#03-11 Crises/Mike Oldfield | BIG BLUE SKY -around the world-

#03-11 Crises/Mike Oldfield

BIG BLUE SKY    ~旅の空の下で~-1101_crises
[Crises/Mike Oldfield] (1983)


Side-A
1. Crises
Side-B
1. Moonlight Shadow
2. In High Places
3. Foreign Affair
4. Taurus 3
5. Shadow On The Wall

 

 


'83年発表、Mile Oldfield の 8th アルバム。Side-A には 20分超の組曲、Side-B には歌物を中心にポップな小品を配している。B-1 "Moonlight Shadow" は欧州各国で No.1 を記録して、Milke Oldfield の過去最大のヒット曲となった。Mike Oldfield は元々欧州で人気が高かったが、"Moonlight Shadow" の大ヒットで人気は確たるものとなった。

'80年代は、非ポップス系アーティストにとって不遇の時代であったが、エクソシストのテーマ曲ともなった "Tubular Bells" で知られる Mike Oldfield も無縁ではなかった。"Tubular Bells" は創業間もない Virgin レコードに大きな収益をもたらし、経営路線を決定付けたかに思えた。しかし '70年代後半に New Wave 路線に転換した Virgin レコードは、Mike Oldfield に対して、楽器演奏中心の大曲ではなく、歌物のポップスを作るように強く指示していたと伝えられる。
これに対応して、Mike Oldfield は '79年作品 "Platinum" 以降、"QE2","Five Miles Out",本作 "Crises" と、LP 一面に大曲を収録して,他の一面には歌物の小品という構成から成る作品を発表している。これは、レコード会社の要請と、Mike Oldfield 本来の作風との、妥協点を見つけたものだったのだろう。そして、これらのアルバムからは、何曲ものシンプル・ヒットが生まれてチャートを賑わしていった。Mike Oldfield は、アーティストとしての本質と作品水準とを堅持して、'80年代という時代へ対応することが出来た数少ない存在だと思う。

さて '83~'84年頃、私の車には、このアルバム "Crises" と次の作品 "Discovery" のカセット・テープが常備されていた。Mike Oldfield の作品は、特に音楽系人脈外の友人・知人には親しみ易く評判が良かったので、この 2作が定番となっていた。
そのような背景が有って何度も聴いている内に、歌詞の情景が記憶に刷り込まれて行ったからなのか、今でも "Crises" 楽曲を思い出して、歌詞が口をつくことが多い。


BIG BLUE SKY    ~旅の空の下で~-1102_moonlightshadow
[Moonlight Shadow (EP)/Mike Oldfield] (1983)


では、楽曲にまつわるエピソードを紹介しましょう。

Side-B
Track-1. "Moonlight Shadow"
Mike Oldfield お得意のシンプルな曲調のポップ・ソング。C#m,A,B,E の 4コードで構成されている。盟友 Simon Phillips の快活なドラミングと、疾走する Mike のギターが素晴しい。しかし何と言っても、この曲を特徴付けているのは、Maggie Reilly の歌唱であることに異論は無いだろう。土曜日の夜、逃亡中の男に弾丸を六発撃ち込まれてこの世を去った恋人と、天国で再会出来ることを願う ...  Maggie の儚い歌唱が印象に残る。
私は空に懸かる月を見ると、この曲をいつでもどこでも思い出す。東関東自動車道で利根川の橋の上から見えた新島地区を照らす満月,小田原・厚木道路が御殿場線と交差するところで見た鉄道を照らす満月,自宅のベランダから見る満月のように旅先の宿のベランダから眺めた満月 ...  "Carried away by a moonlight shadow. Far away on the other side." という歌詞がリアルに感じられる瞬間である。

Track-2. "In High Places"
Jon Anderson が歌うナンバー。軽い Reggae アレンジが光る。螺旋階段を登った灯台の最上階,ビルの屋上,タワーの展望台 ...  高い建造物に登ると、この曲を思い出す。ニュージーランド,クライスト・チャーチ大聖堂の上階で"Could we get much higher? " と歌詞を呟いていたら、隣にいた人が "I guess No." と答えたことがあった。調子に乗って "Are you a navigator to heaven ?" と聞いたら、怪訝な顔をされた。


BIG BLUE SKY    ~旅の空の下で~-1104_tower
[バーン・パイン宮殿のタワー,"Could we get much higher? "]


Track-3. "Foreign Affair"
熱帯へと向かう飛行機に搭乗してシート・ベルトを締めると、必ず頭の中でこの曲が流れ出す。
"Foreign affair. Take a trip in the air. To a tropical beach. An island to reach. A new territory. For an intimate story. A lagoon par la mer. It's a foreign affair. ...  "
不思議なもので、熱帯から帰って来る時には、この曲を思い浮かべることはない。

Track-4. "Taurus 3"
Mike Oldfield のアコースティック・ギターが鳴り続けるナンバー。アコースティック・ギターの演奏は、とても交響楽的に聴こえる。16分音符でのコード・ストロークがフォルテ・フォルティッシモ fff で続くところでは、一体何本のギターをダビングしたのだろう。この曲がカー・ステレオから流れて来ると、フォルテ・フォルティッシモのところでアクセルを踏み込んでしまうので、意識して気をつけなくてはいけない。

Track-5. "Shadow On The Wall"
中国華南地区で、徹夜で仕事をしていた日のことだった。深夜、建屋の外に出て一服している時に、壁に木の影が映っているのを見て、自然にこの歌が口をついて出た。
"Treat me like a prisoner, treat me like a fool, treat me like a looser, use me like a tool.
Waste me till I'm hungry, lose me in the cold, treat me like a criminal, just a shadow on the wall."

明日から国慶節休みだというのに、徹夜で仕事をしている情景にぴったりだと思って、笑ってしまった。


BIG BLUE SKY    ~旅の空の下で~-1103_shaowonthewall
[Shadow On The Wall (EP)/Mike Oldfield] (1983)


Side-A "Crises"
中国華南地区で常宿にしていたホテルのベランダに立つと、月と海とビルが見えた。この情景が "Crises" のフロント・カバーそのままだったので、iPod に入れて来た "Crises" を聴きながら悦に入った。
"Crises, crises, you can't get away."
Mike Oldfield のシンセサイザーによる、シンフォニックなアレンジは、雲間から漏れる月光のようにどこまでも透明な音で、海を彩る漁火と灯火が揺らめき続けるような僅かなビブラートが心地良い。
"The watcher and the tower, waiting hour by hour."
"Crises" は、正にこの情景を描写した楽曲だと思えた。


BIG BLUE SKY    ~旅の空の下で~-1105_crises
[華南地区ホテルのベランダからの眺め,"The watcher and the tower, waiting hour by hour."]


"Crises" を聴くと、多種多様な楽器を演奏出来るマルチ・インストルメンタリストの作る音楽は、通常の音楽とは決定的に違うことが良く分かる。アートからポップまで矛盾無く創作出来るのも、マルチ・インストルメンタリストの特質なのかもしれない。Mike Oldfield 作品を聴く度に、マルチ・インストルメンタリストへの憧れと渇望が湧いて来る。年に一つくらいのペースで、新しい楽器を習得して行こうかと思う。

(Mike Oldfield official site: http://www.mikeoldfieldofficial.com/ )


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