07) ナコーン・シ・タマラートの名跡
第七話) ナコーン・シ・タマラートの名跡
慣れ親しんだ場所ではない地での、母語と慣習/習慣が異なる者同士の会話は、単なる会話ではない。
即ち、単に言葉を交わすのみではなく、そこから様々な事を感じ取り、経験を積むのである。
その経験によって感覚は変わり、これまで分からなかったことが、感じ取れるようになる。
旅先で会話を重ねることは、日常とは意識の向く先が変わり、対象領域の拡張に直接的につながる。
ナコーン・シ・タマラート Nakhon Si Thammarat には、ワット・プラマハータート=ウォーラマハーウィハーン Wat Phra Mahathat Woramahawihan という高名な寺院がある。
タイの代表的な王室寺院の一つに数えられる。
大仏塔チェディは、丸い白亜の台座から尖塔が聳え、その先端は黄金色に輝く。
そして大仏塔の台座の周りには、無数の白亜の小仏塔が建ち並ぶ。
機会が有れば、一度は訪ねたいと常々考えていた。
[ナコーン・シ・タマラート郊外の、近郊で一番有名な寺院,南タイ] (2018)
The Most Famous Temple in the City/Nakhon Si Thammarat
ナコーン・シ・タマラートの一番有名なワットへ行こう。
分かりました、それではご案内しましょう。
Abang の道案内で車を走らせる。
次第に人家は少なくなり、殆ど森林の中を走り続ける。
これは違うのではないかと思い、車を止めて Google マップを見ると、ワット・プラマハータート=ウォーラマハーウィハーンとは正反対の方に向かっていた。
一方で、観光バスが絶え間なくやって来るので、集客力の高いワットが有ることは間違いない。
道端にはニワトリの像が立ち並び、奉納用と思われる像を買う人々が群れを成していた。
[ナコーン・シ・タマラート郊外の、近郊で一番有名な寺院,南タイ] (2018)
The Most Famous Temple in the City/Nakhon Si Thammarat
ここがナコーン・シ・タマラートで一番のワットです。
見たことが無いほど広い駐車場に車を止めても、白亜のチェディは見当たらない。
人々が向かう先には、鉄骨鉄筋コンクリート造りの、ラスタ・カラーで彩られた巨大な御堂が聳え立つ。
ここは、商売繁盛を願う人々が集う、ナコーン・シ・タマラートで一番有名なワットだった。
私が頼んだ通り、ナコーン・シ・タマラートの一番有名なワットへ、Abang は正確に案内してくれたのだ。
但し理解が違っていた。
母語と慣習/習慣が異なる者同士が、理解をともにすることは斯くも難しい。
慣れ親しんだ場所ではない地での、母語と慣習/習慣が異なる者同士の会話は、単なる会話ではない。
即ち、単に言葉を交わすのみではなく、会話から様々な事を感じ取り、経験を積むのである。
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