人でもマウスでも生涯バックグラウンドの10-100倍程度の線量率を被ばくした時のリスクは同じ線量を高線量率で瞬間的に被ばくした原爆のリスクとは比べものにならないほど小さくなります。
このような逓減効果は線量率や照射時間によってどのように変化するのでしょうか?
マウスを使うと100万匹を使っても明確な結果は出せませんが、細胞を使えば100万個のデータをとることなど簡単で、線量、線量率、照射時間を様々に変化させたデータがとれます。
実際に、線量率を0.001-100Gy/h、線量を1-1000Gy、照射時間を0.02(72秒)-12000時間(500日)という範囲で変化させて、増殖阻害と染色体断裂の効果をみてみました1)。
染色体が切れたまま核分裂すると切れた染色体は娘細胞の核に入れずにその染色体だけを含む微小核を作ります。これを数えれば染色体断裂が数値化できます。
縦軸は中間効果線量(最大影響の半分の影響が出る線量)横軸は線量率です。幅広い値を表現できるように両方とも対数目盛りになっています。
中間効果線量は、1日以内に高線量率照射した場合には線量率によらず一定ですが、1ヶ月以上をかけて低線量率照射すると線量率によって決まり照射時間とともに大きくなっていくことがわかります。
リスクは、短時間の高線量率照射では線量で、長時間の低線量率照射では線量率で決まるのです。これをMOモデルと名付けました。
1) Magae et al, Radiat Res, 176:447(2011)
馬替生物科学研究所 所長
第1種放射線取扱主任者
馬替純二