むかし
ケーキ屋さんで
働いていたときのこと。

自ら選んだ仕事だったにも関わらず
私は接客が苦手で
余裕のない毎日を
送っていました。

でもある日、
年配女性のお客さんと
何気ない会話で
ほんの5分ほど
盛り上がった時がありました。

ケーキの話しから始まり
夏の暑さについて語り
そして『ジョナサン』に
至りました。


突如口にだされた
『ジョナサン』

『ジョナサン』がなんなのか
聞くタイミングを逃した私は、
盛り上がるお客さんに対し
頭の中で彷徨う
『ジョナサン』の正体を
探していました。

『ジョナサンは二年前からいるの。角部屋にいるの。』


ペットかな、
犬?
そう思いました。


『背が高いの』

犬じゃない。
そう思いました。


ジョナゴールド。
そうか、リンゴの木。
結論に至り
恐る恐る
通のフリして

『私もジョナサン好きですよ』

とか言ってみたら
お客さんものすごく喜んで
調子に乗った私は

『やっぱりちょっと他とは違いますよね』

『本当美味しいと思います』


するとお客さん、

『あなた、ジョナサン、食べたの?』


ジョナサンとは、
どっかのラグビー選手で
角部屋にポスターを
貼っているという
人だったという
まさかのオチでした。

ややこしくもない
想定外。

明日からまた
がんばりましょう。