母が肺癌末期で入院する少し前

お風呂に入るといつも口ずさんでいたの。

歌がとても上手だった母。

 

母の声は

私の声を少し落ち着いたトーンに変換した感じで

とても透明感のある声だったのよね。

 

母の声を聞いていると

満ち足りたほんわりした気分になって

辛い事や嫌な事があったとしても

サラッと溶けてきえちゃうし

何か大変な事や難しい事に挑戦する時も

絶対大丈夫!って勇気と自信がわいてきて

乗り越えてこられたの。

お母さんの声。

大好きなお母さんの声。

 

荒城の月。

とても綺麗で優しい高音の母の歌声。

録音してパソコンに保存しておいたの。

だけど、パソコン壊れちゃって

バックアップしておいた外付けHDDも壊れちゃって

母の歌声。もう聴けないの。

母の歌う《荒城の月》

母の歌う《椰子の実》

母の歌う《枇杷》

母の歌う《赤とんぼ》

《うさぎうさぎ》《おぼろ月夜》

《ことりの歌》《さくらさくら》《早春賦》

《七夕様》《茶摘み》《里の秋》

《たき火》《小さい秋みつけた》

まだまだ、たくさんあるの。

でも

パソコン壊れちゃってHDDも壊れちゃって

もう、聴けないの。

 

お母さん。

今はあちらの世で、また、

あの優しい綺麗な声で

お歌を歌っているかしら。

 

童謡。

私もピアノンで伴奏を弾いてみよう。

お母さんの歌声にあわせて。

ねぇ。お母さん。

私はピアノを習わせてもらって

ピアノはお母さんに負けないけれど

お歌を歌うのは

お母さんの様には歌えないの。

とてもとてもお母さんには

かなわないの。

あの歌声はね。

お母さんの心そのもの。

そう。お母さんの心そのもの。

 

お母さん。ありがとう。

私はお母さんの声を聴きながら

育ったのですね。

お母さん。

ありがとう。

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お風呂上がりに一口。

冷蔵庫に冷やしておいたの。

貴方の優しさが駆け巡り

私は微微微微酔い。

貴方の歌う

ワインレッドの心を思い出して

またまた微微微酔いね。