01) バンコクの休日 | BIG BLUE SKY -around the world-

01) バンコクの休日

休日に車を走らせて、気ままにアジアの田舎を廻る日々は、いつ戻って来るのだろう。
2016年にバンコクから北タイ一帯のドライブを共にした Pop からのメッセージに、東京オリンピックの頃にまた行こうと応える。
私の言う東京オリンピックは 2021年だが、南タイに住むモスレム Pop にとっては 2564年、或は 1442年、又は 1443年かもしれない。
母語と文化背景の異なる者同士が、理解をともにすることは斯くも難しい。
その Pop と過ごした気ままな日々を記して行くことにしよう。

 

 

 

第一話) バンコクの休日

2016年 7月29日に休暇を迎え、8月7日までの十日間をタイで過ごすことにした。
7月30日の朝、バンコクの常宿シンシリ・リゾートの一階テラスで熱いコーヒーを飲むと、熱帯特有の甘く湿った空気がぬめるように頬を通り過ぎて行く。
いつの頃からか住み着いた猫を撫でていると、タクシー運転手の BA 氏と、その義妹 DS 夫人がやって来た。
BA 氏と握手を交わして DS 夫人と煙草を交換すると、バンコクの休日には Khrong Thip こそが相応しいと思う。



[エラワンの祠,バンコク] (2016)
Erawan temple, Bangkok, Thailand


BA 氏のグリーンのタクシーに乗ってバンコク都心シロームへ向かい、エラワンの祠を訪ねた。
2015年 8月17日の爆弾テロから一年が経ち、エラワンの祠は何事もなかったかのような佇まいを見せる。
拝観料を払って供物が載ったトレイを受け取り、本堂に上がって拝礼する。
僧侶へ供物を渡し、日曜日の仏像前にロウソクを立てて、賽銭箱に 20バーツ紙幣を入れた。

DS 夫人は、自らの守護神だと言うカーリー神のような、厳めしい表情を見せる。
普段はパールヴァティーのように柔和なのだが、ここに来るとカーリー神のような厳めしい表情になる。
カーリーはパールヴァティーの違った側面だと言われても、理解することは難しい。
以前、DS 夫人から渡されたヒンドゥー説話の本を、未だに読んでいないことを思い出す。



[マリアマン寺院,バンコク] (2016)
Sri Maha Mariamman Temple in Silom, Bangkok, Thailand


タクシーの常連客に呼ばれた BA 氏とはここで別れて、DS 夫人とセンセープ運河の水上バスでバンガピーへ戻ることにする。
丁度通勤・通学の時間に当たったのだろうか、パットナムから乗った水上バスは '80年代東京の地下鉄並みの大混雑だ。
アソーク/ペッブリーで大勢が下船して、ようやく落ち着くことができた。
ラチャダーへ行くには何処で降りるのでしょうかと、乗客たちに聞いていた女性はどこへ行ったのだろう。
周囲を見渡すと、先程まで隣りにいた筈の DS 夫人が、いつの間にか前方の座席に着いていた。

クロン・タン・ブリッジを過ぎると、右岸には幾何学模様の装飾に彩られたモスレム住宅が続く。
エカマイの路地に住むお姉さん一家は、どうしているのだろうか。
お姉さんが三ヶ月前に逝去していたことを知った DS 夫人が、イスラム帽の店主の店でコーラを買って一息に飲み干した姿を思いだす。
右岸を見つめる DS 夫人の端麗な横顔は、三年前のその時に似ていると思う。



[パットナムの水上バス乗り場,バンコク] (2017)
Pratunam Pier, Bangkok, Thailand.


終点のバンガピーで下船して、ショッピングモールのカフェで一息つく。
明日はどうするのですかと聞かれて、特に計画は無いと答えると、BK 氏を呼んでミンブリーのバッファローのお寺に行きましょうと誘う。
日曜日なので、家族連れでとても賑やかですよと笑う。
姪の AI が一緒に来られるようならば連れて来てくださいと頼み、DS 夫人と別れてシンシリ・リゾートへ戻った。


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