RW-07, Shringar/K Sridhar & K Shivakumar | BIG BLUE SKY -around the world-

RW-07, Shringar/K Sridhar & K Shivakumar


[Shringar/K Sridhar & K Shivakumar] (1989)

1. Raga Bageshri
2. Raga Bhairavi


インド出身の兄弟二人による作品。一曲目はカナダ,トロント、二曲目はイギリス,ブラックネルの WOMAD でライブ収録された。演奏時間は、それぞれ 47分53秒、23分33秒に及ぶ。一曲目では、バイオリンとサロードのデュオ演奏が、47分53秒に渡って延々と展開されている。二曲目は、タブラとタンブラを加えた 4人による演奏だ。

『 生で聴けた人は幸運だな。日本でも WOMAD を開催して欲しいな 』

出身国・出身地域以外では知名度が高くないミュージシャンによる素晴らしい音楽。このような出合いが、音楽フェスティバルの醍醐味だ。彼方の WOMAD で収録された楽曲を聴いて、まだ見ぬ WOMAD に思いを馳せた。


 


[Revolver/The Beatles] (1966)  初めてのインド風音楽体験 “Love You To”


この作品を聴いた頃、インド音楽は殆ど未体験に近かった。George Harrison 楽曲や、John McLaughlin の Shakti、その Shakti のメンバーだった Zakir Hussain のタブラ演奏ぐらいしか聴いたことがなかった。そのような自分にとって、この作品は大いなる謎を秘めた作品に思えた。インド音楽は思想であり哲学である。そのような言説が謎に拍車をかけていた。

ライナーノートを読むと、本作の二人は南インドの出身で、12世代に渡るカーナティック音楽の家系に属しているそうだ。尚且つ、北インドのヒンドゥスターニー音楽家に師事して修行を積んでおり、南インドと北インド両方の音楽に通じた数少ない存在だと分かった。とは言っても、‘89年当時は、南インドと北インドの音楽の違いはおろか、インド音楽の一端すらも分からない状態であった。



[Super Percussion of India/Zakir Hussain, etc.] (1988)  タブラ奏者 Zakir Hussain の演奏が堪能できる


インド音楽に関する文献を読むと、ラーガ (音律) とターラ (リズム様式) が重要だと書かれていたので、まず始めに、本作の楽曲タイトルにもなっているラーガ (音律) について調べることにした。

ドレミ… に対応する基本音名は、Sa Ri Ga Ma Pa Dha Ni Sa だと分かった。これは Najma が即興の階名唱法で使う音名と同じだ。
どうやら Ri, Ga, Dha, Ni のフラット音と、Ma シャープ音は、音名の頭文字を小文字にして表記するようだ。以上 12の基本音スヴァラ中の 5~7音でラーガは構成されている。そして旋律の上行時と下行時とでは、使われるスヴァラが違うことが分かった。
旋律短音階のような使い方なのかも知れないなどと、知らないことの中に既存知識との類似点を見つけたところで、インド音楽への理解はどうにも進まない。



[インド音楽との対話/田森雅一] (1990)


続いて、本作 2曲のラーガについて調べてみた。

Raga Bageshiri: 上行時 ‘n-S-g-m-D-n-S‘,下行時 S‘-n-D-m-P-D-g-m-g-R-S。上行時、ni で始まって Sa で終わるのは何故だろう。下行時、上に二回戻るのは何故だろう。全くわからない。

Raga Bhairavi: 上行時 S-r-g-m-P-d-n-S‘,下行時 S‘-n-d-P-m-g-r-S。m-P-d の三つの音は、上行時・下行時ともに短二度が続いている。何なのだろう。

よく見ると、音律の隣に、それぞれのラーガは演奏する時間が決まっていると書かれているではないか。Bageshri は 12 am~3 am,Bhairavi は 6 am~9 am。時間が違うと、全くその場にそぐわない音楽になってしまうとある。この作品は、深夜~早朝の音楽だったのか。
 ・・・

"Shringar" を初めて聴いてから三十余年が過ぎたが、インド音楽に関する知識も経験も殆ど増えていない。久しぶりに "Shringar" を聴いて、ラーガの研究を再開することにしよう。早速だが、一曲目を今晩 12 am~3 am,二曲目を明朝 6 am~9 am に聴いて。


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