16) 繰り返す観念奔逸の日々
第十六話) 繰り返す観念奔逸の日々
「 お寺へ行きましょう 」
Erika の一言で、トン・ンガ・チャン滝からトゥクトゥクに乗ってハジャイ市内へ戻り、有名な寺院ワット・ハジャイ・ナイへ向かう参道の入口前に着いた。
大きな寝仏の像を拝みましょうと言っていたのだが、トゥクトゥクを見送ると、寺には寄らずに、車を乗り換えて食事に行くと言う。
一時間前までトン・ンガ・チャン滝の宴席を囲んでいたのに、又食事に行くと言う Erika に唖然とした。
この時の Erika の言動には、実に久し振りに唖然とした。
言動には一貫性が無く、思い付きで行動しているとしか思えない。
次から次へと関連性の無い事を話し続けて、先に話したことは二度と話題に上らない。
[ワット・ハジャイ・ナイの寝仏] (2018) 三年後の初めての訪問時に撮影
しばらくすると、トヨタの車がやって来て、Erika・ヘアケア嬢・泠龍嬢と私を乗せると、川辺のレストランへ向かった。
オープンエアのレストランの、通りを隔てた川べりに席を作って貰い宴席を囲む。
トヨタ車の兄さんは、ヘアケア嬢の従兄と名乗った。
間もなく、トヨタ車兄さんの妹とその友人、泠龍嬢に惚れていると思われるバイクの兄さんがやって来た。
タイの宴会では、歓迎される方が飲食代を負担する。
この宴席は遠くから来た私を歓迎するという名目であり、ここに現れる者は全員がタダ飯目当てである。
この展開に一々失望していては、アジア諸国で日々を過ごすことは難しい。
「 ちょっと出かけて来ます 」
間断無く話し続けていた Erika は、泠龍嬢狙いの兄さんのバイクを借りて、どこかへ出かけて行った。
誰かが二種注文していたスパゲッティを、皆で食べ終えても、Erika は戻って来ない。
時計を見ると 20時を回っていた。
ここはこのくらいにしよう、会計を頼んで 1,400THB (=5,076円) を支払うと、トヨタ車兄さんにニュー・サクラ・ホテル近くのスパへ送って貰った。
[南タイ,ハジャイのドリアン] (2015)
スパ店頭のベンチには、店のスタッフ二人とお客さんが一人座っていた。
長身のお嬢が勧めるドリアンを一切れ貰うと、初めて見るお客さんが親し気に話しかけて来た。
どこから来たのですか?
長身のお嬢がそっと目配せをしたので、警戒心を以て受け答えをすることにした。
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