20) 芋と魚の甘い煮付け料理
第二十話) 芋と魚の甘い煮付け料理
木の家を出て、ニュー・サクラ・ホテル前十字路のホテルとは斜向かいに在る、中華系の南タイレストランへ入る。
Jie Jie (姐姐)。
共同炊事場のご婦人が、店員を中国語 (北京語) の呼称でそう呼んだ。
隣国マレーシアで仕事をしていた時に、中国語を覚えたそうだ。
共通の言葉が片言でも有ると、理解は格段に進む。
[食べ損ねた昼食会の料理,ハジャイ,南タイ] (2015) 共同炊事場のご婦人による撮影
Erika が極稀な連絡を寄越して、私のオフと都合が合って、Erika が住む木の家 (木造二階建てのアパート) を訪ねて、そこの中庭の共同炊事場を愛用するご婦人と知り合って、数日後の昼食会に間に合わずに、近所のレストランに一緒に来て、中国語で会話をする確率は、どのくらいだろうか。
ざっと計算すると 0.000005%以下と出た。
普通であれば起こり得ないことが、Erika に関わると次々と起こる。
躁状態に突き動かされた、観念奔逸の激流のような行動が、確率を跳ね上げる。
ベイズ推定の事前確率に Erika を当て嵌めると、事後確率は起こるべくして起こる程に跳ね上がる。
客観性には欠けるが、ハジャイに来て Erika と行動を共にする前提で、先の確率を求めると、およそ 20%に近い値と出た。
[中庭のキッチン,ハジャイ,南タイ] (2015) 共同炊事場を愛用するご婦人
ハジャイにしかない味付けで、あなたが美味しいと思う料理を注文してください。
このリクエストに、共同炊事場のご婦人が選んだのは、サツマイモのような甘い芋と魚の甘い煮付け料理だった。
また降りだした土砂降りの雨が起こす風に乗って、料理の甘い香りが頬を通り過ぎて行く。
この料理を頼んで、土砂降りの中で甘い香りに浸る確率をさらに求めると、ざっと 0.5%くらいだろう。
今後、この甘い香りでハジャイを思い出すことは間違いないが、ハジャイ以外でこの香りに出合うとは考え難い。
事前確率にハジャイ以外を当て嵌めると、事後確率はほぼゼロとなる。
ハジャイを再訪する機会が持てたならば、ここでこの料理を再び楽しむことにしよう。
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