にほんブログ村 歴史ブログ 世界の伝統・文化へ
にほんブログ村

 

インドには数多くの木版染め伝統があり、それぞれ、典型的なモチーフ、配色、染色技術などがあります。 今回は、インダス文明にまで遡る古代インド由来の木版染め芸術である「アジュラック」をご紹介いたします。

 

「アジュラック」の語源は確かではありませんが、いくつかの節があります。中でも、サンスクリット語由来で「(色が)薄れない」という意味か、ペルシア語由来で、「青い」という意味が考えられると思います。

 

アジュラック染めは星空を思わせる複雑な幾何学的モチーフと配色が特徴的です。伝統的に使われる色は主に藍色(インディゴ)、深紅、と黒で、輪郭には白が使われます。またモチーフは自然や身近なものからインスパイアされています。たとえば、孔雀の羽、アーモンドの花、プルメリアの花、宝石、印章などが良く使われる伝統的なモチーフです。

 



 

アジュラック染めには藍、錆びた鉄、黒砂糖、ザクロの皮、茜根、ヘナ、ダイオウの根、ミョウバン、レモン、粘土などの天然の植物性および鉱物性の染料および着色剤が使われますので、肌にも環境にも優しい素材が出来上がります。

 

ただ、デザインによっては16のステップも必要な手間のかかる作業で、一品が出来上がるには数か月もかかる場合があります。また、印刷に使われる木版自体も芸術作品です。4 つの側面すべてにおいてシームレスな繰り返しパターンが出来上がるよう、完璧な寸法・形状の木版に複雑なデザインを正確に彫刻する必要があり、わずかな誤差でもパターンが歪んでしまいます。これらにより、品質にもよりますが、本物の手染めアジュラックは高価になります。

 

以下、字幕なしでもアジュラック染めのプロセスが十分ご理解いただける動画ですが、「設定→字幕→自動翻訳→日本語」を選ぶと、自動翻訳ではありますが、一応日本語で字幕が見られます。

 

 

アジュラックの歴史

 

アジュラック染めは、カッチ (インド西部、グジャラート州)、バルマー (インド西部、ラジャスタン州)、シンド (パキスタン南部) にまたがる地域で発祥したと考えられており、これらはすべてインダス文明の一部でした。 下の写真は、インダス文明の遺跡から発掘された有名な遺物(紀元前2000~1900年のものとされる)です。歴史家が司祭か王だったのではないかと考えている男性の像ですが、男性はアジュラック染めのショールを身に着けていると思われます。

 

アジュラック染めを身に着けている遺物(紀元前2000~1900年のものとされる)

インド考古学調査所が 1926 年に撮影した写真

 

さらに、インダス文明の人々は古代エジプトやメソポタミアなどと貿易関係を持っていたため、インド・グジャラート州で作られたアジュラック染め繊維の遺跡が遠くエジプトのアル・フスタトにまで発見されています。