RW-06, Songs for the Poor Man/Remmy Ongala | BIG BLUE SKY -around the world-

RW-06, Songs for the Poor Man/Remmy Ongala


[Songs for the Poor Man/Remmy Ongala & Orchestre Super Matimila] (1989)

1. Nasikitika 2. Karola 3. Kipenda Roho
4. Sauti Ya Mnyonge 5. Kifo
6. Usingizi 7. Muziki Asili Yake Wapi 8. Pamella
9. Dole 10. Mariam Wangu


『 東アフリカの Soukous は、とても洗練された音楽なんだな 』

タンザニアのポピュラー音楽を聴いたのは、この作品が初めてだった。コンゴ民主共和国の Soukous (スーク―ス) とはまた違った Soukous だ。Soukous と一括りに呼ぶが、各国・各都市にそれぞれのシーンが存在するのだろう。ロック・シーンのように。Remmy Ongala 作品を聴いて、Soukous シーンの広がりの大きさを理解した。



[Songs for the Poor Man, Reissue/Remmy Ongala] (2022)  再発時に改訂されたジャケットデザイン


Remmy Ongala & Orchestre Super Matimila の演奏するSoukous は、コンゴ民主共和国のものと同様に、次の三つの特徴を有している。

① 複数のギター (3~4人) によるスピーディ且つ端正な演奏
② 歌からダンス・パートに移行する際のテンポ・アップ
③ ダンス・パートでの疾走感

加えて、Remmy Ongala 版 Soukous には次の特徴がある。

(1) スワヒリ語の歌詞と、独特の節回し
(2) 彼方から聞こえて来る、次々に勃興するパーカッション
(3) コントロールされた複雑さを有するギター・アンサンブル

Remmy Ongala の母国タンザニアは、コンゴ民主共和国,ケニア,モザンビークと隣り合っている。(1) はケニアを中心とするスワヒリ語文化圏の特徴、(2) はモザンビーク音楽と共通の特徴だと思う。モザンビークの Eyuphuro作品でのパーカッションには、本作と近い特徴がある。



[RW-10, Mama Mosambiki/Eyuphuro] (1990)  Real World 作品


そして (3) は、広く分布する Mbira 音楽の伝統を受け継いだアンサンブルだと考える。この種のポピュラー音楽としては、ジンバブエの Thomas Mapfumo に代表されるChimurenga (チムレンガ) ミュージックが有名だ。ウガンダの Geoffrey Oryema による Lukeme  (Mbira の一種) を使った楽曲との共通点も見られる。
以上 (1) ~ (3) の特徴に鑑みると、Remmy Ongala の Soukous は、東アフリカの Soukous と言うべきなのだろう。



[Corruption/Thomas Mapfumo] (1989)


その後 ‘91年の WOMAD 横浜で、Remmy Ongala のステージを観る機会を得た。そのステージ衣装と演奏される音楽のギャップに驚いた。何と Remmy は、上半身裸の腰蓑スタイルで登場したのだ。スタインバーガー・ギターの横で瓢箪が揺れる。誰の演出なのかは分からないが、洗練された Soukous と粗野で前近代的なステージ衣装との、あまりに大きなギャップに心底驚いた。このスタイルを見てしまった聴衆たちに、洗練された音楽の魅力が伝わることはなかっただろう。30余年を経た今でも、あの日のステージを思い出すと残念でならない。


 
[WOMAD '91 横浜] (1991)  二日目 8月31日のメイン・ステージに出演


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