12) 木の家前のベンチで過ごす夜更け | BIG BLUE SKY -around the world-

12) 木の家前のベンチで過ごす夜更け

第十二話) 木の家前のベンチで過ごす夜更け

スパ店頭のベンチでとぐろを巻いて、随分と時間が過ぎた。
時計を見ると 23時半だ。
もうすぐ閉店だと言うので、木の家,木造二階建てのアパートへ戻ることにした。
Erika から、リンゴちゃんの部屋の鍵を預かっていたので、戻って寝るだけだ。

お嬢たちに挨拶をして、ニュー・サクラ・ホテルの横を通って大通りを渡り、一本先の路地を木の家の方へ曲がると、Erika の嬌声が聞こえて来た。
木の家,木造二階建てのアパートの入口の鉄格子の扉の前には、テーブルとベンチが置かれて、そこで Erika を中心に宴席が繰り広げられていた。



[木の家の入口前の宴席,ハジャイ,南タイ] (2015)  後日、Erika による撮影


「 おかえりなさい 」

眼光鋭い中年男性のことを、彼はマフィアだと耳打ちしてから、Erika は私を紹介した。
彼は煙草の葉を巻いて吸う、巻煙草を勧める。
いつものように細く巻いて、やわらかく吸うと、彼は黙って頷いた。

「 さっきカラバオの人がいました 」

タイでは国民的な人気を誇るバンド、カラバオが、ハジャイに来ているのだろうか。
おそらく、どこかのバーで撮った写真を見せられた。
Aed Carabao のような風貌だが、Aed に比べると相当若い。
ご丁寧にカラバオ・キャップを被った、そっくりさんだった。



[エート・カラバオのそっくりさん,ハジャイ,南タイ] (2015)  Erika による撮影


木の家の住人が入れ替わり立ち代わりやって来て、Erika を中心とした宴席は延々と続く。
時計は 2時を回っていた。
軍事政権になってからと言うもの、深夜の外出・集会は取り締まりの対象となっている。
それでも宴席には現職の警官も居るのだから、ハジャイでは緩いのだろうか。

Erika と過ごす一日は、いつものように、どうしようもなく長い。
深夜の路地に、Erika の嬌声だけが高らかに響いていた。


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