15) 曇天のサトゥーン | BIG BLUE SKY -around the world-

15) 曇天のサトゥーン

第十五話) 曇天のサトゥーン


南タイツアーの六日目は、アンダマン海に面するサトゥーン Satun の街。
ハジャイの在るソンクラー県の西側で、マレーシアと国境を接している。
ソンクラー県からサトゥーン県へ抜ける山道で、検問に遇った。
南タイの検問では、バンコク周辺とは異なり、警官の重装備が際立つ。

日本の免許証・国際運転免許証・パスポートを差し出すと、タイ人特有の発音で名前を読み上げて、直ぐに通してくれた。
ASEAN-T から、あなたのパスポート (即ち日本のパスポート) は、強いと言われることが度々ある。
私が後部座席に居るよりも、運転席でハンドルを握っている方が、検問の通過に時間を要さない。
それは、日本の国際的な信用を表しているのだろう。



[ラグ―漁港沿いの公園/サトゥーン,南タイ] (2018)
Fishermens' boats under the big blue sky/Langu, Satun


GPS を頼りに、サトゥーンに住む友人宅を訪ねた。
友人は、家族と両親とともに私を迎えて、昼食を振る舞ってくれた。
モスレムの料理カオヤムは、ごはんにレモングラス等の香草や野菜を盛り合わせて、魚ベースのソースで食べる。
床に座って、床に置いた皿に入った料理をスプーンで取り皿にとって食べると、初めての香ばしい匂いに包まれた。

馴染みのない土地で食卓を囲むことは、単なる食事ではなく、そこから様々なことを感じ取り、経験を積むのである。
友人の家族や両親は、初めて会う日本人が、自分達と同じものを同じように食べることを、驚きを以って眺めていた。
こちらの方々にとっても、この経験から感じ取ることは多かったようだ。
日本の国際的な理解に、僅かでもつながったであろうか。



[遠くから雷の音が近付いてくるラグ―漁港/サトゥーン,南タイ] (2018)
Stormbringer coming. Dark cloud gathering. Thunder breaking the day./Langu, Satun


友人の親戚一同が到着したのを機に、再会を期して訪問を切り上げた。
今日のサトゥーンは曇天だが、晴れやかな気持ちで友人宅を後にする。
夕方の集合時間にはまだ時間があるので、海沿いの公園で過ごすことにする。
駐車場に車を止めて、レジャーシートを借りて、漁港が見える芝生に腰をおろした。

売店でコーヒーを買って煙草を燻らせると、熱帯特有の甘く湿った海風が頬を通り過ぎて行く。
曇天の下で操業する漁船のエンジン音が響き、遠足の小学生の嬌声が聞こえる。
遠い雷の音が聞こえて、私と顔を見合わせた売店のご婦人が、南タイの人特有の仕草で肩をすくめてみせた。
雨季の天候は変わり易い、もう一度南タイツアーに来るとしたら、乾季にしたいと思う。


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