「夜中に何度も目が覚めてしまう」「しっかり寝たはずなのに、朝から体が重い……」。そんな悩みを抱えている方は、意外と多いのではないでしょうか。

私たちは人生の約3分の1を睡眠に費やしていますが、その「質」については意外と知らないことが多いものです。実は、ただ目を閉じている時間だけが睡眠ではありません。最近私が注目しているのが「Sleep arousal disorder(睡眠時覚醒障害)」という状態です。

これは単なる「寝不足」とは少し異なり、脳のスイッチが寝ている間に勝手に入ってしまうことで起こるトラブル。今回は、私たちが健やかな毎日を取り戻すために、この睡眠の不思議な現象について深く紐解いていきたいと思います。

睡眠時覚醒障害(Sleep arousal disorder)の正体

まず、この「覚醒障害」がどのようなものなのかを整理してみましょう。

私たちの睡眠は、深い眠り(ノンレム睡眠)と浅い眠り(レム睡眠)が交互に繰り返されるリズムで成り立っています。通常、この切り替えはスムーズに行われますが、何らかの原因で深い眠りから不完全に「脳だけが起きてしまう」ことがあります。これが覚醒障害の本質です。

完全に目が覚めて意識がはっきりしていれば自覚できますが、厄介なのは「意識はないのに脳の一部だけが覚醒している」状態です。本人に自覚がないまま、体が動いたり、急に起き上がったり、あるいは脳が浅い眠りを繰り返したりすることで、睡眠の質が著しく低下してしまうのです。

よく知られる具体的な症状

覚醒障害には、いくつかの代表的なパターンがあります。お子さんに多く見られるものもあれば、大人になってからストレスなどで引き起こされるものもあります。

1. 睡眠時遊行症(いわゆる、寝ぼけ・歩き回り)

深い眠りの最中に突然起き上がり、歩き回ったり何か動作をしたりする状態です。本人は全く覚えていないことが多く、周囲の人が驚いてしまうこともあります。

2. 睡眠時驚愕症(夜驚症)

寝入ってから数時間以内に、突然叫び声を上げたり、パニックのような状態で起き上がったりします。強い恐怖を感じているように見えますが、これも本人の意識は眠ったままです。

3. 混乱性覚醒

目が覚めた瞬間に、自分がどこにいるのか分からなくなったり、支離滅裂な言動をしたりする状態です。スッキリと覚醒できず、脳が「ぼーっとした半分眠った状態」を引きずってしまう現象です。

なぜ脳は勝手に「起きて」しまうのか

では、なぜこのような現象が起こるのでしょうか。そこには、私たちの生活習慣や体質が複雑に関わっています。

一番大きな要因と言われているのが、睡眠の「分断」です。 例えば、寝室の温度が適切でなかったり、物音が気になったりすると、脳は深い眠りに留まることができず、覚醒のスイッチが入りやすくなります。また、過度なストレスや過労、アルコールの摂取なども、脳の安定した睡眠リズムを乱す大きな原因になります。

特にお子さんの場合は、脳の発達段階にあるため、深い睡眠と浅い睡眠のコントロールがまだ未熟なことが原因であることが多いようです。成長とともに自然に落ち着くことがほとんどですが、大人になっても続く場合や急に始まった場合は、生活の乱れがないかを見直すサインかもしれません。

質の高い眠りを取り戻すための環境づくり

覚醒障害を抑え、脳をしっかり休ませるためには、まず「眠りの環境」を徹底的に味方につけることが大切です。私が特に意識したいと感じているポイントをいくつかご紹介します。

1. 寝室の「静寂」と「暗さ」を守る

わずかな光や音でも、脳は刺激として受け取ってしまいます。遮光カーテンを使ったり、家族の生活音が気になる場合は耳栓を活用したりするのも一つの手です。脳に「今は完全に休んでいい時間だよ」と教えてあげることが重要です。

2. 就寝前のスマホを控える

スマートフォンのブルーライトは、脳に覚醒を促すホルモンを分泌させてしまいます。寝る直前まで画面を見ていると、脳が興奮状態のまま睡眠に入るため、夜中の不完全な覚醒を招きやすくなります。寝る1時間前にはデジタルデトックスを心がけたいですね。

3. アルコールとカフェインのコントロール

「寝酒」は眠りを誘うように思えますが、実は睡眠の質を最も下げる要因の一つです。アルコールが分解される過程で脳が覚醒しやすくなり、夜中に目が覚める原因になります。同様に、午後のカフェインも想像以上に長く体内に残るため、控えるのが賢明です。

心の緊張を解きほぐすルーティン

物理的な環境だけでなく、心の状態も睡眠にダイレクトに影響します。

現代社会では、寝る直前まで明日の予定や仕事のことを考えてしまいがちですよね。脳が「戦闘モード」のままだと、眠っている間も警戒を解けず、ちょっとした刺激で覚醒してしまいます。

お気に入りのアロマを焚く、軽いストレッチで筋肉を緩める、今日あった良かったことを3つだけ書き出す……。そんな小さな入眠ルーティンが、脳の興奮を鎮め、深い眠りへと導く架け橋になってくれます。

家族や自分の症状にどう向き合うか

もし、身近な人が寝ぼけたり叫んだりする場面に遭遇しても、無理に揺り起こすのは逆効果になることがあります。混乱を深めてしまう可能性があるからです。

まずは本人の安全を確保し、優しく声をかけて再び眠りにつけるように見守ってあげることが基本です。そして、その出来事を翌朝に詳しく問い詰めすぎるのも、本人に不必要な不安を与えてしまうので注意が必要です。

ただし、覚醒時の行動が激しすぎて怪我の恐れがある場合や、日中の強い眠気で生活に支障が出ている場合は、専門のクリニックで相談することをお勧めします。今は睡眠外来などで、科学的なデータをもとに適切なアドバイスを受けることができます。

まとめ:朝、スッキリと目覚めるために

「Sleep arousal disorder(睡眠時覚醒障害)」について知ることは、自分の体の声に耳を傾けることでもあります。

私たちは毎日頑張っています。だからこそ、夜の時間は脳も体も完全に「オフ」の状態にしてあげなければなりません。少しの工夫で眠りのリズムが整えば、朝の景色はもっと輝いて見え、一日を元気に過ごすエネルギーが湧いてくるはずです。

もし今、眠りに不安を感じているなら、まずは今夜の過ごし方を一つだけ変えてみませんか?

あなたの夜が穏やかで、朝の光が心地よく感じられる毎日になりますように。心から願っています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。