23) ワット・ハジャイ・ナイの善行 | BIG BLUE SKY -around the world-

23) ワット・ハジャイ・ナイの善行

第二十三話) ワット・ハジャイ・ナイの善行


最終日、バンコクへの移動は夕方の便。
午前中、ハジャイ市内のワット (寺院),ワット・ハジャイ・ナイを訪ねた。
2015年に、待ち合わせをするために、入り口前まで来たことはあったが、敷地内へ入るのは今回が初めてだ。

ワットに入る前に、上座部仏教徒 DS 夫人の案内で、隣接するマーケットの魚屋で川ざかなを数匹買う。
髭の生えた比較的大きな鯉だ。
鯉を入れたビニール袋二人分を持って境内に入ると、礼拝堂と反対側の川辺へ向かい、コンクリートの堤を川辺へと降りる。



[ビニール袋に入った魚を、川の流れへ解き放つ,ワット・ハジャイ・ナイ/ハジャイ,南タイ] (2017)
Accumulation of Virtues at Wat Hat Yai Nai/Hat Yai


寺院を訪ねて魚や鳥を解き放ち、功徳を積むことを、タイ語ではタンブン ทำบุญ と言う。
この言葉はタイの上座部仏教を象徴するように紹介されるので、見聞きしたことが有る人も多いと思う。
友人と寺院へ行った時に、彼/彼女が籠に入った鳥を買っては籠を開けて大空へ解き放つこと、ビニール袋に入った魚を買っては川の流れへ解き放つことを、何度も目にして来た。
これが功徳を積むことにつながるという考え方を、俄かに理解することは難しい。

Namo Tassa Bagawato Arahato Samma Sam Buddha Sa ...

夫人は、鯉を川へ放つと、マントラを唱える。

ナモタサ パカワト アラハト サマーサプタサ ...

楊過が九陰神経の移魂大法を使ったかのように、夫人の唱えたマントラを同じように三回復唱して鯉を川に放ち、上座部仏教への敬意を表す。



[寝仏像のシルエット/ハジャイ,南タイ] (2018)
The Reclining Buddha. The great silhouette in backlight, Wat Hat Yai Nai/Hat Yai


普段は現生を目一杯楽しんでいる友人や、背中一面にタトゥーを入れた友人が、いつもより少しだけフォーマルな装いで寺院へ行く姿を見て、初めてタイを訪ねた時には不思議に思ったものだ。
その後は次第に理解が進み、今では彼/彼女等が功徳を積む姿を特別に意識することもない。

経験を積むことで、未知のことは理解可能なことへと転換する。



[川辺へ向かう敷地内に放置された丸木/ハジャイ,南タイ] (2018)
The roots of big trees neglected in the garden of the temple, Wat Hat Yai Nai/Hat Yai


タイの友人たちに都合を聞くと、その日はお寺に行くので別の日にしましょうと言われることが有る。
何日か寺に泊まるので帰ったら連絡します、という場合も有る。
在家信者たちも、寺で泊まり掛けの修業をすることが有るのだ。
白い服を着て、高僧の講義を聴き、本堂で読経をして、寺院内を清掃する。
この修業をすることで功徳を積み、私から見ると心の安寧を維持増進しているように思える。

一緒に修業に行きませんか?

関心は有るが、信仰の篤い上座部仏教徒に失礼ではと思い、行ったことはない。


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