#03-04 The Green Album/Eddie Jobson | BIG BLUE SKY -around the world-

#03-04 The Green Album/Eddie Jobson

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[The Green Album/Eddie Jobson・Zinc] (1983)


Side-A
1. Transporter
2. Resident
3. Easy for You to Say
4. Prelude
5. Nostalgia
6. Walking from Pastel
7. Turn It Over
Side-B
1. Green Face
2. Who My Friends...
3. Colour Code
4. Listen to Reason
5. Through the Glass
6. Transporter II


Eddie Jobson には寒色系の色が良く似合う。同じキーボードのスター・プレーヤー Keith Emerson が、バハマが似合う暖色系なのに対して、Eddie Jobson はアラスカが似合う寒色系で、好対照をなしている。

Curved Air "Air Cut",Roxy Music "Siren",UK "Danger Money" ... Eddie が参加したバンドの名作には、偶然なのだろうか、寒色の装丁が施されている。
UK "Danger Money" に針を落とせば、タイトル曲 "Danger Money" のイントロで、YAMAHA CS-80 のパイプ・オルガン音による氷の大聖堂が聳え立つ。歌メロ開始部での、Gm (on E♭)-F (on D)-E♭(on C)-F (on D) と動く三和音の響きは限りなく青い。続く "Rendezvous 6:02" のイントロで、G♯-G♯m7 (on F♯)-E-D♯ の進行で繰り返される 7/16 拍子のアルペジオの向こうには、夜明け前の雨降るパーク・レーンが見え隠れする。シングル・カット曲 "Nothing To Lose" のバイオリン・ソロは、国境に向かって飛ばす車を照らす青白いサーチライトのようだ。
Eddie の作り出す音は、冷気に満ちている。


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[Air Cut/Curved Air] (1973)


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[Siren/Roxy Music] (1975)


Eddie 初のソロ・アルバムのタイトルが "The Green Album" だと知って、Green は寒色,暖色のどちらだろうかと思いつつ、早速、横浜西口ニチイ 2階の YAMAHA で発売日に購入する。"The Green Album" はレコード盤まで Green 一色で、徹底したコンセプト・アルバムとなっていた。

早速、Side-A に針を落とすと、冷気をたっぷりと含んだシーケンス・メロディーで、アルバムは幕を開けた。ピアノ・ソロ曲 "Prelude" は、まるで氷の鍵盤に連動する氷のハンマーで、凍りついた弦を叩いているようだ。続くバイオリン曲 "Nostalgia" は、"Prelude" で出来た氷の山に、さらに冷気のフレークを振り撒いているかのように聴こえる。やはり Eddie の表現する Green は、寒色系だった。

しかし、寒色系とは言っても、Eddie の音は熱い。透明ボディのバイオリンは、まるで青い炎が赤い炎よりも温度が高いように、空間を切り裂くように響く。それは、任我行の "吸星大法" に打ち勝った、左冷禅の "寒冰真気" のようである。


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[The Green Album の LP 盤面] (1983)


Side-B のハイライト曲 "Listen To Reason" で、Eddie は "Green is now. Pink is next." と歌い、次回作が "The Pink Album" になるだろうことを暗示する。暖色系の Pink は、Eddie には似合うだろうか? 私には、Eddie の "The Pink Album" を想像することは出来なかった。

一時期、この事が気になって仕方がなかった私は、遂に寒色系の Pink をテーマとした曲を作って、自身のキーボード・トリオのレパートリーに加えた。"Pinky Green" という嘘のようなタイトルのインストルメンタル曲で、寒色に取り込まれて行く暖色を、まずまず表現出来たと自負していた。この曲を演奏する度に、Eddie なら Pink をどう表現するだろうかと、次回作への期待は膨らんでいった。


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[Theme Of Secrets /Eddie Jobson] (1985)


"The Green Album" から 2年後の '85年に届いた Eddie の新作は、"The Pink Album" ではなく、"Theme Of Secrets" と題された青・紫色装丁の完全なる寒色系のアルバムだった。Synclavier を使って、Eddie が全てを一人で演奏したアルバムは、"Prelude" や "Nostalgia" の遥か北,北緯66度33分以北の極北の音に感じられた。ジャケットに見る Eddie の表情まで、まるで "辟邪剣譜" を修練してしまったかのように、冷たい気に満ちていた。それでも、"Theme Of Secrets" は静かな名作として、"The Green Album" を上回る評価を得ている。

"Theme Of Secrets" 発表後、Eddie Jobson は TV ドラマの音楽制作に携わるようになり、シーンの表舞台に登場することは少なくなって行った。

現在、"The Green Album" は廃盤となっている。ここ数年、Eddie は再びメジャー・シーンでの活動を活発化して来ており、今年はとうとう John Wetton (B,Vo),Terry Bozzio (Ds) のトリオ編成から成る UK を再結成して、日本を含むツアーが予定されている。この UK 復活の記念に、"The Green Album" が再発されることを願っている。

(Eddie Jobson official site: http://www.eddiejobson.com/ )


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