04) バンセーンへの道 | BIG BLUE SKY -around the world-

04) バンセーンへの道

第四話 バンセーンへの道


バンセーンへ向かうミニバスの中は、寒いほどにエアコンが効いていた。
後ろから二番目の席に着くと、エアコンの吹き出し口の横に、後から取り付けた配線とコネクタが見える。
コネクタは TE 社の 3ピン用だ。

広場の出口で拾ったタクシーは、今までで一番のオンボロだった。
ドアは壊れかけとも言っていいくらいで、天井にはコネクタがぶらぶらしている。
コネクタは AMP 社の 2ピン用だ。


相棒は、まず昨日の店に寄りますと言う。
聞き返す私に、昨日寄った店に CD を忘れたと言う。
タクシーはよろず屋を左に曲がり、北京料理店を右折して昨日の店に横付けする。

相棒は、ちょっと待っていてと店の中に消えたきり、なかなか戻って来ない。
運転手は店を指し示して何か話しかけるが、彼の話す言葉は聞き取ることができない。
愛想が良いのか悪いのか分からない運転手だったが、私が日本から来たと分かると "昴" をかけてくれた。
"昴" が広く知られていると言うのは、どうやら本当のことだった。



[ AL 氏の次女 Ai ] (2015)


エンジンをかけたままの、エアコンが寒いほど効いたタクシーの中で、10分近く待ったと思う。
やっと戻って来た相棒は手ぶらだった。
大丈夫です、きっと有ります。

昨日の店員は夜になったら来るので、夜にもう一度行きます。
 

あの CD が相棒の手に渡るまでには 5カ月を要した。
郵送することが出来ない地に住む相棒に、ようやく渡すことができたのだが、多分もう見つからないだろう。

「 着きました。バンセーンですよ 」

ミニバスはバンセーンに到着して、車外では Ai と Sam がミンブリー市場で買った新しいサンダルの調子を確かめていた。
DS 夫人の昨年より少し太くなったタトゥーの眉に促され、ミニバスを降りてロータリーを見回すと、ここには以前来たことが有ることに気付く。
角の 7-11,その横のホテルのフロント,屋台の売店が建ち並ぶ海岸通りには、見覚えが有る。
DS 夫人,Ai と Sam の三人と、ロータリー角の 7-11 へ向かった。


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