この間読んだ作品があまりにも良過ぎて、文章化するのに
手間取ってしまい、7月中旬に5、6月分をアップします
この作家さんの作品3作目です。
2作目がいまいち好みではなかったことと
歴史が苦手な私が楽しめるとは思えなかったため
月刊誌の連載は第1話を読んだ段階で継続購読は断念しました。
ところが単行本になった際、さくちゃん推しの友達が
「これまでの作品のなかで一番おもしろかったよ」と話してくれました。
で、読み始めてみると…すごくおもしろかった
作者の色や影はほぼ感じず、ひとつのエンタメとして楽しめました。
歴史に詳しければもっとたのしめたのかもしれないけど
知らないからこそ「そうなんだ~」と思えることも多かったです
特撮映画のこと、神社のことなど詳しくて、驚きましたし
また、知らないことばの使い方がいくつかありました。
誤植?と思ったりして調べてみると、ちゃんと存在することばでした。
例えば、「たかさか」とか「あにはからんや」とか…
本当に広く、深い知識をお持ちだなと感心しました。
そんななか神様が「グズグズシナイデ」って、
とっても人間臭いことばを使っていて
クスッとしてしまいまいた
とにかく設定もストーリーもぶっとんでいて、あっぱれでした
でも最後の納め方は作者の優しさが表れているかなと…
すてきなきょうだい愛、家族愛の話でしたね。
作者が家族愛やきょうだい愛溢れるなかで
生きて来られたからかなぁ~という感想です
この本を読むきっかけは、芸人さん結婚発表コラムを読むために
手にした本の情報誌で目にしたんだと思います。
コロナ禍、正規雇用の場を得ていない40歳の独身女性が
将来に不安を抱き、家賃を抑えるため、
40歳以上の女性であることが入居条件であるシェアハウスに
移り住んだことから始まります。
いざ暮らし始めると住人たちはそれぞれ女性特有の様々な事情を
抱えていることが分かります。
一方で、自分はアルバイトをしながら、ここでの生活を続けるという
人生でよいのか、自分は何をやりたいのか?
これからの生き方を模索していた主人公がこのシェアハウスでの
生活、出会いをきっかけにやりたいことを
見つけていくというお話でした
主たる登場人物が40歳以上の女性だったので、共感できることが多く
特に抱えている不安については胸が痛くなることもあるくらいでした。
そのような箇所をメモ…
独身でアルバイト生活である自分の足場が弱いことへの
不安を語っている場面…
P254
どんなにがんばっても、未来は見えない。
努力したら夢をかなえてくれるほど、神様は優しくない。
積み上げてきたものが一瞬で崩れてしまうこともある。
先のことを考えれば、誰だって不安になる。
独身の女性が安心して暮らせる場所を増やしていきたい
という思いを語る場面
P262
健康で普通に生きてきた女性も苦しい思いをしていて、
将来に不安を感じている。
何か分かりやすい問題があれば、シェルターのようなところで
保護してもらえたり、公助を頼ることもできる。
でも、今は、そこまでではないところで、苦しんでいる人が
たくさんいる。
「大事なのは自分への信頼だ」
P266
夫の収入に頼らなくても生きていける、もしも離婚することになっても
困らずひとりで生きて暮らせる。
彼が急になくなってしまったとしても私の人生が
左右されることはない。
そう思えるから結婚生活が送れる。
もちろん、彼に対する信頼もある。
でも、一番大事なのは自分自身への信頼。
自分も女性を守る仕事を手伝っていきたいという思いを話す場面
P292
女性の差別や貧困に関する問題は根が深くて、
簡単に解決できることではありません。
高齢化も進んで、問題は増えていきます。
目を逸らして生きていく方が楽かもしれない。
でも、わたしは、知ってしまったし、考えるようになった。
そこから逃げたくないんです。
←「わたしは、知ってしまったし、考えるようになった。
そこから逃げたくない」
私が社会福祉の領域で仕事や考えることを続ける理由が
まさにコレだと思います
終盤になって、なぜここが独身女性しか入居できないのか、
その理由が分かり驚くとともにちょっぴり悲しく、切なくなりました。
しかし結果的には優しい気持ちになれました
また、私は共同生活の場の物語が好きなのかも?と気付きました。
お気に入りの本やドラマがシェアハウスを舞台にしていることが
多いですし、このブログで紹介している本のなかにも
共同生活の場を舞台にしていることが結構あるように思います。
これも買ってもいいかなと思えるくらい好きな作品でした
テーマがテーマだけにいつもどこか不安な影を感じる作品なのですが
かよさんが登場するとホッとするなぁ~
ずっと続いている話のなかに、サラッとした読み切り作品も
挟まれていました。
8050問題も取り上げられており、次号に続くのだけど、
どうなるんだろう?
また、最後の最後に久々の人も登場し、次号が楽しみです
TVドラマのseasoa2が放送されることを知った際に、
最新刊が出ることも知って購入。
ついに「コレ、私でも作れるかな」と思う料理が描かれているページに
付箋をはるまでになってしまいました
私より随分若かったおふたりも、今では私と同世代になり
愛情という感情を素直に出せるようになっているシロさん。
おまけに五十肩にもなっているし…
ひとりで生きていくことに特に困っていない私が
誰かと一緒に歳を重ねることの素敵さを感じさせてくれる作品です。
コロナが広がり始めた2020年3月頃が描かれていて
当時の不安を思い出しました。
いつもはマンガの部分だけを読むのだけれど
今回は各話の最後に書かれている記事(コラム?)も読みました。
コロナ禍の児相の実態や虐待の通報が減ったこと、
職員の苦労としてさらに子どもの様子を確認することが
難しくなったこと 保護所レベルでの苦労などなど
胸が痛くなるような実態が報告されていました。
児相は、私が大学卒業する段階で就職したいと希望していた職場です。
あのまま就職していたら、私に対応できただろうか?
現場で踏ん張っている人達には、ただただ脱帽です。
電車のなかで広告を見て予約しました。
いろいろな家族のあり方が描くことの多い作家さんですが
今回は「個」がメインだった気がします。
もちろんその「個」には家族がいて、家族関係や家庭環境も
描かれているのですが…。
自分には何の特徴も才能もないと思っている主人公が
もしかしたら自分は人の心が読める特殊な力が備わっているのかも?
と思い、その力を発揮していく、しかしそれは勘違いであり、
でも人の心が読めていないわけでもなく…
なぜ、人の気持ちが分かるのか?
それは目の前の人の思いに心を寄り添わせれから…
ということでしょうか?
それは、能力というより素質なのかなと思います。
そしてそれはとても素敵なことだと思います
バイト先のマスターは口も態度もとても悪いので、
アルバイトに入った人は長くても2日くらいで辞めるのに、
この主人公以外はマスターのことを嫌いながらも続けている。
それはマスターの言動に裏にある思いを考えたり
ちょっとした優しさに気付いたりできるから。
そこに新たなアルバイトの女性がやってくる。
彼女は人の心が読めない。それゆえマスターの嫌味にも
全く動じない。
主人公がそんな女性のことを心配し、思いやっていると
ある時、どこかから彼女の気持ちを代弁するような声が
聞こえるようになる。その声の正体は…
この部分がファンタジー過ぎて、そこはスッキリしませんでした。
その声が聴こえるということは特殊能力があるということになり、
この物語の主旨に反する気がするのですが…
女性のバイトさんが入ったことで、主人公とマスターとの関係性が
徐々に変化していく様はすごく好きでした
コイズミさんがポッドキャストで発信している
書籍関連の配信のなかから
独立系本屋の店主3名と女性作家との対談を書籍化したものです。
コイズミさんは人の家に行ったら本棚を見てしまうとのことですが、
私も同じです
対談の後に掲載されている一問一答の「初めて読んだ本は?」
という質問がその人の本棚を見ているようで嬉しい企画でした。
特に、自分で本屋さんをするような人がどんな本を挙げているのか
興味津々でしたが、個性的過ぎて私が読みたいなと思うような本は
なかったです
対談内容はおもしろく、記憶しておきたいことばがたくさん
●難解な本を読むことについて
最近の文学に慣れてしまうと、純文学に答えを見つけようとする
傾向がある。分からないことが楽しいのに。
「意味わかんない」、「難しかった」、「分からない」と
簡単な感想にしてしまう…今まで考えなかったことを
考えるチャンスなのに。
分かったものは頭のなかからなくなっちゃう。
理解できないものを取っておくというのは本を読む楽しみの
ひとつだし重要だ。
←私も(特に純文学について)簡単に「難しい」と
終わらせてしまうので、なるほどと納得。
「分からない」と感じた時にこのことばを思い出そう。
●ユーモアについて
SNSに批判的なことを書いていてもユーモアがあって「上手い」と
感心することがある。
ユーモアは大事。それは言葉に興味をもち、
言葉を知ろうとしないと行きつかないのではないか。
←ユーモアが大切というのは私も日々実感しています。
仕事をしているとシビアなことを伝える必要が出て来るのですが、
どう伝えるかが問われます。
伝えたい内容は同じでもどのようなことばで、どのような雰囲気で
伝えるかによって伝わり方が変わってきます。
ことばは時代とともに変化するものだけど、それを知らず、
また知ろうとせず、過去の使われ方にこだわっている人には
「ユーモア」を表することは難しいのかなと思います。
また、関西芸人に学んだユーモアのセンスはとても役に立ちます
●黒猫の話
黒猫は黒いから隠れるのが得意。
見つからないという自負があるらしく、だから他の種の猫より
危機管理能力が弱い。
ゆえに、自分の存在を容易に示す「しゃべる猫」はほぼ黒猫
←おもしろい話だなと思ってメモ
●自分の感情を言葉にすることについて(対談)
A:感情を広げるとめんどくさい気がして悩みなどを
言葉にしようとしなかった時期があった。
B::いちいち言葉にすることはどうかとも思う。
人に言わなくても自分の中で言語化することで知らなくていいこと、
気付かなくていいことに気がついてしまう。
言語化する時間があれば生きた方がいいのではないかと思う。
言葉の功罪。言葉に頼り過ぎることは危うさを伴う。
A:でもその言葉に救われるひともいる。
文字の一個ずつは記号なのに、音も含め音楽みたいになる。
人それぞれに同じことを言おうとしても違う音楽になるところが
面白い
←Bさんは作家でありながら、言葉に向き合うということと
相反する考えで興味深いです。
ちなみにこの対談相手のBさんは私が好きな作家さんです
この作家さんから「自分は言葉に頼り過ぎ」ということばが
何度も出て来て、そのことばに重みを感じました。
結局、それだけ言葉に向き合っているのだろうな~と思いました。
●雨粒を見るのが好き
窓ガラスに雨の粒が落ちてきて、それが次々に合体して
大きくなって速度が速くなるのは見ていて飽きない。
←私も
幼い頃、親の車で出かけている時に車窓に落ちて来る雨粒が
合体して速度を増して流れていく様を見続けるのが
とても好きだでした。
そういう時間の使い方はなくなってしまったな~
第二弾が発売されるので予約中です
次は、6月に読んだ本です
望む時に戻れる喫茶店シリーズの最新刊です。
①「離婚した両親に会いに行く少年」、②「亡くなった夫に
赤ちゃんと一緒に会いにいく女性」、③「結婚を許してくれなかった
父親を許せなかった娘」、④「自分から距離を置いてしまった
親友に会いに行く」の全4話
①少年が、再婚し幸せになっている両親に会いに行く理由に
泣けました。
子どもは子どもなりに親の幸せを願っているのですね。
オトナの事情で小さい子どもが小さい身体で
小さな胸を痛めているという描写は切な過ぎますね。
オトナにはオトナの事情があるのは仕方ないことですが、
その際「子どもには分からないだろう」ではなく、
子どもの心痛を慮れるかどうかが大切になると思います。
②誰かも一緒に過去に行けるという初のパターンです。
子どもが生まれる直前に亡くなった夫に名前を付けてもらおうと
過去に戻るお話。
夫はこの喫茶店のことは知っているため、
「会いに来られる=自分はこの世にいない」ことを
知らせに行くようなものなので、迷いに迷って…
会いに行く妻も、会いに来られたことを受け止める夫も
覚悟を要する話で胸が苦しかったです。
③自分の結婚を許してくれなかった父親を許せないまま
亡くしてしまった娘の話
支配的(だと感じていた)父親の反対を押し切って結婚したものの
うまくいかず、反対した父親の気持ちが分かった気がした娘と
反対したことを後悔し続けている父親が時間を遡って
再会するというお話。泣きに泣きました
④大好きだった親友に少しずつ嫉妬を抱き、
自らから距離をとってしまっていた女性
やっと出席する決意ができた同窓会でこの親友の想いを知り、
謝罪のためこの友に会いに行く。
その時にはもう…
でも、この親友にとって過去に戻って会いに来てくれたことで
想いを伝えることができ、心置きなく発つことができたのではないか
と思います。
グループホームで過ごすダウン症の主人公「ぼく」の、
新型コロナウィルスが一気に蔓延した2020年4月1日~5月31日の間の
食事のメニューと小さなエピソードが描かれた日記です。
同じ障害を持つ仲間やホーム職員、家族とのやりとりを、
時にユーモラスに、時にしんみりと表しています。
障害者と周囲との関係性、当事者の行動の背景にあるもの、
そして障害について理解のない世間と
温かく受け止める地域の実態が見えてきます。
真の意味で当事者とともに生きているからこそ
描くことができた作品だと思います。
『架空OL日記』を彷彿させる手法だなと思いました