第519話【ソニーグループのビジネスモデル】

 

今日も読んでいただき有難うございます。

 

組織変革コンサルタント

経営戦略コンサルタント

の渡邉ひとしです。

 

原材料費の高騰

人件費の上昇

深刻な人手不足

物流コストの増大。

 

これらの課題に直面しながら

限られた経営資源を

どこに配分すべきか。

 

日々この判断に迫られている

中小企業経営者は多いはずです。

 

大企業のように多角化すべきか

それとも本業に集中すべきか

という悩みも尽きません。

 

しかし

大企業の経営判断は

必ずしも中小企業にとって

最適解ではありません。

 

むしろ

その失敗や矛盾から

学ぶべき点の方が

多いのかもしれません。

 

今回はソニーグループが

2024年から2025年にかけて

 

実施した一連の経営判断を

時系列で追いながら

 

その戦略的意図と

問題点を検証していきます。

 

エレクトロニクスから

エンタメへの転換を進める選択は

果たして正解なのでしょうか。

 

大企業の課題や経営判断を観察して

自社の経営のヒントにしてください。

 

今日の企業事例は第519話

【ソニーのビジネスモデル】

 

*画像はイメージです

 

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ミッション、ビジョン、バリュー

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【Purpose 存在意義】

クリエイティビティとテクノロジーの力で

世界を感動で満たす。

 

【Values 価値観】

*夢と好奇心

夢と好奇心から、

未来を拓く。

 

*多様性

多様な人、

異なる視点がより良いものをつくる。

 

*高潔さと誠実さ

倫理的で責任ある行動により、

ソニーブランドへの信頼に応える。

 

*持続可能性

規律ある事業活動で、

ステークホルダーへの責任を果たす。

 

【東通工の設立趣意書】

真面目ナル技術者ノ技能ヲ

最高度ニ発揮セシムベキ

自由豁達ニシテ

愉快ナル理想工場ノ建設

 

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会社の沿革

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1945年10月に

東京通信研究所を立ち上げました。

 

1946年に

井深大、盛田昭夫などを中心に

東京通信工業を創業しました。

 

1955年に

日本初のトランジスタラジオを発売し

製品すべてにSONYのマークを入れた。

 

1958年1月に

東京通信工業株式会社から

ソニー株式会社に改称しました。

 

1982年に

パソコン市場に参入しました。

 

1989年に

コロンビア・ピクチャーズ・

エンタテインメントを買収して

映画事業に参入しました。

 

1993年に

家庭用ゲーム機事業に参入しました。

 

2021年4月に

企業組織再編を実施しました。

 

・ソニーがソニーグループに

商号を変更し純粋持株会社に移行。

 

・ソニーモバイルコミュニケーションズが

ソニーのエレクトロニクス事業を

完全移管しました。

 

・ソニーエレクトロニクス

・ソニーイメージングプロダクツ

&ソリューションズ

・ソニーホームエンタテインメント

&サウンドプロダクツ

 

を吸収合併しソニー(二代目法人)

に商号を変更しました。

 

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ビジネスモデルの企業事例

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2024年12月に

ソニーグループはKADOKAWAに

約500億円を追加出資し

 

議決権ベースで約10%を保有する

筆頭株主となりました。


世界的なコンテンツIP争奪戦が激化する中

アニメやゲームなどの知的財産を

 

自社だけで生み出すことに

限界を感じていました。

 

特に

「推しの子」などの人気原作を持つ

出版コンテンツの確保が

急務となっていました。


KADOKAWAが持つ豊富なIPを

ソニーの

映画、ゲーム、音楽事業で展開し

 

メディアミックス戦略を

加速させる狙いです。

 

しかし出資比率10%では

実質的な経営への影響力は限定的です。

 

500億円という

巨額投資に見合うリターンが得られるか

 

取締役1名の派遣だけで

十分な連携が図れるか疑問が残ります。

 

2025年1月に

ソニーグループは国内主要グループ会社

約1万5000人を対象に冬季賞与を廃止し

 

その分を月給と夏季賞与に振り分ける

賃金制度改定を実施しました。


半導体事業などの市況変動により

年収に占める

賞与の割合が高い従来の制度では

 

従業員の収入が短期的な企業業績に

大きく左右される

構造的問題を抱えていました。

 

またIT系外資企業との

人材獲得競争において

 

月給ベースでの比較で

見劣りする状況が続いていました。


年収総額を変えずに

月給比率を高める施策で

従業員に安定収入を提供し

 

長期視点での仕事への取り組みを

促す狙いがあります。

 

高度技能人材には月給ベースで

最大22%の引き上げも実施しました。

 

ただし

この改革は本社や一部子会社に限られ

 

海外のゲーム、映画、音楽事業は

対象外という中途半端さが否めません。

 

2025年7月に

バンダイナムコホールディングスの

株式2.5%を約680億円で取得し

資本業務提携を締結しました。


「機動戦士ガンダム」

「パックマン」

 

など世界的な知名度を持つIPを

取り込む必要に迫られていました。

 

すでに

KADOKAWAにも出資しており

 

国内コンテンツ企業との連携強化が

急務となっていました。


バンダイナムコのIPと

ソニーの配信プラットフォーム

 

「クランチロール」を組み合わせ

海外展開を加速する構想です。

 

しかしわずか2.5%の出資で

実質的な経営への影響力を

行使できるのか疑問です。

 

両社の企業文化の違いを

どう乗り越えるのか

具体的な施策も見えていません。

 

2025年9月に

金融子会社

ソニーフィナンシャルグループを分離し

東証プライム市場に再上場させました。

 

日本初の

パーシャルスピンオフ制度を活用し

 

2割未満の株式を保有したまま

分離を実現しました。

 

長年投資家から指摘されてきた

コングロマリットディスカウント

の解消が課題でした。

 

エンタメ・半導体事業と

金融事業とではビジネスモデルや

求められる経営指標が根本的に異なり

 

グループ全体の成長戦略が

不明瞭になっていました。


エンタメとテクノロジーに

経営資源を集中し

 

投資家に対して

明確な成長ストーリーを

示すのが目的です。

 

しかし安定収益源だった

金融事業を手放すため

 

エンタメ事業の業績変動リスクが

直接的に表面化する可能性があります。

 

実際スピンオフ初日の株価は

期待を下回る結果となりました。

 

2025年10月に

十時裕樹CEOはWBDの買収提案を

「するつもりはない」と明言しました。


ワーナー・ブラザース・ディスカバリー

の規模が大きく

買収金額が膨大になることに加え

 

ハリウッドの映画スタジオを

単純に統合しても

 

利益率の向上が見込めないという

冷静な分析がありました。


規模の経済を追求せず

成長市場である

アニメに集中する戦略を選択しました。

 

「アニメ市場はまだ黎明期で

しばらく2桁成長が続く」

との見通しを示しています。

 

大型M&Aに踏み切らなかったのは

賢明な判断とも言えますが

 

慎重すぎる姿勢が

成長機会を逃す可能性も否定できません。

 

2025年11月に

社内人材マッチングプラットフォーム

ポリネーターネットワークが

 

1年間で約300件の案件支援を

達成したと発表しました。


グループ内11万人超の従業員と

1582社の子会社を抱える中で

 

組織の縦割りにより貴重な技術や

知見が埋もれているのが現状でした。

 

介護施設でのゲーム技術活用など

部門を超えた協業の

必要性が高まっていました。


60人のポリネーター

(花粉媒介者)を任命し

 

組織横断的に人材と技術を

マッチングする仕組みを構築しました。

 

しかし

これは本来組織設計や

人事制度で解決すべき問題を

 

属人的な仲介者に

依存する仕組みとも言えます。

 

大企業だからこそ

可能な贅沢な施策であり

中小企業には真似しづらいモデルです。

 

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今日のまとめ

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2024年末から2025年にかけての

ソニーグループの一連の経営判断を見ると

 

選択と集中という言葉の裏側にある

矛盾と複雑さが浮き彫りになります。

 

KADOKAWAと

バンダイナムコへの出資は

合計1180億円に上りますが

 

両社とも出資比率は10%以下で

実質的な経営への影響力は限定的です。

 

金融事業の分離は

理論的には正しい判断ですが

 

安定収益源を失うリスクは

軽視できません。

 

賞与制度改革も国内の一部に留まり

グローバル企業としての一貫性に欠けます。

 

一方で

ワーナー買収を見送った判断や

社内人材マッチングの仕組みづくりなど

 

身の丈に合った

現実的な選択も見られます。

 

しかしこれらの施策が

本当に競争優位につながるかは未知数です。

 

中小企業の経営者が学ぶべき点は

 

大企業でさえ明確な成功方程式を

持っていないという現実です。

 

むしろ組織が大きくなるほど

変革の実行は困難になります。

 

ソニーが苦戦している組織の縦割りや

投資効果の不透明性は

 

規模が小さいがゆえに

機動的に対処できる中小企業の

強みとも言えるでしょう。

 

重要なのは自社の規模と

資源に見合った戦略を選択する判断です。

 

大企業の華々しい発表に惑わされず

やらないことを明確にし

 

地に足の着いた経営判断を

心がけることが肝要です。

 

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【重要なお知らせ】

2017年から継続してきたブログですが

今回の第519話を持って休止いたします。

 

次週以降『スタートアップの真髄』仮称

次回もどうぞ宜しくお願いいたします。

  

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★前回までの企業事例(一部)です。

ライオン

森永製菓

マブチモーター

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村田製作所

ワークマン

大成建設

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SBIホールディングス

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ロート製薬

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大和ハウス工業

レゾナック・ホールディングス

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#株式会社未来デザインカンパニー

 

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経営者の方は

自社の全体像を把握しているつもりでも

 

心理的バイアスや

無意識の防衛機制により

 

問題の本質や自分の意思決定の癖に

気づけない事柄が多々あります。

 

脳科学的にも自己認知には限界があり

感情や習慣に支配された判断を

客観的に見直すことは困難です。

 

経営コンサルタントは

外部の視点から構造的に現状を分析し

 

経営者ご本人では

見落としがちな課題を可視化します。

 

だからこそ

冷静で第三者的な知見を持つ

コンサルタントの存在が

経営判断の質を高め

 

組織を持続的に成長させる上で

不可欠なのです。

  

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*月曜日『実践経営戦略ノート』

*火曜日『AI 経営の実践ガイド』

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*金曜日『シン組織変革の教科書』

 

引き続き どうぞ宜しくお願いいたします。

 

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代表取締役 渡邉ひとし

 

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紹介記事1:https://humanstory.jp/watanabe_hitoshi/

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一般社団法人 空き家再生機構 /理事

岐阜県公認 /コミュニティ診断士

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<令和2年度迄>

中部大学 人文学部心理学科 非常勤講師

<令和元年度迄>

愛知産業大学 経営学部経営学科

造形学部デザイン学科・建築学科 非常勤講師

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<著書>

『ビジネスモデル虎の巻!』 (2019年)

『恩師から受けた薫陶と恩送り(仮)』

(2026年)

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