はじめに
※このブログには映画本編の内容を大きく含むネタバレ要素がある事、ご了承ください。
新海誠監督の映画と言えば、「君の名は。」でも様々な国内の聖地が登場し、対して移動手段も細やかに描かれているのが特徴的であるが、今回はこれまでの要素と大きく異なる部分がある。
これまでは、JR東日本企画が関係していたこともあるかもしれないが、フェリー、そして特に車や高速道路の描写も非常に多い。雀が東北へ向かうシーンの前にも、四国から明石海峡大橋を経て神戸へ向かうシーンも描かれているが、とくに東京から東北へ向かうシーンが細やかに描かれているので、これらの描写を映画の心情と景色を絡めて考察していきたい。
なぜ車なのか?なぜ常磐道なのか?
雀が、草太の靴を借りてアパートを飛び出し、お茶の水へと向かう。これまでの「君の名は。」の概念でいくと、誰もが東京駅から東北新幹線を利用し、仙台へ向かうと予想するだろう。実際、仙台までは最速の「はやぶさ」でおよそ90分、そこから在来線やバスなどを使えば、かろうじて日帰りも可能である。
芹澤のセリフにも「今日中に帰れるかな‥‥」のセリフの通り、東北は列車なら近くても車だと微妙に遠いことを示したいのだろう。
芹澤の赤いスポーツカー
そして芹澤が乗っていたのは、小説ではホストから安く購入したという赤い型落ちのオープンカー。年齢から、免許を取得して安く古くとも形や格好にこだわりたいという若者の心情を描いている。さらに、おそらく後付けであろうカーナビも搭載されているが、助手席のドアポケットに冊子の道路地図が挟んであることから、おそらく免許を取れたので、車であちこち走りたい性格なのだろう。(旅好きの人はスマホやナビの地図よりも紙の地図を好む傾向がある)
そして音楽をBluetoothで車のスピーカーに飛ばしていること、心情によって再生リストを使い分けていることも今風だと思う。
車は東北道ではなく常磐道へ
そして神田橋ランプから首都高へと入り、松任谷由美の「ルージュの伝言」が流れる。
BGMと重なり、「ゴツン、ゴツン」と効果音が聞こえるが、今は首都高もノージョイント化工事が進んでいるが、都市高速特有の橋の継ぎ目の音であり、車が軽快に進んでいく様子が伺える。
常磐道ルート
351km 4時間7分 8700円
東北道ルート
375km 3時間58分 9010円
若干常磐道の方が有利に見えるが、広野から亘理はほぼ片側1車線の対面通行なので、運転面でも(個人差はあるが)東北道を選ぶ人が多い。
途中、常磐道を降りて国道6号線を走るシーンがあり、一瞬「工事通行止」の横断幕が現れるが、作画時点でも工事による通行止は夜間工事が主体で、昼間の通行止はほぼ行われていないので、意図的に(描写的都合もあるが)東北はまだ帰宅困難区域で(現在はバリケードはない)戻れない地域もあるけど、景色や自然は戻りつつある、もしくは変わらないということを伝えたいのだろう。
車は気仙沼は気仙沼へ
そして海を見た休憩後、雨に降られ、オープンカーの屋根が閉まらないシーンはおそらく、仙台東部道路もしくは石巻までの三陸道と思われる。「次の休憩所まで30分」とあるが、道の駅三滝堂がスルー(南三陸は恐らく作画時点はオープンしていない)されているのはスルーして、大谷海岸へと向かう。道の駅大谷海岸も被災し、2021年3月にオープンした新しい道の駅である。(ここでは道の駅の施設については別の記事に書きます)
一部内容記事が重複しますが、道の駅大谷海岸を選んだのも、君の名は。でカフェ巡りのシーンの「木組みがいいね」のシーンのように、建築が好きな新海誠監督の嗜好と、気仙沼も大きく復興が進み、新しいステージへと進みつつあるので映画を見て、どんどん足を運んで盛り上げて欲しいというメッセージから実在するメニューが細やかに描かれていることが狙いなのではないかと思う。
まとめ
今回の映画の注釈に「実際の音とは異なりますが緊急地震速報の音があります」とあること、また、震災の気仙沼のシーンから、禁じ手と思われる重い描写もあるが、ラストで幼少期の雀が、大きくなった雀へ、大切な言葉(これは映画の核たなるので書けません)を投げていることから、東北のシーンを細やかに描けたのだろう。
この映画を見て、登場人物に成り切ったつもりや、当時の震災を思い出し、三陸を訪れるのも面白いのではないだろうか。

