トイガンバーBrenへようこそ
ここは、ある路地にある古いビルの地下にあるBARその名は「Bren」
私はマスターのCooperと申します。カウンターだけの小さな店ですが、トイガン、サブカル好きが夜な夜な酒を片手に、トイガンとサブカル談義をする、あの世とこの世の中間、そんなBAR
今宵はどんなお客様が来店するのでしょう。。。。。
今日は静かだ。いや、いつも静かなんだけどね^^;
暇に任せてJAZZをかける。ピアノの音色がすきなので、自然とビル・エバンスなどピアノ中心になっちまう。
少しボリュームを上げる。今では大きな部類になる、昭和の大きなスピーカー。親父の形見を店の天井から吊るしている。
日曜日の午後はピアノJAZZか、ボサノバと決めている。
ビル・エバンスのキレッキレのビアノを聞きながら、なんで尖った人は短命なんだろうか、なんて思う。
いや、そんな尖った才能だから周りからも理解されずに、命を縮めたのか。。。人は社会に関わっていきているから、どんなすごい人でも、決まったルールやしきたりからはみ出ることなく、ある意味制限のある中で、生きて、そして、自己実現しなくてはならないから、そうなれない人は、原因はわからないが、短命なんだろうな。
もしくは、人間は生まれたから、きっと運命の一つに、出会って親しくなる人の数が決まっているんじゃないかと思う。
その人数に達しないと、天国の、いや地獄も門が開かないんじゃないかなと思うようになってきた。
いや短命というのが勘違いなのかな。
いい人が短命なのは、人がいいので意外とクリアするのが早いのだろうなと、そんなことをつらつらと考えていた。
自分はもともと人と接するのが苦手なんだが、どういうわけか、接客の仕事が比較的多い。その時々興味のある仕事を選んでいるのだが、人とたくさん話しをするのが苦手なのに、だ。
仕事がら、人付き合いがよく、社交的だと思われているのも勘違い。
考えてみると、あれだ、知らない人とながながと話をするのが嫌いだからいまはバーテンなのかもしれないな
しかし、天才は、結局、周りか自分の勘違いなんだろうなと、最近思う。
なんて考えいてもしょうがない。せっかくなのでグラスを磨く。バーカウンターの下に箱があって、バカラのグラスが数個。これはヨーロッパにいたときに、購入したもので、なにか区切りのあるときに、取り出して使うようにしている。
一度割ってしまったが、バカラだと思ってしまっていた違うグラスだった。なので、今はきちんと分けてしまっているのだ。勘違いに救われた。
布できれいに定期的に磨いている。
グラスやトイガンを磨いて艶が出てくると気分も上がる。
小刻みにリズムを取って磨く。
カラン。
Cooper「いらっしゃいませ。おぉぉキングさん!!久しぶりです!」
キング「マスター元気だった??最近イベントも全然顔出さないね。あんまり顔出さないから来ちゃったよ。千葉から」
キングさんは、ガンショップのころ、お客さんとして、知り合った。ショップをやめたあとも、なんだかんだと腐れ縁。
私の中では、破天荒という単語ピッタリの人だった。
ひげを軽く蓄えているので、トランプのキングになぞらえてキングさんと呼ばれている。
本人は、コンバットのキングIIの意味だと言ってるのだが。。。
Cooper「珍しいですね。ご無沙汰です。娘さんはお元気ですか?」
キング「娘の結婚式依頼だな。なんか一人になっちまって少し寂しいけどな」
なつかしい。娘がひとり。離婚して今は独り身だ。昔から、とにかく生き方が破天荒な人だった。
トイガンの歴史そのものズバリのひとで、王道のMGCやCMCでも働いていたことがある人。
業界の裏話はほとんどキングさんから聞いている。
Cooper「キングさん、最近どうですか。まだ離れっ残っているんですか?」
キングさんは、自宅の庭に、倉庫兼、自分の部屋があって、そこがたまり場になっていた。そこにはベットと棚くらいしかなくて、でも多いときは、そこに5人も押しかけて、目の前のコンビニで缶コーヒーを買ってきて、壁に飾ってる、モデルガンの話で盛り上がるのだ。
その部屋の棚には、何かで強く叩いた傷があるが、それはMGCのベレッタM1943を撃っていたら、亜鉛合金のスライドが割れて後ろに飛んだときの傷らしい。
その話を聞いて、キングさんが「ベレッタはさぁ今さらブリガーディアとか言ってるけど、それはベレッタの弱点をもっと早くから知ってたんだよ」って自慢してた。
キング「もう30年前から壊すって話になっているけど、まだ残ってるよ」
キングさんの部屋のモデルガンは、ノーマルであっても、ひと手間かけて飾ってある。亜鉛合金は磨き込んでからリブルーで本体も、パーティングラインを完璧に消して、磨いて飾ってあるのだ。
ノーマルでも1丁を丁寧に仕上げて愛でるというのはこのキングさんから教わった。
キング「じゃマティーニ、ベルモットはね、、、、あれあれ、チンザノのロッゾ、ジンは、タンカレーにしようかな」
相変わらず細かい。
Cooper「承知いたしました」
マティーニは簡単に言うと、ジンとベルモットをステアしただけのカクテルなんだが、ビタースを垂らしたり、ベルモットの量を変えたり、ジンの種類を変えたり、一冊の本が出るくらいの奥が深いカクテル。
キングさんは、深夜プラス1ばりにヨーロッパよろしく、カクテルを頼んで、飲んでゆく。007世代でもあるのでたまにシェイクしてくれということも。
Cooper「おまたせしました。」
コースターと、グラスをおく。
キング「このあいだね、モデルガンの整備をして組み立ててホット一服しながら、そういえばと、WAのガバメントを取り出して、しばらく撃ってなかったから、手入れしようと思ったんだよ。それでね、1911だったんだけど、いじってオイル拭ったりしてから、何気なく、モデルガンの癖で、トリガー引いちゃったらたまがでてびっくりしてさ。俺二回目だけどやばいよなぁ」
Cooper「キングさん、それ、昔やって自分で怪我しましたよねw」
キングさんは割とおっちょこちょいで、勘違いだったよって話が多い人だ。
キング「マスタ、それ、いましまったの何?」
私は宅配便の袋を破った箱だけになったトイガンをバックヤード側に置こうとしていた。
Cooper「これ、みますか?懐かしいでしょ。」
WAAR7。水に浮くっていうライフル。
アメリカ空軍のパイロット向けのサバイバルセットに入れるとか入れないとかっていう触れ込みらしかったけど、結果どうなったかは知らない。
そのレアなモデルをWAがモデルガン化したのだった。もちろんストックに収納したら水に浮く。
キング「うわぁぁすごいね。綺麗だし。欲しくないけど興味あるな」
Cooper「ちょっとみてみますか。よいしょ」
私は箱から出したAR7をカウンターに置いた。ストックに分解されて収納された機関部とバレルを取り出して、組み立ててみた。
WAお得意のデトネーター式で、マイルドなブローバックシステム。ガツンと銃本体に負担がかからないように設計している。効果があったかどうかは不明だが。
キング「これだよな。俺が中学生のころMGCからM16が発売されたんだよ。文化祭に早速買ってきたやつがいて、教室の真ん中に展示したんだよ。E1を」
私はその当時のモノクロの写真を見せてもらったことがある。今よりキングさんは老けて見えていた。
キング「当時ね、ワイルド7で、M16は水に浮くんだって話が載っててね、みんな勘違いしちゃってたんだよ。
それでさ、ほんとにM16を水に沈めたやつがいるんだよwww」
Cooper「えぇぇぇぇ亜鉛合金でしょ。なんでそう思ったんでしょうね!」
キング「MGCのM16はちょっといい感じのグレーだったんだけど、マグネシュウム合金だって噂になったんだよ。いや、結局亜鉛合金だったんだけどw」
破天荒はキングさんだけではなくて、周りもそうだったのかww
私は、キングさんの好きなビーフジャーキーを出す。
キング「お、サンキューあれだな、やっぱ、酒にはジャーキー、そしてタバコだな」
キングさんは、細身のジッポーのライターを取り出す。昔からジッポークラブにも入っていて、今日はなぜかポール・スミスの刻印入り。
キング「これか?ほら、たまにやってる蚤の市でさぁ千円で売ってたんだよ。壊れてたけど、部品は俺の部屋にまだたくさんあるから、ちょっと直して、今使ってるんだ」
キングさん意外と、手先が器用な人なんだ。だいたいのことは自分でやってしまう。
キング「それでな、M16は水に浮くって中学生の俺たちはみんな疑わないんだよ。だって、望月三起也先生だぜ。間違ってるなんておもわないわな」
Cooper「本当に水に入れたんですか?」
キング「一応な、ビニール袋に入れたらしいけど、1秒も浮かなかったらしいよww
そんで、ちょっと濡れてしまったんだけど、お風呂だったから浴槽に油が浮いてお袋さんにガチで怒られたらしい。ほんと一瞬で沈んだらしいよ。」
Cooper「いや、やらなくてもわかるでしょwww」
キング「勘違いってこわいなww」
キングさんはビーフジャーキーをほぐして、ちびちびやりながら飲むのが好きなのだが、今日もそうやって飲んでいる。
キング「そいつ、風呂場で違う実験もやったんだよ。マルシンから最初のプラグファイヤーでP38出ただろ?あれ、水の中で打てるんじゃないかって、撃ってみたらしい。」
マルシンは中田のP38をモディファイしてABSのショートリコイルしないP38をプラグファイヤーカートリッジ搭載で発売したことがある。
ハンマースプリングの部分が一発で割れるという不良モデルガンだったが、マルシンは、不良に関しては、無料交換してくれた。
意外とあのP38は短命でおわって、すぐにNewP38が登場した。
Cooper「え?どうなったんですか?」
キング「それがさ、ちゃんと排莢するんだって。水の抵抗もあるんだろうけど、ちゃんと発火してブローバックして排莢するらしい。そして、また油がういて、お袋さんに叱られたらしい。いい大人が!!ってw」
本当に初期のプラグファイヤーは完全閉鎖だったのかww
音もせず、ガスも出ず。どう考えてもまだ開発途中の製品と思えるけど、そんなことどうでもいいくらいに、簡単にブローバックして安定していたのだ。
地方では、平玉火薬しか手に入らなかったが、それも3発で見事にブローバックしていた。
Cooper「まさかちゃんとブローバックするなんて。。。。驚きですね。」
キング「もう一杯くれ。そうだな、次はベルモットはそのまま、ジンをビーフィーターに変えてくれ。そうだよ。先入観があっちゃいけないからな。勘違いのもと、きになったら自分の目で確かめる、だよw」
おっとオリーブを切らせてしまった。
Cooper「キングさんすいません、オリーブがないです。」
キング「あぁぁいいよ。俺はなくてもいい方の人だから」
Cooper「しかし、そりゃ面白いですね。ベレッタのスライドが飛んだのも実験だったんですか?」
マティーニを一口へ運んだキングさん、
キング「あれはさぁ、調子悪かったんだよね、最初。バッファーなしだったんだよ。マスターはゴムのバファは知ってるだろ?実はバネのバッファもあってね、やっぱ割れたんだよね。ちょっと調子悪かったけど平玉増やしたらすごく調子良くなったんだよ。で、かっこいいなって、横から見て一発撃ったら、それがあたりでさぁその時スライドがぶっ飛んだんだよ」
偶然とはいえ、キングさんは運がいいんだろうな。当時は平玉火薬をしこたま詰めて撃ってたらしい。PMも相当な量で発火させていたのだけど、かの、中東のほうのカスタムは興味がなかったらしい。
勘違いでM16を水に沈めた話は、ありそうでなかったのだけど、キングさんの友達がやっていたなんて、ほんと、ネタとしては最高だ。
情報が少ない当時、いろんな勘違いがあったんだと思う。何しろまだ1ドル350円とか円の持ち出し制限とかあった時代があるわけで、キングさんも、そんな時代にHAWAIIでホルスターを購入してきた人だった。
HAWAIIのガンショップ(観光客が間違っても行かないようなところ)でショルダーホルスターを購入しようとしたら、何に使うんだってしつこかったらしい。で適当に、Kフレあたりの話をしたらOKってなって購入、その時の店員が、お前はどこから来たんだと聞くから日本から来たと答えたら、さっき見せた銃を買っていけってしつこく勧められたらしい。で、拙い英語で日本では政府が許可していない(単語がわからずこんな表現になったらしいw)と幾らいっても大丈夫、アメリカだって拳銃なんてスーパーマーケットだって買えるんだしって譲らなかったらしい。
そして、日本人も普通に銃を自宅に持っていると思っていたらしい。
勘違い。
その店員は、じゃ日本人はどうやって家族を守るんだって言ったらしい。
間違いや勘違いはネガティブな話になりがちだけど、ときが経てば酒のつまみになる。
to be continued・・・・・・