RW-05, Babeti Soukous/Tabu Ley Rochereau | BIG BLUE SKY -around the world-

RW-05, Babeti Soukous/Tabu Ley Rochereau

 
[Babeti Soukous/Tabu Ley Seigneur Rochereau] (1989)

1. Presentation 2. Kinshasa 3. Sorozo 4. Linga Ngai
5. Moto Akokufa 6. Nairobi 7. Seli Ja 8. I Need You
9. Amour Nala 10. Tu As Dit Que 11. Sentimenta
12. Pitie 13. Mosolo


コンゴ民主共和国の Soukous (スーク―ス) シーンを ‘60年代から牽引して来た Tabu Ley Rochereau の Real World 作品は、’89年 1月に ロンドン西方,バースに程近いボックスにある Real World スタジオで収録された。池の上に建つスタジオでの、所謂スタジオ・ライブ作品である。

Soukous は African Rumba (アフリカン・ルンバ) から ‘60年代に派生したポピュラー音楽で、’80年前後にはイギリスとフランスでも活発な活動が始まっていた。Tabu Ley Rochereau は、‘88年にフランスを拠点とする活動を始めている。そのフランス,パリ・シーンでの代表格 Papa Wemba は、’86年に来日公演を行っており、その時のライブ盤を ‘89年に発表している。



[Au Japan/Papa Wemba] (1986収録/1989リリース)


Soukous の音楽的な特徴として、次の三つを挙げることができる。残念ながら、彼の地の言葉による歌詞については、コメントすることができない。

① 複数のギター (3~4人) によるスピーディ且つ端正な演奏
② 歌からダンス・パートに移行する際のテンポ・アップ
③ ダンス・パートでの疾走感

①では、楽曲を文字通り終始リードするリード・ギターと、リズム・ギターのアンサンブルが絶妙だ。リード・ギターはアルペジオ奏法や、2ラインを同時に弾く演奏を特徴とする。②・③に記したダンス・パートでの疾走感・グルーブ感は、堪らなく刺激的だ。ライブでは、曲後半のダンス・パートが 10分以上に渡って演奏される。一度 Soukous グルーブを聴いてしまったら、ライブを体験したい気持ちが高まることだろう。

『 スーク―スはとても洗練されているな。コンゴのサプールみたいだ 』

何と言っても、Soukous の楽曲・作品,歌唱・演奏を通して一貫しているのは、その独特の美意識・美感だと思う。コンゴと言えば、世界一おしゃれなジェントルマン Sapeur (サプール) が有名だ。私にとって Soukous は、世界一おしゃれな Sapeur たちが発する美学を、限りなく想像させる音楽なのだ。’80年代の Papa Wemba は、まるで Sapeur のリーダーのような伊達男ぶりだった。Soukous は音楽であり、美学であり、生き方だったのではないかと思う。



[Soukous 紹介記事が載った季刊ノイズ 第3号] (1989)  特集記事は "アフリカ音楽の現状"


‘80年代の後半、ロックでもレゲエでもない、何か別の音楽を聴きたいという欲求に囚われていた。それは、当時のロック,レゲエ・シーンでは満たされなかった渇望と、まだ聴いたことがない音楽への好奇心に基づく欲求であった。

その欲求を満たしてくれたのは、アフリカのポピュラー音楽だった。逸早くワールドワイドに作品をリリースしていた Fela Kuti,King Sunny Ade (ともにナイジェリア)。’80年代後半に世界的に知られてきた Salif Keita (マリ),Youssou N’dour (セネガル),Papa Wemba (コンゴ民主共和国)。’90年代に WOMAD のスターとなった Thomas Mapfumo (ジンバブエ),Farafina (ブルキナファソ) … 。数々のアフリカ音楽が、渇望と好奇心を満たしてくれた。


    
[The first Releases/Real World Records] (June 5, 1989)


さて、ここまで紹介して来た 5作品は、Real World レコードの記念すべき初リリース作品である。5作同時に ’89年 6月5日にリリースされた。イギリス,中東・北アフリカ,南アジア,カリブ,中央アフリカの作品であることから、地域的なバランスを考慮していたことが窺える。
これらの 5作品から、Real World 作品との関わりが始まった。それから 35年を経た今でも、Real World レコードからの新作リリースを楽しみにしている。Real World 作品は、いつも渇望と好奇心を満たしてくれるのだから。


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