トランス帰還のNFBアンプ(作り方) | radionojikanのブログ

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 トランス帰還のNFBアンプの作り方を備忘録として一枚にまとめることにしました。今後、少しずつ追加記載していく予定にしていますが、途中で挫折するかもしれません。

 

Ⅰ 回路図

(回路の説明)

 ・ベース接地回路にトランス帰還のNFBをかけたアンプです。ベース接地回路の特徴は入力インピーダンスが低いことです。このベース接地アンプにトランス帰還のNFBをかけることによりインターセプトポイントを改善することが可能となります。2SC4117BLの直線性と相まってさらに直線性が良くなります。詳しい説明は「定本トロイダル・コア活用百科」(以下「トロ活」と略す)178頁をご確認ください。

 当初、中波専用のアンプと考えていましたが、完成してみると意外と周波数特性が伸びており短波帯まで良好に受信できています。IC-R75に接続して聞いていますが、Sメーターの振れがあまりありません。しかし、ノイズが少ないので聞きやすい音になっています。ですので、Sメーターが盛大に振れた方が良い人にとっては、期待外れになると思います。また、中波強電界対策(お化け対策)を目標にしましたので、中波強電界地域以外でBCLを楽しんでいる人にとってはゲインが足りないと感じると思います。そのような環境では、この回路は合わないでしょう。

  

(回路図の修正変更履歴)

・回路図のR6とR8を1kΩ(1/4W)に変更しました。変更前は51Ω(1W)でした。エミッタに7.75Vかかるとすると、1kΩには0.00775A流れるので0.06Wになり1/4Wで十分です。指で触ってみましたが、発熱はありませんでした。

・2022年10月4日

入力段のコンデンサ0.01uF及びFB801-43を取りました。取って聞いたところ、見通しが良い聞きやすい音になった気がします。

・2022年10月10日

ベース接地回路のエミッタ抵抗51Ωを1kΩに変更し、コレクタ抵抗200Ωを120Ωに変更しました。変更の結果、若干ゲインが上がりました。

・2022年10月25日

エミフォロ回路のエミッタ抵抗1kΩを10kΩに変更。ベース接地回路のコレクタにトロ活で記載されているコンデンサを追加。変更の結果、周波数特性が伸びました。

・2023年3月29日

エミフォロ回路を除去しました。トランスでアウトプットインピーダンスが50Ωに整合されているためエミフォロ回路を除去しました。

・2023年8月31日

トランスコンバイナのFT50#43を2段スタック5Tに変更しました。また、カップリングコンデンサを取り外しました。この結果、周波数特性が伸び、かつ、音質が良くなりました。

・2023年9月19日

入力段にインピーダンスマッチング回路を付けました。FB801#43とコンデンサ0.022uFでハイパス型を付けました。また。Reを510Ωに変更しIcを増やしました。この結果、信号強度が弱い放送局も拾えるようになりました。

・2023年10月12日

上記(2023年9月19日)のハイパスフィルタを削除し、トランスの巻き数変更を行いました。この結果、ハイパスフィルタよりも感度がUPしました。バイアス電源用抵抗器20kΩを赤色LEDに変更しました。この結果、低音のふくらみが増加し聞きやすい音になりました。

・2023年10月26日

トランスコンバイナに33pのコンデンサを付加しました。これにより短波帯での周波数特性が伸びました。

・2023年11月29日

カップリングコンデンサと過電流防止用のダイオードを付加しました。カップリングコンデンサの付加により、ゲインがUPしました。

・上記2023年11月29日記載のカップリングコンデンサについて、回路図に誤りがあったことから訂正しました。

 

 

Ⅱ 周波数特性

 LTSpiceでシミュレートした周波数特性です。500kHzから30MHzまで6.1dBから6.6dB程で推移し、高域での周波数特性が伸びました。

 

Ⅲ 混信の状況

 定数調整前に聞こえていた混信周波数について、Twin-Tノッチフィルタを挿入した後の混信状況は以下の通りです。

 現状、891kHzのTwin-Tノッチフィルタを入れて聞いた結果、中波帯の混信はなくなりました。しかし、3倍波に混信が残っており、2MHzから5MHzにかけて若干の混信が残っています。混信がなくなったことから、中波帯でのBCLが可能になりました。ちなみにNHK仙台の送信所は3km圏内にあり、NHK1(891kHz)が20kW、NHK2(1089kHz)が10kWなのでNHK1を減衰させることを目標にしました。

 

Ⅳ 実体配線図

 (1)ユニバーサル基板のはんだ面に銅箔テープを貼り、部品面にランドを作って作成する場合の実体配線図です。

 マイナスは裏面の銅箔(GND)に接続してください。プラスは裏面の銅箔(GND)に接続しないでください。ショートします。

 裏面には銅箔テープを貼り、最短でGNDに落とすようにしています。千枚通しで銅箔に穴をあけ部品の足を差し込んではんだ付けしています。上の実体配線図と異なるのは、120Ωの抵抗器です。実物写真は120Ωを持っていなかったので、100Ωと20Ωを直列に繋げて使っており、V字のようになっている抵抗器です。

 また、写真はC14(33p)及びカップリングコンデンサとダイードが取り付けられる前です。後ほど、取り付けた写真を載せます。

 

 (2)ユニバーサル基板で配線する場合

 ユニバーサル基板で配線する場合の実体配線図を作成しました。部品の配置については、もう少し良い配置があると思います。ベタアース基板で作成するともっと周波数特性が伸びるでしょう。

 (作成上の留意点)

 ・タンタルコンデンサと電解コンデンサには極性がありますので、プラスとマイナスを間違えないようにしてください。

 ・トランスについても番号を付けていますので巻き始めと巻き終わりを間違えないようにしてください。1,2番を巻いた後に、3番が巻き初めで21T巻いてタップ4番を出します。その後、2T巻いて5番で巻き終わりになります。1番と2番は1Tなので3番の反対側が1番になります。

 ・出力端子については、作りやすさと入手しやすさから1.5D2Vなどの同軸ケーブルを想定して電源と重畳させています。

 ・C3とC6,C9(10uF)について、電解コンデンサを使用していますが「トロ活」ではタンタルコンデンサを指定していますので、後日、タンタルに変更を予定しています。タンタルコンデンサは極性を間違えると発火する危険がありますので、不安な方はセラミックコンデンサを使用して下さい。

 ・C12のコンデンサは、電解コンデンサを使用して下さい。

 

 

Ⅴ部品表

 部品表です。参考まで。

 

 Ⅵトランジスタ

 使用するトランジスタは2SC4117BLです。

 秋月電子で購入が可能です。以前は10個入り150円でしたが最近は100円になっているようです。データシートは秋月のサイトで閲覧が可能になっています。

 LTSpiceモデルは、東芝のサイトで入手可能です。

 チップ部品なので変換基板に載せて使うことになりますが、写真のように変換基板にトランジスタ記号を書いておくと後々管理がしやすくなります。

変換基板に錫メッキ線の足を取り付ける作業をしています。 ユニバーサル基板に足を刺して作りました。 写真の青い両面スルーホール上ではんだ付けすると基板までくっついてしまいます。 なので、写真のように紙フェノール面ではんだ付けをして下さい。

 足の上に変換基板を乗せて一気にはんだ付けを行います。

出来上がった基板です。 足は左からエミッタ、コレクタ、ベースつまりエクボの順番になります。 変換基板がFET用なのでSDGと記載されていますが、無視してください。 この変換基板はアイテンドーで購入しましたが、入手しやすい基板を使用すればいいと思います。

 変換基板によってはエクボにならないケースがあるかもしれないので念のため2SC4117BLのピンアサインを載せます。

 

Ⅶ hFEの測定方法

 hFEを揃えることでゲインが揃うことから、差動回路でノイズ低減が可能になります。

 hFEを測定するためには、写真左の測定器がついたDMMがあります。 秋葉原で千円以下で購入可能です。丸い青い部分にトランジスタをさして測定します。あるいは、右のような基板を作っても良いと思います。

 私はペルケさんのサイトで公開されている測定器を使用しました。ペルケ式ヘッドホンアンプやTR式ミニワッターでペア取りするため作成しました。出番は少ないのですが、あると重宝します。秋月から購入した2SC4117BLを測ったところ、30個測定して6ペア程揃いました。2袋(20個)もあれば十分と思います。測定した結果はおよそ400から430くらいの間でしたデータシートでは、BLは350から700と記載されているので範囲内です

 オーディオアンプを作る人から見るとペア取りするのは普通ですが、BCL界では少数派かもしれません。

 

Ⅷ トランスについて

 トランスはAmidon社のFB-801-43を使用します。トロ活ではFB-801-43と表記されていますが、Amidon社のカタログNo.が変更になったのでしょうか。秋月では、FB-43-801と表記しています。千石の店頭ではFB-801-43と記載されていた記憶があります。

 AL値は、トロ活では1550、秋月では1380、千石では1565です。少しずつ違っているので微妙です。今回は秋月のものを使用しています。

 フェライトビーズをボンドでつけて2個作ります。

 巻き始める前にコアにマジックで巻き初めのしるしをつけると間違いがなくなります。

 0.15mmUEWを使って、初めに奥の足を1T巻きます。次に手前の足ですが左3番、中4番、右5番になります。3番から21T巻いて4番にタップを出します。続いて2T巻いて5番の足にします。

 巻き数については、平衡型シールドループアンテナが凡そ300Ω、負荷抵抗を50Ωで整合するように計算しています。

 

 トランス帰還のNFBアンプの基本原理はDavid Nortonが発明した回路です。負帰還がかかっているため低歪で、3次相互変調歪の入力インターセプト・ポイントは+30dBmという報告があります。この回路をプッシュプルにすることで入力インターセプト・ポイントが+50dBmを超えることが可能になります。(トロ活から引用)

 

Ⅸ Twin-Tノッチフィルタ

 この回路には特段変わったところはなく、一般的な回路になっています。設計通りの抵抗値を作るため、抵抗器は3個でワンセットにしています。オペアンプTSH82IDTを使用し891kHzを抑制する値を計算しました。他の周波数を抑制する場合には再計算が必要になります。

 TSH82IDTは単電源(定格12V)ですのでトランス帰還のNFBアンプの10V電源を共用できます。注意点としては、電源ノイズを拾わないようにすることです。トランス帰還のNFBアンプから電源を取る場合、インダクタとコンデンサで電源インピーダンスを下げた後から取ってください。

 きっちり調整するとSメーター読みでゼロまで抑制できますが、そこまで調整する必要はなく、ほどほどのところで調整すればいいかと思います。

 

Ⅹ トランスコンバイナの作り方

 トロイダルコアFT50#43を使用してトランスコンバイナを作成します。このコンバイナはパラレルに動かしているトランス帰還のNFBアンプのホット側とコールド側をコンバインする機能と同相信号(コモンモードノイズ)をエルミネートする機能があります。

 作り方は、FT50#43をボンドで2個接着します。固着したらトリファイラ巻き5回でトランスを作成します。巻き数に関しては数種類のトランスを作成してみましたが、5Tが短波帯まで良好に周波数が伸びていることを確認しています。

 

Ⅺ 工具

 必要な工具類を紹介します。

 はんだと半田ごてです。写真のはんだごてはチップトランジスタを変換基板につけるための18Wの小さいものです。チップトランジスタが小さいため、小手先が交換できるものをお使いの場合は、先端が細いものを使用したほうが失敗しないと思います。

 左からラジオペンチ、ニッパー、ワイヤストリッパーです。ラジオペンチは中学生の時に買ったものなので、かれこれ50年前のものです。チップトランジスタを基板に載せるのにピンセットもあった方が良いです。

 それから、老眼鏡とルーペです。若い人は不要です。写真のルーペは時計職人が使うタイプのもので、目にはめて押さえると両手が使えるので便利です。目視によるはんだ不良を確認するのに使えます。

 

Ⅻ 測定器具

 左からFLUKE 101(DMM)、Agilent U1731B(LCRメータ)、OWON HDS2102S(オシロ)です。少なくてもDMM(テスター)がないと電圧や導通のチェックが出来ないので必需品です。秋葉原に行くと千円以下で購入できるものもあります。LCRメータは自作コイルの測定に重宝します。オシロは持っていなくても大丈夫ですが、出力波形を確認することが出来るのでチェック範囲が広がります。10年以上も前から欲しかったのですが、じっと我慢して今年購入しました。10年も我慢していたら値段も随分下がり購入しやすくなっていました。

 

最後に

 製作は自己責任でお願いいたします。