップすることで、
患者さんが落ち着き、幸せ感に満たされるのです。
ですから、呆けても放ったらかしにしてはいけません」

これらの話を聞いてT生も親の面倒を見てもらうなら、
大塚医師にお願いしたいと思ったものです。

事実、大塚医師のポリシーは患者家族に受け入れられ、
その時も病棟を建て増ししていました。
今回、ネットで調べてみましたら、
さらに大きくなり研究機関なども設立されていました。

現在、病院経営がどうなっているのかは知りません。
しかし、認知症の問題はさらに大きくなっています。
それだけに、もう一度、この20年のお話を
聞いてみたいと思ったものでした。