最近、医学研究の投稿先として『Cureus』が注目されています。このオンラインジャーナルはスタンフォード大学の神経外科医によって創設されたオープンアクセスの医学誌です。現在、インパクトファクターが付与されており、特に症例報告の採択率が高く、査読から出版までのプロセスが迅速で、世界中の若手研究者や臨床医から支持を集めています。
『Cureus』は掲載料が基本的に無料ですが実際には、投稿後に「Preferred Editing Service」という編集サービスの利用を強く推奨(強制?)されるケースがほとんどです。このサービスが不要とされるケースは稀であり、事実上、この有料編集サービスを購入することで論文が査読に進む仕組みになっています。つまり、表向きは無料を謳いながらも、実質的には有料の出版モデルに近い形で運営されているのが実情です。
『Cureus』に対する評価は今のところ賛否両論です。最近では2年および5年のインパクトファクターが1.2と報告されており、一定の評価を得ていると思われます。しかし、査読プロセスが迅速な反面、掲載される論文の質にはかなりのばらつきがあることも指摘されています。
一部では査読の質の問題から、『Cureus』が「ハゲタカジャーナル(predatory journal)」に分類されるリスクを懸念する声もあります。(ハゲタカジャーナルとは、適切な査読を経ないまま高額な掲載料を目的として論文を量産する出版社(雑誌)を指します。)
しかし、『Cureus』はスタンフォード大学の研究者が創設し、一定のインパクトファクターを獲得している点で、典型的なハゲタカジャーナルとは一線を画しています。また、2019年からSpringerNatureグループと提携関係にあります。世界的な学術出版の大手であるSpringerNatureが関わっているという事実は、『Cureus』がハゲタカジャーナル化するリスクを大きく低減させる要因といえるでしょう。SpringerNatureは学術出版における高い評価基準を持っており、その傘下にあるジャーナルは一定の質が担保されると考えられます(考えたいものです)。
『Cureus』の提供する利便性と迅速性は、特定の状況では大きな価値があります。貴重な症例報告や有益な臨床知見が、従来のジャーナルの厳格な要件を満たさないという理由だけでお蔵入りするよりは、『Cureus』のような場で公開される方が医学界全体にとって有益といえるでしょう。特に臨床現場の実践知や教育的価値のある症例は、共有されることで多くの医療者の役に立つ可能性があります。
実際には論文の内容や目的に応じて投稿先を使い分けする方が賢明だと思われます。画期的な研究成果や長期的な学術評価を重視する場合は従来の評価の高い雑誌を選び、共有する価値のある臨床知見を迅速に発表したい場合は『Cureus』のような投稿先を選択するという戦略的な考え方が求められています。
『Cureus』に論文を連発している方もおられますが、分散投資ではないですが、分散投稿も考えてはいかがでしょうか。