04) 7月29日の朝食 | BIG BLUE SKY -around the world-

04) 7月29日の朝食

第四話) 7月29日の朝食


DS 夫人に、仕事は夕方からだと言うと、それなら朝食にいらっしゃいと招待してくれた。
IDO Boutique 三階の部屋を出て、おそらく年中クリスマスのステッカーが貼ってあるエレベーターで一階へ降りると、フロントのお姉さんに朝の挨拶をして世間話を交わし、通りを東へ出て団地へと向かった。

慣れ親しんだ場所ではない街を歩くという事は、単なる街歩きではない。
即ち、単に歩いて進むのみではなく、歩きながら様々な事を感じ取り、経験を積むのである。
その経験によって感覚は変わり、これまで見たり聞いたりできなかったことが、感じ取れるようになる。
旅先での街歩きは、日常とは意識の向く先が変わり、対象領域の拡張に直接的につながる。

団地 1号棟北側の階段を上り、廊下の北端から南端寄り二軒目の部屋まで真っ直ぐに歩く。
団地の部屋は同じ作りだが、一軒ごとにまるで違った使い方をしているのが興味深い。



[団地の窓飾り/ハジャイ,南タイ] (2018)
Window view of a corridor of a local apartment/Hat Yai


朝食に日本の味噌汁を、用意してくれているとは思わなかった。
日系のロビンソン百貨店で、買って来たそうだ。
付け汁ナム・プリックは、日本の醤油ベースで作られていた。
この醤油も、ロビンソン百貨店で買って来たと言う。
気遣いに感謝する。



[朝の定食,目玉焼きにイカと野菜炒めライス/ハジャイ,南タイ] (2018)
Rice with fried egg and stir-fried squid and vegetables, Japanese miso soup & dragon fruit/Hat Yai


それにしても料理とは全く不思議なものだ。
タイのおかず掛けご飯と、ガラスの器に注がれた日本の味噌汁と、醤油ベースのナム・プリックとが、一体的に合成されて食卓を飾っている。
これらは、対象領域を拡張せずとも、タイ料理以外の何ものでもない。

慣れ親しんだ場所ではないところでの食事は、単なる食事ではない。
料理を食べながら様々な事を感じ取り、経験を積むのである。


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