ないとめあいんざちーず | 【太膨】ドリームス in the nightmare【肥満化】

ないとめあいんざちーず


 そこに、チーズがあった。

 それは、チーズであった。

 チーズであるとしか形容できないそれは

 とても美味しそうだった。


鼠はチーズに目がなかった。
いわゆる好物というもので、その度合いは
乳牛種を目撃するだけでテンションが上がり
詰め寄ってしまうほどのものであった。

それほどに大好きなチーズ。
もちろん食べ物としての「好き」であり
食べたい、口に入れ咀嚼し嚥下したい対象であった。
が、鼠には懸念があった。

 太りたくない

鼠はその感情が人一倍強く
肥満者へ近寄ることさえも嫌悪するほどで、
その感情のために存分に食を楽しめない日々が続いていた。

だが、今はどうだろう。
 ぱくり
チーズを手に取り一口囓る
 もぐもぐ
 ごくん
おいしい!
いつもであれば、ここで自然と
お腹が一杯になってしまう。
だが……
 ぱく、もぐもぐ、ごくん
ああ、やっぱりおいしい!

鼠の手は止まらずにチーズを口へ運び込み
口は、喉は、同じく止まる気配を微塵も感じさせず
流れるようにスムーズに、鼠に食べるという行為を促していく。
 ぱくぱく
 もぐもぐ
おいしい、おいしい、おいしい!
ずっとこうしたかった
いつも願っていた
だいすきなチーズを
たくさん、たくさん
いつまでも、ずっとずっとたべていたい!
それが今、

 夢が、叶った!

だけど、おかしいな
なんで、こんなに
たべていられるんだろう?
いつもはすぐ
おなかいっぱいになっちゃうのに
いつもはすぐ
たべたくなくなっちゃうのに
どうして

どうして?
疑問は山ほどあった
ここはどこ?
このチーズは何?
なぜ無くならないの?
なぜ食べ続けられるの?
なぜ、オイラのお腹は一杯にならないの?

鼠は答えを求めようと、自らの腹を見る
ヒッ……!
思わず声が出た
鼠の腹はこんもりと丸みを帯び
いつもの服を前方に押し出している
おいしさでチーズのようにとろけた表情が
一気にこわばり、青ざめる

小柄というよりはあまりにも成長不足
小学生と間違われるのは日常茶飯事
幼児体型、真っ平らな鼠の身体
その腹が、丸く、カタチを、変えてゆく
ああっ、わああっ
慌てふためくも、未だなおチーズを食べる手は
口は、喉は止まらず、その腹を満たし続けている
 ぱくぱく、もぐもぐ
止まれ!とまって!
 ぱくぱく、もぐもぐ
いやだ!たべたくない!
 ぱくぱく、もぐもぐ
とうとうその真っ白い“おなか”が
裾から顔を覗かせる
いやぁっ、やだぁっ、たすけて……!
 ぱくぱく、もぐもぐ
助けを呼ぼうにも、声を放つべき口は、喉は
変わらずチーズを頬張り、飲み込み続ける
 ぱく ぱく
嫌だ、太りたくないのに
 もぐ もぐ
もう、食べたくないのに
 むく むく
ああ、なぜこれは
こんなにも美味しいのだろう……!

食べたくないのに食べたい
不思議な二律背反に包まれながら
鼠の身体に変化が訪れる。
チーズを詰め込まれ、丸くぽっこりと
腹だけが膨らんでいたものが
徐々に他の部位をも膨らませ始める。
自らを強制給仕し続ける右手を
為す術なく見つめ、
美味しさにその身を委ね始めていた鼠の目に
違和感が映し出される。
手が、指が、むくんでいる?
その違和感は徐々に、だが確実に増していき
違和感から危機感へと変化する
まさかという思いと共に自身を顧みる
丸々パンパンに張り詰めた腹に
空いている左手で触れてみる
 むに
ヒッ……!
再び思わず声が漏れる
固く張り詰めていたはずの腹が
柔らかくなっている
もちろん大きさは増すばかり
これはまさか……
この、感触は
鼠の最も恐れる出来事が
その身に降りかかろうと、いや
その身に降り積もろうとしていることを
意味していた。
 太る
 肉が付く
 体重が増える
 デ ブ に な っ て し ま う … … ! !
「~~~……!!!」
もぐもぐし続ける口は悲鳴を上げることも許してはくれない
動かせる左手で給仕する右手を抑えようと掴む
 むにゅり
「……!!!!」
右手首が、いつか掴み振り払ったデブのそれと
同じようになってしまっている
「ーーーー!!!!」
必死で押さえ込もうとするが
右手は止まらず給仕を続ける
 ぱくぱくもぐもぐ、ぷくぷく
掴み続けていることで右腕の肉が増すのを
ダイレクトに感じてしまう
恐ろしくなって手を離す
だが恐ろしいのは手首だけではない
他の部位に恐る恐る手を伸ばす
胸、腹、尻、二の腕、そして顔
どこもかしこもぷくぷくで
たぷたぷで、それはやがて
大きさを増すのと同様に
ぶよぶよへと感触を変容させていく

鼠には最早絶望しかなかった
否、変わらずに味わい続ける美味だけが
救いであると言えるだろうか
涙と、涎と、そして吹き出し始めた脂汗で
その顔をぐちゃぐちゃにしながら
それでも右手は、口は、喉は、
太りゆく身体は、止まりはしなかった
咀嚼音、嚥下音、肉同士が擦れる汗の音
それらに服の破れる音が加わり
やがて小さな白鼠は
大きな大きな肉団子へと
その身をやつしていくのだった
溢れる美味と、絶望と共に……。
いらすとれーしょん:ヨクボさん @yokubo_hutobou