外界との繋がりを断ち切るようにイヤホンをしておもしろいとも思えない動画を布団の中で見続けていた。
しばらくするとノックが聞こえたような気がしたので扉のほうを見てみた。
するとドアが開き、私服にエプロンをつけた女性が立っていた。
助産師さんではなさそう。
誰だろうと思いながらイヤホンを外した。
女性「こんにちはー!10分後に食堂で調乳指導を始めるので、よかったらどうぞー!」
そう言って扉を閉めた。
粉ミルクメーカーの人かな?
赤ちゃんがいないから沐浴指導とか赤ちゃんのお世話に関する指導はこの産院ではしないって言われてたけど調乳指導は誘ってくれるんか。
助産師がする指導はしないけど、メーカーの人がする指導だからかな。
どうしよう…。
行ったら気が紛れるかな…。
でも他の人に会うのは嫌だな…。
でも調乳指導って興味がある…。
少し悩んだけど行くことにした。
表情を見られないようにマスクをして、始まるギリギリの時間に行って終わったらすぐに部屋に戻る。
よし、これで行こう。
そう思ってギリギリの時間に行ったけど、私の他に1人しかいなかった。
すぐに調乳指導が始まったけど、要は産院で使用されているミルクの宣伝だった。
調乳指導っていうから実習みたいな感じかと思っていたけど違った。
まぁ、サンプルはもらえたからいいか。
調乳指導が終わり、予定どおりすぐに部屋に戻った。
それにしても…部屋の扉にかけてある「母児同室中」という札。
何回見てもイラッとするし悲しい気持ちになる。
荷物をまとめたり、転院の病院でもらった書類を読んだりしていると夜ご飯が運ばれてきた。
この産院はご飯に力を入れているらしく、けっこう豪華だった。
入院中に1回お祝いとして本格的なコース料理も提供される。
お祝いのご飯は息子の転院の日の夜ご飯の予定だったけど、私はキャンセルしたからどんなものかはわからない。
普通の状態ならご飯が豪華なら嬉しいんだろうけど、このときの私はそんな気持ちにならなかった。
食欲はないし、おいしいとも感じない。
あんまり食べないと助産師さんに何か言われそうだから半分以上は食べるようにしていた。
夜ご飯のあとはぼーっとテレビを見ていると、20時過ぎくらいにノックが聞こえた。
女性「失礼します。本日エステの予定が入っておりますので、準備ができましたらエステルームへお越しください。」
本当は息子が転院した日にエステの予定もあったらしく、「変更できたらしておくね。」と言われて以降何も言われてなかったから忘れてたわ。
そんな気分じゃないし、人に会いたくなかったから行きたくないのが本音。
でもきっとこの人は私のエステのためだけに仕事に来てくれたんよな…と思うとエステを受けるという選択しかなかった。
このサービスもね…普通なら嬉しいんだよね…。
息子のこと聞かれたら嫌だな…と思いながらエステルームへ向かった。
女性「本来ならフェイシャルかボディか選べるんですけど、助産師さんから胸がかなり張っているとお聞きしているので、今回はフェイシャルにさせていただきますね。ボディで血行がよくなるとさらに胸が張ってしまうと思うので…。」
フェイシャルかボディを選べるんだったらボディがよかったけど、そういうことならしょうがない。
私「わかりました。」
フェイシャルとはいっても脚には膝下をマッサージする機械もつけてくれたし、ハンドマッサージもしてくれた。
心配していた雑談はほとんどなく、気持ちよくエステを受けることができた。
雑談も出産や赤ちゃんのお世話に関することではなく、全く別の話題だった。
もともとそういうやりかたなのか。
助産師さんが赤ちゃんの話はしないように言ってくれたのか。
どちらにせよ、とてもありがたかった。
日本酒好きならこれ!
私がほしい(笑)
おいしそう♥️