06) プレー郊外湖畔での一番の魚料理の歌 | BIG BLUE SKY -around the world-

06) プレー郊外湖畔での一番の魚料理の歌

第六話) プレー郊外湖畔での一番の魚料理の歌

二日目 8月2日、Pop は道中で物品を仕込みつつ、車を北へ走らせる。
ピッサヌロークから 100kmほど進んだウタラディット Uttaradit では、ドリアンの露店を訪ねた。
ここのドリアンは全国的に有名で、今が旬だと言う。
Pop は大量にドリアンを買い込むと、少し先の郵便局から小包にしてハジャイの自宅へと送る。
ドリアンを小包で送付出来るとは、さすがは本場の地だ。



[ドリアンの露店,ウタラディット] (2016)
Durian shop along country road at Uttaradit, Thailand


タイの地方には、高速走行可能な国道網が張り巡らされている。
アジア・ハイウェイの AH ナンバーが表示されているところを見ると、自動車専用道路ではなくても高速道路という定義のようだ。
Pop は、逆走するバイクや歩行者を横目に、100km/h 超で北へ車を走らせる。
時折り、ガソリンスタンドに併設された Café Amazon で休憩して、トイレに寄っては建屋の裏で Erika と煙草を燻らせた。

ウタラディットからプレー Phrae 市内に入ると、左へ折れて西の山林へと車を向かわせる。
Pop にどこに行くのかと聞くと、昼ご飯ですよと Erika が答える。
数キロ先の小さな湖に行き当たると、湖畔のレストランの傍らに車を止めた。
魚拓が飾ってあるところを見ると、魚料理が自慢なのだろう。



[Café Amazon から見た蒼天乱気流,プレー] (2016)
Clear air turbulence at Phrae province, Thailand


大きな魚の丸揚げは、香草で彩られた豊かな味付けだ。
2010年 7月29日にアユタヤのカウボーイ・バーで食べた、魚の丸揚げ料理を思い出す。
それは、魚料理が苦手な自分にも、美味しく食せた数少ない思い出だ。

Erika もその料理のことをよく覚えていた。



[魚の丸揚げ料理,プレー] (2016)
Fried river fish, Phrae, Thailand


一番の魚料理の歌を教えてくれましたね。
そう言うと Erika は、2004年 4月17日に、華南地区の東北料理店で店員たちが歌った、一番の魚料理の歌のメロディーを口ずさむ。

12年前に華南地区で魚料理を前にして聴いた歌を、6年前にアユタヤで魚料理を頼んだ時に教えた相手が、今ここで魚料理を前にして歌う。

私の人生の数十パーセントは、今この時のために存在したと思うと、例えようがない高揚感が湧き上がる。
それは、理性を司る前頭前皮質ではなく、大脳辺縁系か大脳基底核の奥深くから来るような高揚感であった。


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