こんにちは。
渡邉ひとしです。
第266話のテーマは
『人材と商品開発力が問われる』です。
(ブログ=月水金の平日投稿です)
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半導体業界の複雑な業界地図
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2005年から2007年までの
半導体業界の業績は好調でしたが
2008年のリーマンショック後は
パソコンや携帯電話などの
あらゆる分野での販売が伸び悩んで
業績は一気に悪化しました。
DRAM大手の<エルピーダメモリ>は
2012年2月に経営破綻して
アメリカの<マイクロン・テクノロジー>
の子会社になり再建を目指しています。
日本の半導体メーカーは
業績悪化から脱却するため
再編を活発化させていきました。
そして
<NEC>から分社化していた
<NECエレクトロニクス>と
<日立製作所>と<三菱電機>の
半導体部門を分社して統合し
設立された<ルネサステクノロジ>が
2010年4月に統合して
<ルネサスエレクトロニクス>が
設立されています。
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<ルネサス>のビジネスモデル
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「ルネサス(Renesas)」は……
「Renaissance Semiconductor
for Advanced Solutions」
あらゆるシステムに組み込まれることで
世の中の先進化を実現していく
真の半導体メーカー、と表明しています。
2016年12月に
<ルネサスエレクトロニクス>の
呉文精社長兼CEOは
研究開発費を2021年3月期に
30%積み増す(2016年対比)
という方針を明らかにしました。
研究開発費を1300億円に拡大して
自動運転技術やIoT分野で
先行することを目指しています。
2017年1月には
完全自動運転のクルマを試作して
アメリカで開幕した家電見本市の
コンシューマー・エレクトロニクス・ショー
に出展してデモコースで
完全自動運転による走行を披露しました。
今回は「走る」「曲がる」「止まる」
といった自動車制御に必要となる
周辺状況の把握のための主要な半導体を
すべて自社製品で揃えました。
ハッキングなどのサイバー攻撃を受けると
すぐに停止して事故を防ぐ仕組みも導入。
自動運転に関わる各種半導体を
1社で提案できることを強みとして
完成車や部品メーカーからの
受注の獲得を狙います。
ソフトウエア開発会社などの
200社超のパートナー企業と組んで
自動運転の車体制御に必要な半導体や
ソフトを一括提供する体制を築きました。
呉文精社長は展示会の基調講演で……
「我々単体では勝ち残るのは難しい。
パートナーの皆様と日本に車の頭脳を担う
半導体メーカーを残したい」
と述べています。
アメリカの<インテル>や<クアルコム>
などの半導体の巨人に対抗して
「R―Carコンソーシアム」と呼ぶ
共同体を組織していく考えです。
東日本大震災での工場被害を受けて
経営危機に陥った<ルネサス>は
スマートフォンやゲーム向けなどの
変動の激しい半導体生産から撤退して
工場売却や人員削減などのリストラ策で
収益改善に努め2015年3月期に
最終黒字に転換することができました。
2017年2月には
産業機器に強い半導体メーカーである
アメリカの<インターシル>を買収。
自動運転分野だけではなく
生産設備や医療機器分野も開拓しています。
2013年に
官民ファンドの<産業革新機構>が
出資して経営再建を図ってきましたが
<ルネサスエレクトロニクス>の経営が
軌道に乗ったと判断して
2017年5月に
<産業革新機構>が保有する
20%弱の株式を売却しました。
さらに
<ルネサスエレクトロニクス>の増資に伴い
出資比率は50%弱に下がります。
今後は公的支援の度合いが弱まるため
<ルネサスエレクトロニクス>は
再建の最終段階を完了することになります。
2017年5月に
中国の自動車大手である
<長城汽車>と提携しました。
◉自動運転技術
◉EVやハイブリッド車向けの
モーターや電池制御技術
◉通信システム
◉車内モニターを使った
情報・娯楽システム
という4つの技術分野ごとに
共同開発チームを立ち上げて
両社の技術者が河北省の拠点で
研究開発に取り組んでいきます。
2017年11月に
中国に電気自動車向け半導体システムの
開発拠点を新設しました。
中国は多くの電気自動車メーカーが
しのぎを削る最大市場であるため
中国の現地メーカーの近くで
技術陣が開発業務を担うことで
必要な半導体の研究を進める狙いです。
2017年10月には
自動運転のクルマの頭脳となる
高性能半導体を<トヨタ自動車>に
供給すると発表しました。
「車の技術革新の80%を半導体が司る。
半導体をどう使いこなすかが
車の付加価値を左右する。」
と担当する大村隆司執行役員常務は
技術展示会で述べています。
2017年11月に
インドの自動車メーカーである
<マヒンドラ・アンド・マヒンドラ>と
電気自動車開発で提携すると発表しました。
インドで電気自動車開発を先導する
<マヒンドラ・アンド・マヒンドラ>と
幅広い分野で提携することで成長期待の高い
インド市場で供給先を確保する狙いです。
2017年12月に
自動運転車で周囲を検知するセンサーである
「LiDAR」の開発で
フランスの<ディボティクス>と
協業すると発表しました。
歩行者や障害物を高精度で認識する
電子部品ユニットの共同開発を目指します。
2018年3月に
車載用の最先端マイコンの製造の委託を
<台湾積体電路製造>に決めました。
全量を外部委託に切り替えることで
高価な製造装置への投資を抑えて
半導体やソフトウエアの
設計・開発に集中投資する狙いです。
2018年4月には
<産業革新機構>による株式の
売出し価格が決まったと発表しました。
「経営体質強化がほぼ完了し
次のステージに向けて
株式の流動化が必要と判断した」
と<産業革新機構>は説明しています。
45.6%を出資する<産業革新機構>が
12.2%分を市場で売却することで
出資比率は33.4%まで下がります。
このことで
<ルネサスエレクトロニクス>は
M&Aの成長戦略を進めやすくなります。
このように
半導体業界で急速に進んでいる
グローバル化に対して
<ルネサスエレクトロニクス>の
攻めの体制は一応整ったように見えますが
業界のM&Aだけでは限界があります。
過去のリストラなどの構造改革で
1万5000人の設計分野の技術者は
3分の1に減少しています。
肝心な半導体メーカーとしての
製品力が高まらなければ
業績が好調になってきたとはいえ
市場競争力では競合他社には勝てません。
優秀な開発を担う人材を
どれだけ集めることができるか?
どの分野に絞り込んで
他社に勝る商品開発ができるか?
<ルネサスエレクトロニクス>の
新たな課題が浮き彫りになっています。
ビジネスモデルの選択と集中が
目の前に迫る大きな課題になっています。
(次回ブログ=5月14日月曜投稿です)
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このことから何を学べるでしょうか?
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構造改革後に再建を終えた企業は……
それまでの大量な人材の流出により
商品開発力などが弱体化しているため
人材の強化が最優先課題になる。
人材の強化の次に求められることは
他社に勝る商品開発力になる。
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