第3話 お腹のあなたを守りながら、私は毎日泣いていた今の私は、もう一度夫に恋をしている。だけど――どうしても忘れられないことがある。時間が経ったからといって、すべてを許せるわけじゃない。今でも思い出すだけで胸が苦しくなる。あの頃の私は、毎日のように泣いていた。そして当時、私のお腹には、今の娘がいた。---幸せだった。それは嘘じゃないあの頃の夫との生活が、すべて苦しかったわけではない。むしろ私は、幸せだった。夫は私に30万円ほどする結婚指輪を買ってくれた。家事もしてくれた。私の連れ子だった子どもたちのことも、自分のことのように熱心に考えてくれた。私が「行きたい」と言えば、いろいろな場所へドライブにも連れて行ってくれた。それは誰かに見せるために作った幸せではない。本当にあった、私たち家族の日常だった。私は夫を愛していた。そして私も、夫から愛されていると思っていた。だからこそ――その後に起きたことが、私にはあまりにも苦しかった。---その前年から始まっていたこと話は少し前、2020年に遡る。私には、ある女性との間にトラブルがあった。ここでは、その女性を「M」と書くことにする。MとはSNSを通じて関わりがあった。けれど、次第に私は彼女との関係に疲れ果てていった。配信の中で馬鹿にされ、笑いものにされたと感じることもあった。グループチャットでも、何度も人間関係がかき回されているように感じた。そのグループには、私、M、何人かの仲間、そして20年来の親友もいた。あるとき私は、もう疲れてしまって、「グループを抜ける」とみんなに伝えた。すると仲間たちは、「抜けないで」「ここのお母さんなんだから」と口々に止めてくれた。あのときは、本当に嬉しかった。ところが、その直後だった。今度はMが、「私がグループを抜ける」と言い出した。みんなは、「元気でね」「またね」と送り出そうとした。するとMは、「どうして、あきのときはみんな止めたのに、私のときは止めないの?」という趣旨の不満を口にした。それ以外にも、本当にいろいろなことがあった。私は疲れていた。そして、その出来事を夫にも話していた。夫は知っている。私がMとのことで、どれだけ苦しんできたのか。私はそう思っていた。---私のお腹には、小さな命がいたそんな中、私は妊娠した。ずっと欲しかった赤ちゃん。夫との子どもだった。私はTwitterにも妊娠の記録を残しながら、健診の日を迎えるたび、「元気かな」「ちゃんと大きくなっているかな」と、お腹の小さな命を大切にしていた。本当なら、ただ幸せな妊娠期間を過ごしたかった。でも――私の知らないところで、信じられない話が夫に伝えられていたことを、私は後になって知ることになる。夫から後に聞かされた話だった。妊婦健診の日。Mは夫と通話していたという。そしてMは夫に、「お腹の赤ちゃんは、あなたの子どもじゃない」という趣旨のことを話したという。さらに、「あきはあなたの子どもなんて欲しくなかった」「あなたと別れたがっている」「一緒にいることが重たいと言っている」「家から出て行ってほしいと思っている」――そんな話までしたのだと、後になって夫から聞かされた。私は、そんなことを言った覚えはない。私にとっては、身に覚えのない話だった。そして夫によれば、Mは、「あなたの赤ちゃんじゃないんだから、中絶させた方がいい」という趣旨のことまで話したという。夫は、そのとき、「うん」と答えた。私は後になってそれを知り、夫に聞いた。「どうして、うんって言ったの?」夫の説明では、Mから聞かされた私についての話をそのときは本当だと思ったという。だから腹を立てていた。それで「うん」と答えてしまったのだと。私は言葉を失った。---そして、あのLINEを見つけたそれだけではなかった。私は夫のスマートフォンの中に、夫とMとのLINEを見つけてしまった。そこには――「お疲れ」「お疲れ」という何でもない会話から始まり、「インスタしよる?」「してるよ 交換したい?」「うん したい」そして、「今、通話できる?」「通話したい?」「うん したい」というやり取りが残っていた。私は画面を見ながら、頭の中が真っ白になった。どうして?よりによって、どうしてMなの?私がこの人とのことで、どれほど苦しんできたか知っていたでしょう?私は夫に全部話していた。それなのに――。さらに、LINEの途中には、今も忘れられないやり取りがあった。その部分について、当時M本人から私はこう聞かされた。夫から、「俺といつき、どっちが好き?」と聞かれたのだと。そしてLINEには、「いつきに決まってんじゃんWWW」その後に夫から、「そうよね……ごめん……」というやり取りが残っていた。その話をMから聞かされたときの、彼女の意味ありげな態度まで、私は今でも覚えている。胸が張り裂けそうだった。---二日後は、妊婦健診だった夫とMのLINEを見つけた二日後。私は4回目の妊婦健診を迎える予定だった。本当なら、「赤ちゃん、大きくなったかな」と楽しみにしているはずだった。でも私は泣いていた。毎日、泣いていた。泣いて、泣いて、それでも朝はやってきた。眠っている間だけ少し忘れられても、目を覚ませば、また全部思い出した。そして私は、何度もお腹に手を当てた。この子だけは守りたい。まだ顔も見たことのない、小さな娘。この子には何の罪もない。どうして私たちが、こんなことに巻き込まれなければならないのだろう。どうして夫は、私があれほど苦しんできた相手と、こんなLINEをしていたのだろう。答えは分からなかった。ただ一つ分かっていたのは、私は夫を愛していたということ。だからこそ、死ぬほど苦しかった。---あれから長い時間が経った。そして今、私は不思議なことに、もう一度、夫に恋をしている。夫と笑っている。夫の優しさに触れて、胸が温かくなることもある。それでも――あの日のLINEを、私は今でも忘れることができない。そして正直に書こうと思う。私は、あの出来事を今も許せていない。愛していることと、傷つかなかったことは違う。もう一度恋をしたことと、過去が消えることも違う。今の私の中には、夫を愛している私と、あの日、お腹の娘を守りながら毎日泣いていた私が、どちらもいる。そして――この話には、まだ続きがある。夫とMと私、そしてもう一人を交えた、4人での通話。そこで私は、今でも耳から離れない言葉を、自分の耳で聞くことになる。――次回へ続きます。
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