地図上で和歌山県の海岸沿いにアメリカ村の地名を見つけたときは、高度経済成長期のリゾート開発の名残だと思っていた。

 

 ある時、NHK蘇る新日本紀行を見て、アメリカ村はカナダ移民を多く輩出した三尾村の別称で、本来『カナダ村』になるのだが、通称としてアメリカ村となったと。カナダガバメントから年金は来たか?と海辺で焚火を囲むお年寄りの英単語交じりの井戸端会議の風景が放映されていた。

 

 石川達三『蒼茫』、高橋三千綱『葡萄畑』、石川好『ストロベリーロード』・・・移民小説が好きだ。貧困や不条理の中に、何より情熱があふれている。やりきれない描写も多いが、移民たちの見せる情熱に心を動かされる。移民の故郷、アメリカ村を訪れたいと思った。

 

 御坊市のスポーツ公園に車を停めて走り出す。気持ち良い陽光だけど、走り出すと風は冷たく感じる。身体も温まる前に、すぐにアメリカ村に到着だ。

 

 村から日の岬にあるカナダ資料館へ向けて走りだす。

 

 海岸沿いを日の岬へ向けて走っていくと数台の車と行き違う。岬の先は行き止まりなので、みな目的は同じなのか。

 

 街から岬までずっと登りで、勾配が緩いかきついかどちらかだ。

 

日の岬は空と海はともに青く、沖には船の航跡が途絶えることがない。

 

 岬にあるカナダ資料館はすでに閉鎖されており、隣接の国民宿舎も閉鎖されていた。

 

アメリカ村に戻り、カナダミュージアムに立ち寄った。

 

 彼らが移り住んだカナダ・スティーブストンはイチロー選手が活躍したシアトルの近郊で、イチロー選手が移籍した時、シアトルは日系人が多くすごしやすいのではと報道されていたが、三尾村の方々が作り上げたコミュニティーが生きているんだと、複数のピースが繋がった。