季節感あふれる杭州料理 | ラフィーネさんのブログ

季節感あふれる杭州料理

中国人スタッフQさんから聞いた帰省の話で、
一番興味深かったのは料理でした。

Qさんの故郷は浙江省の省都・杭州市です。
車で30分のところにある西湖に家族揃って行き、
杭州の老舗「楼外楼」で食事をしたそうです。

何を食べたのか料理名を書いてもらいました。

1.龍井蝦仁:龍井茶入り小エビの炒め物
2.東坡肉:豚ばら肉の角煮
3.干炸響鈴:湯葉の揚げ物
4.油煸笋:竹の子の軽い油炒め
5.西湖蒓菜湯:西湖で採れたじゅんさいのスープ

「東坡肉ぐらいしか分からないのですが……?」
「えっ、そうですか。みな地元の普通料理ですが…」

そこでネットや料理本をひっくり返して調べてみました。
中国料理の名称は慣れると分かりよいものです。
調理法、素材、形状などが当てられているからです。

1.龍井蝦仁
龍井茶は杭州市特産の緑茶の逸品。
春は若葉の摘み取り時期です。
周恩来がニクソン大統領を楼外楼でもてなし、
最も喜ばれたという春にふさわしい一品。
茶葉の香りがついて香ばしいそうです。

2.東坡肉
日本でもよく知られている豚の角煮、宋代の文人
蘇東坡の得意料理で、その名前が冠されています。
彼は杭州の地方官として任官していました。
西湖には白居易の「白堤」と彼の「蘇堤」があります。

3.干炸響鈴
干炸とは粉をまぶして油で揚げること。
響鈴とは湯葉を巻いて揚げた時の形が、
鈴を響かせるのに似ているのでこう名付けられました。
トマトソースをつけて食べるそうです。
杭州料理の名菜の一つです。

4.油煸笋
油煸とは油で軽く炒める調理法です。
春に出回る竹の子は「春笋」「毛笋」と呼ばれ、
杭州では春野菜の中でも特に珍重されるそうです。
日本でも竹の子といえば春ですよね。

5.西湖蒓菜湯
蒓菜は蓴菜とも書き、「じゅんさい」です。
じゅんさいは杭州周辺の湖で採れる特産です。
日本ではよく酢の物にし秋田産が知られています。
中国のものは少し葉が大きいようでスープにします。
この料理もまた春の風物詩と言ってよいでしょう。



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(西湖・楼外楼、百度百科「楼外楼」より)

こう解説をつけると気づくことがありませんか?

そうです、みな地元の春の特産品を、
料理に仕立てているのです。

日本でも最近よく「地産地消」という言葉が使われます。
おいしいだけでなく健康にもよいとされています。
Qさんは「ごく普通の料理」と言いましたが、
さすがに地元の人の注文です。

まして杭州が属する江南の地は「魚米の郷」と呼ばれ、
中国でも指折りの豊かな土地と言われています。
T生は北京にいたためにあまり南方料理を知らず、
理にかなった料理に感心してしまったのでした。

ちなみにネットで「楼外楼」を調べていましたら、
大正の末年、芥川龍之介も食事をしたというのです。
さっそく大阪毎日新聞に連載したという『江南遊記』を
紐解いてみましたら「西湖」の章にありました。

西湖を画舫で遊覧し、船頭の勧めもあり、
楼外楼で昼食をとったとのことです。
何を食したかは書かれていませんでしたが、
T生も一度は行ってみたいと思ったものでした。