助産師さんとしばらく待っていると、S看護師が戻ってきた。
S看護師「お待たせしました。準備ができたのでこちらへどうぞ。」
近くにあった面談室へ通され、すぐに話が始まった。
担当医「担当になりましたMです。よろしくお願いします。」
私「よろしくお願いします。」
担当医「早速ですが、生まれてから胆汁性の嘔吐が続くということでこちらに転院となりました。その嘔吐の原因としては腸閉鎖が考えられます。こちらが肛門から造影剤を入れて撮影したものです。造影剤が途中までしか入っていないことがわかります。」
腸閉鎖…。
ネットで調べたときに出てきたやつだ。
担当医が説明文書を出して説明を続けた。
担当医「1番疑わしいのは小腸閉鎖です。4000~5000人に1人発症すると言われています。お母さんのお腹の中にいるときに腸がねじれてしまったりして腸の血流が障害されることが原因として考えられていますが、はっきりとはわかっていません。今回の場合、大腸に近い場所で腸が途切れていると思われます。小腸閉鎖にはいくつか種類がありますが、実際に見てみないとわかりません。」
その説明文書には5種類の病型の図があった。
腸が破れてしまったり、病型によっては予後不良だが、ほとんどの場合は予後良好とのことだった。
担当医「治療としましては手術のみで、代替可能な治療はありません。胃に管を入れて減圧して、脱水にもなっているので点滴をして全身状態を改善してから全身麻酔をして手術を行います。開腹して閉鎖している部分を探して、閉鎖している部分を切り落としたあとに口側と肛門側の腸を繋ぎます。この際に口側の腸がガスや便で拡張していることが多いので、肛門側の腸と太さの差が大きいようなら拡張している部分も切除する可能性があります。」
手術しかないんだ…。
生まれてから数日しか経っていないのに全身麻酔で開腹手術…。
担当医「ここまで小腸閉鎖のお話をしてきましたが、お腹を開けて違う病気だったという可能性もあります。小腸閉鎖が1番疑わしいのですが、もし違う病気だった場合は人工肛門を作る可能性もあります。どのような手術を行ったかは術後に説明させていただきます。」
この後も手術に伴う危険性などについて話があった。
出血、創部感染、縫合不全、吻合部狭窄、その他の部位の閉塞…
いろんな危険性があった。
ただでさえ生まれてすぐの赤ちゃんに全身麻酔の手術が必要なんて…とショックを受けているところに、こんなことを聞くと手術を受けさせるのが怖くなる。
もちろん病院側としては、様々な可能性について説明をしなければならないことはわかっている。
もし説明されたことが赤ちゃんの身に起こったら…
そう思うと怖くて怖くてたまらなかった。
それでも手術を受けなければ赤ちゃんは生きられない。
私には手術を受けさせるという選択しかなかった。
手術が無事に成功して、順調に回復できることを祈るしかなかった。
担当医「腸に穴が開いてしまう前に手術をしたいので、今日の夕方以降の手術室が空いたタイミングで緊急手術を行います。同意書にサインをお願いします。」
そうか。
穴が開いてしまうと予後不良だって言ってた…。
生まれてから量は少ないとはいえ、ミルクは飲んでるわけだし…。
口側の腸が拡張してて破れる可能性があるんだもんね…。
それならできるだけ早くしてほしいけど、全身状態を整えてからって言ってたし手術室が空かないとできないもんね…。
そんなことを考えながら同意書にサインをした。
担当医「それでは後ほど麻酔科医から麻酔について説明がありますので、しばらくお待ちください。」
そう言ってみんな面談室から出ていき、助産師さんと2人面談室に残された。
助産師「大丈夫?」
なんのことだろう…
体?心?両方?
全部大丈夫じゃない。
縫ったところは痛いし、体は横になりたいくらいしんどいし、心はもっとしんどい。
本当なら赤ちゃんが生まれて、退院まで赤ちゃんのお世話をしながら体を休めてる時期だよ。
まだ赤ちゃん産んで3日目だよ。
朝起きてからずっと横になることもできずに、縫ったところが痛いのをずっと我慢して歩いたり座ったりしてる。
痛み止めの薬を飲んでても痛いものは痛い。
胸も張って岩みたいになってるし熱も持ってて痛くてしょうがない。
心だって今の状況は頭では理解できてるけど、 心が追いつかない。
何もかも大丈夫じゃない。
大丈夫じゃないけど、色々聞かれたり話されたりするのが嫌だったので大丈夫と答えた。
しばらくするとS看護師が戻ってきた。
S看護師「お待たせしました。麻酔科の説明がもうちょっと後になりそうなので、さっきの家族控室でお待ちいただけますか?」
助産師「わかりました。お昼ごはんまだなんですけど、1階のコンビニで買って控室で食べても大丈夫ですか?」
S看護師「あっ、そうですよね。大丈夫ですよ。助産師さんはこの後も付き添いされますか?」
助産師「えーっと、旦那さんが到着されたら産院に戻ろうと思ってるんですけど…。」
S看護師「旦那さんもうすぐ来られそうですか?」
私「たぶん着くと思います。」
S看護師「じゃあ、助産師さんは産院に戻られますか?うちの付き添いをしてくれるスタッフに来てもらって、コンビニに付き添ってもらうようにしましょうか。」
助産師「はい、お願いします。」
S看護師「では、スタッフを呼んでくるのでしばらくお待ちください。」
助産師「ごめんね。先に戻ってるね。」
私「いえ、長時間ありがとうございました。」
助産師「夜ご飯はどうする?夕方以降に手術って言ってたからたぶん間に合わないよね。止めることもできるけど…。」
私「止めてください。コンビニとかで自分で用意します。」
助産師「わかった。止めとくね。ここから産院にどうやって戻ってくる?」
私「もし夫が車なら送ってもらいます。車じゃなかったらタクシーで戻ろうかな…。」
助産師「うん。そうして。また戻るときに産院に電話してくれる?」
私「わかりました。」
しばらくして付き添いをしてくれるスタッフが来てくれたので、助産師さんは帰っていった。
いろんな色がある!きれい✨どら焼きつき!
カラフルなカスミソウもきれい✨
やっぱりスイーツかな(笑)