ALFAループの作り方 | radionojikanのブログ

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Ⅰはじめに

(1)ALFAループの名前

ALFAループは、中波短波受信用アンテナです。平衡型シールドループエレメントあるいはメビウス型エレメントとアンプで構成しています。アンプ部の基本はChris Traskが特許を取得したAugmented Lossless Feedback Amplifierの歪改善回路を参考にしたことから、頭文字をとってALFAループとしました。

 

(2)これまでの経緯

 仙台の中波強電界地域に引っ越したことから混変調がひどくBCLが出来ない状況でした。

(写真は20kwの強力な電波を出す原町送信所のアンテナ)

 

 この状況を改善するためトロ活に記載されている「トランス帰還のNFBアンプ」を作成しました。これが中波から短波まで良く聞こえる静かなアンプだったので、高周波用トランジスタ2SC3355のパラレル接続に変更し短波帯でのゲインの改善を図りました。その後、歪改善回路の実験を繰り返し、ようやくALFAループが出来上がりました。ここで、満足がいく結果が得られましたので、作り方を備忘としてブログにアップすることにしました。

 この歪改善回路がどの程度機能しているか測定するためには、ツートーンジェネレーターとスペアナが必要ですが、測定機器を持ち合わせていないため測定・確認ができず、回路が機能しているかどうかの確証が持てません。そのため、回路図をUPするかどうか悩みましたが、参考程度になればと思いUPすることにしました。ですので、作成は測定できる環境をお持ちで、自己責任で作成できる方のみお願いいたします。

 

ⅡALFAループの概要

(1)ALFAループの概略図

 現在使用しているALFAループの概略図です。

 

(2)ALFAループの特徴

 基本は、トロ活に記載されているトランス帰還のNFBアンプにFair Rite社の2843-002-402を使用した歪改善回路を付加した回路です。このアンプについてトロ活179頁では、「歪の原因はトランジスタのエミッタ部の非直線性にあるので、エミッタ―ベース間で負帰還をかけて低歪化しています。」と記載されています。実用化するため、平衡回路を強制バランで不平衡に変換する回路を付加するなど種々の変更を行っています。

 

Ⅱ室外ボックス

(1)回路図

 今回作成した回路図です。歪改善回路の検証ができていないので、おかしな部分があると思います。参考程度にとどめてください。

 

(回路図の修正変更履歴)

・2024年5月9日

 ベース接地回路のコンデンサ取付場所を変更しました。この変更により、歪改善回路がより機能しました。

 

・2024年5月16日

 電源回路の電解コンデンサを470uF/16V、インダクタを470uHに変更しました。この変更により僅かですがゲインUPと音質改善が図られました。

 

・2024年5月27日

 強制バランのトロイダルコアをFT50#43からFT50#61に変更しました。この変更により、ハイバンドでのゲインがアップし、昆変調が減少しました。

 エミッタ抵抗を510Ωから100Ωに変更するとともに場所を変更しました。

 電源回路の電解コンデンサ470uF/16vをOSコンに変更しました。

 

(2)トランジスタ

 このアンプで使用したトランジスタは、ユニソニックの高周波用2SC3355です。このトランジスタのFtは7GHzあり短波帯のゲインが十分得られます。またパッケージがTO-92で変換基板を必要としないので製作が容易になります。

 このトランジスタのピンアサインは通常のECBとは異なり、BECなので注意が必要です。

 東芝製のデータシートから転載したピンアサインです。ユニソニック製も同じです。

 

 この回路でBEC各電圧は、B=2.44v E=1.72v C=9.48vです。回路を作成し、DMMで電圧を測りこの値になっていれば直流回路に誤りはないと思います。

 

(3)トランス

①NFB回路に使用しているトランスは、FB801#43を使用しています。インピーダンスは、IN=200Ω OUT=50Ωで計算しました。IN=200Ωとした理由は、自由空間のインピーダンス=367Ωにループアンテナノートン等価回路の4Ω合計で371Ω、凡そ400Ωになります。トランジスタから見た場合、ホットとコールドで平衡駆動することから半分の200Ωで計算しました。

 巻き数は、1:N:M=1T:13T:2TでIN=200Ω OUT=50Ωに整合します。電力利得は16倍です。電力利得を上げるためMを3Tとして計算するとN=32Tになり、かなり細いUEWを使用しないと巻くことができません。

 

②歪改善回路に使用しているトランスは、Fair-Rite社2843-002-402を使用しました。

 巻き数はChris Traskが記載したものをそのまま使用し、実験していません。このコアは小さいのでΦ0.15mmのUEWが必要になります。

 

③強制バランは、フェライトコアFT50#61を使用し、平衡回路を不平衡回路に変換します。強制バランについてはトロ活364頁で、「バランの入・出力端で平衡・不平衡の回路の属性がはっきりしているときに用いられ、このような組み合わせのときのアンテナは完全な平衡型で駆動され、また信号源は完全な不平衡型に強制され、同相電流の発生原因が断たれます。」と記載されています。トランスコンバイナから強制バランに変更したことにより、中波から短波帯まで全体のゲインがUPし、かつ、ノイズが減少しました。

 

(4)トランスの作り方

①負帰還回路のトランスはAmidon社のFB-801-43を使用します。トロ活ではFB-801-43と表記されていますが、Amidon社のカタログNo.が変更になったのでしょうか。秋月では、FB-43-801と表記しています。千石の店頭ではFB-801-43と記載されていた記憶があります。

 AL値は、トロ活では1550、秋月では1380、千石では1565です。少しずつ違っているので微妙です。今回は秋月のものを使用しています。

 フェライトビーズFB801#43をボンドでつけて2個作ります。

 巻き始める前にコアにマジックで巻き初めのしるしをつけると間違いがなくなります。

 0.15mmUEWを使って、初めに奥の足を1T(T=Turnの略)巻きます。次に手前の足ですが左3番、中4番、右5番になります。3番から13T巻いて4番にタップを出します。続いて2T巻いて5番の足にします。

 巻き終わったトランスは、マスキングテープで巻いて保護すると良いでしょう。

 

②歪改善回路のトランスは、Fair-Rite社2843-002-402を使用します。

 

 0.15mmUEWを使って1次は左側から4T巻き、2次は右側から8T巻きます。写真のようにエミッタに4T側、ベースに8T側をはんだ付けします。8T側にマジックでしるしをつけておけば、はんだ付けの際に間違うことはないと思います。

 

 

③強制バランは、FT50#61を2個使用します。下限周波数を下げるためUEW0.15mm トリファイラ巻きで32T巻きます。32T巻くことで130uHのインダクタンスを得ることができました。計算した下限周波数はおよそ300kHzになります。

 巻き終わったコイルです。巻き方や接続方法については、ワイヤと巻き数が異なるだけで下の(参考)に記載のFT50#43と同じです。ラッピングワイヤは色がわかりやすいので、参考にしてください。UEWは、巻き始める前にマジックで色分けしないと、わからなくなります。巻き終わってからDMMで導通をチェックして識別しても良いですが。

 

(参考)

トロイダルコアFT50#43を2個使用します。2個をボンドで張り合わせ重ねることでAL値が増え、ケーブルの巻き数が減ることによる短波帯でのゲインUPを目指しました。

 FT50#43を2個ボンドで接着します。

 0.26mmラッピングワイヤーを3色用意します。今回は青、白、黄色を使用しました。

 青、白、赤を使用するとフランス、緑、白、赤を使用するとイタリアです。好きな色を使うと良いと思います。

 ハンドドリルに挟んでぐるぐる回すとよじることができます。ハンドドリルを持っていない場合は、ボールペンやねじ回しに3本を結んで回すと良いと思います。

 反対側は万力に挟んで固定しています。固定できれば万力である必要はありません。

 ワイヤーをトロイダルコアに7T巻いた写真です。

 接続方法は、表側の白と裏側の青、表側の黄色と裏側の白をはんだ付けします。

 基板の接続方法です。青はアンプ出力(ホット側、FB801#43で作ったトランス4番)に接続し、白+青はコンデンサ(0.01uF)でGNDに接地されているランドに接続します。

 白+黄はアンプ出力(コールド側、FB801#43で作ったトランス4番)に接続し、黄はコンデンサ(0.01uF)を介してBNCに接続しているランドにはんだ付けします。

 

(5)基板の作り方

①ランドパターン

 銅箔テープで作ったランドパターンです。この写真から若干変更があります。

 

②基板の写真

 

 部品を載せた基板です。電源部分のランドを変更しました。

 

③実体配線図

 値を記載するとごちゃごちゃになるので、記載していません。コンデンサの色が写真と異なりますが、気にしなくて結構です。

 

(6)バンドエルミネートフィルタ

①インダクタの作り方

 相互変調歪への対応として、アンプのゲインを絞ることはせず、バンドエルミネートフィルタで対応することにしました。コイルはT50#2を使用します。

 T50#2はカーボニル鉄で、891kHzを阻止するために10uHのコイルを作りました。0.29mmのUEWを使用して51T巻いたところ、10.1uHのインダクタンスを得ることが出来ました。0.29mmではこれが巻き数の限界かと思います。

 

②基板の写真

 左のコイルは10.1uHですが、右は同じ51Tでも10.6uHになりました。手巻きなので均一にならず、若干の相違が生じます。

 出来上がったらマスキングテープで巻いて、両面テープで基板に貼り付け固定します。周波数の調整はトリマコンデンサで行っています。

 

③定数の計算方法

 回路図は大川電子設計様のサイトで計算いたしました。

 

④作ったフィルタの周波数特性

参考)実測した周波数特性です。

 

⑤バンドエルミネートフィルタとALFAループ基板の接続方法

 黄色ケーブルでF型接栓からフィルタ基板にはんだ付けします。緑色ケーブルでフィルタ基板からALFAループ基板にはんだ付けします。青色ケーブルでフィルタ基板のGNDからALFAループ基板のGNDに接続します。(写真には写っていませんが、青色ケーブルがつながっているピンヘッダは基板裏側でGNDに接続しています。)また、シャーシアースは青色ケーブルでフィルタ基板のGNDからRCA端子側にアースします。今回はRCA端子を利用してアースを取りましたが、F型接栓側を利用しても構いません。

 

(7)ALFAループ基板の部品表

部品番号

備考

R1

20k

カーボン1/4w

R2

51k

カーボン1/4w

R3

120

カーボン1/4w

R4

120

カーボン1/4w

R5

100

カーボン1/4w

R6

100

カーボン1/4w

C1

0.01u(103)

セラミック

C2

0.1u(104)

セラミック

C3

10u(106)

セラミック

C4

2700p(272)

セラミック

C5

100p(101)

セラミック

C6

0.01u(103)

セラミック

C7

0.1u(104)

セラミック

C8

10u(106)

セラミック

C9

0.01u(103)

セラミック

C10

0.1u(104)

セラミック

C11

470uF

OSコン 16v

C12

0.1u(104)

セラミック

C13

1u(105)

セラミック

C14

0.01u(103)

セラミック

C15

0.01u(103)

セラミック

C16

100p(101)

セラミック

C17

0.1u(104)

セラミック

C18

1u(105)

セラミック

C19

0.01u(103)

セラミック

C20

0.1u(104)

セラミック

C21

10u(106)

セラミック

インダクタ

470uH

アキシャルリードタイプ

Q1,Q2,Q3,Q4

2SC3355

NPNトランジスタ

フェライトビーズ

FB801#43

4個

メガネコア

2843-002-402

2個

トロイダルコア

FT50#61

2個

D1,D2,D3,D4

1ss178

4個

F型接栓

 

2個

RCAコネクタ

 

1個

 2SC3355版トランスNFBアンプに比べて、コンデンサが多くなりました。

 

 

Ⅲ室内ボックス

(1)実体配線図

 オーディオクラフト工房様が公開しているノイズ対策を施しています。

 

(2)作成中の室内ボックス基板

 12VのACアダプタから三端子レギュレータで10Vを作り、室外ボックスに供給します。

 

(3)接続するための端子

 室内ボックスの写真です。100均のブリキ缶を使用しています。手前の金色端子がRCAで、室外ボックスに接続します。右奥がBNC端子で受信機に接続します。

 

(4)室内ボックスの内部

 ケース内部の様子です。

 

(5)室外ボックスの端子

 実験用の室外ボックスのケースなので汚くて申し訳ありません。左がRCAコネクタで室内ボックスと室外ボックスを1.5D2V同軸ケーブルで接続します。右のF型接栓に平衡型シールドループエレメントを接続します。

 

Ⅳエレメントの作り方

 切りかけの部分は、写真のように芯線と網線を交差させるとメビウス型になります。芯線同士をつないで網線をオープンにすると平衡型になります。

 F型接栓が付いたケーブルはホームセンターや電気店で売られていますので、簡単にエレメントが作れます。

 アンテナの支柱パイプに取り付けた写真です。準備するケーブルの長さによりいろいろな円周長のアンテナの実験が可能になります。

 

Ⅴ道具

 一番大切な道具は自分の手です。

 次に大切なものは老眼鏡と虫眼鏡です。最後にトランスを巻く根気があれば十分。トロ(イダルコア)巻きが面倒。

 

Ⅵ使用した感想

 短波帯は13mバンドまで周波数特性が伸び、良好に聞こえています。

 これ一台で中波から短波まで良く聞こえる非同調広帯域アンプになりました。まだ検証したいところがありますが、とりあえず作り方を取りまとめました。

 

 製作は自己責任でお願いいたします。