12) 山の生肉料理 | BIG BLUE SKY -around the world-

12) 山の生肉料理

第十二話) 山の生肉料理

四日目 8月4日、山の寺ワット・プラ・タート・ドイ・ステープに参拝する。
敬虔な上座部仏教徒 Erika と、本堂へ向かう長い階段を登る。
これまでの二回の訪問では、いずれもケーブルカーを使ったが、今回初めて階段で登った。
Erika はショールを借りて、一段高い本堂の回廊へと、靴を脱いで裸足で上る。



[ワット・プラ・タート・ドイ・ステープのチェディ (仏塔),チェンマイ] (2016)
Chedi of Wat Phra That Doi Suthep, Chiang Mai, Thailand


Namo Tassa Bagawato Arahato Samma Sam Buddha Sa ...
Erika は一つひとつの仏像に祈りをあげる。
ナモタサ パカワト アラハト サマーサプタサ ...
Erika の唱えたマントラを同じように三回復唱して、上座部仏教への敬意を表す。

回廊の中央には、高さ 22メートルのチェディ (仏塔) が、眩いばかりの金色に輝く。
ラーンナー様式の金色の仏塔,周囲の仏像,祭壇の花飾り ...  ここは何年経っても、何度来ても変わらない。
Erika と共に、願いを記した小さい鐘を持って回廊を回り、仏塔の柵に鐘を掛け置く。
篤い信仰心を持つ人々とともに聖地にいることに、引け目を感じつつも、上座部仏教への敬意を表した。



[ワット・プラ・タート・ドイ・ステープの 祈りの回廊,チェンマイ] (2016)
Corridor for praying, Wat Phra That Doi Suthep, Chiang Mai, Thailand


お昼ご飯にしましょう。
ワットの階段を降りて道路を渡り、駐車場へ向かう途中の食堂に入る。
世界的な観光地のすぐ近くに在りながらも、外国人観光客が来ることは無いだろう。
店頭の調理場で、ご婦人が炒め物を作っていた。



[山の食堂の調理場,チェンマイ] (2016)
Kitchen of a mountain restaurant, Chiang Mai, Thailand


Erika は豚の生肉のラープは有りますかと聞いて、その料理を頼む。
ラープとは、肉と野菜・香草の和え物料理。
肉は鶏・牛・豚と何でも使われており、生肉が使われることも多い。
生肉のラープには血が入っており、滋養が高いとされている。

豚の生肉のラープの皿に加えて、バナナの葉にのった豚の生肉そのものが、テーブルに置かれた。
Erika は、豚の生肉のラープを食べ、もち米を頬張る。
数か月前に、豚の生肉のラープで、豚レンサ球菌症に罹ったというニュースを見たことを思い出す。
食当たりしたことは無いのかと聞くと、何を聞いているのだと言う表情を見せる。



[山の食堂 豚の生肉のラープ,チェンマイ] (2016)
Raw pork dishes, Chiang Mai, Thailand


豚レンサ球菌症を、タイ語や英語で何と言うのか分からないが、生の豚肉での食中毒と言うと分かったようだ。
大丈夫ですよと言って、Erika は豚の生肉のラープを頬張る。
豚レンサ球菌症もそうだが、寄生虫も恐ろしい。
私は生肉を食べないことにしており、ましてや、子どもの頃から決して生で食べてはいけないと教わって来た豚肉だったので、この料理には全く口を付けなかった。

このような経緯が有ったので、この店の卵焼きの、パーム油の風味と塩風味の味付けとを、今でも思い出すことができる。


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