#02-12 Drama/Yes | BIG BLUE SKY -around the world-

#02-12 Drama/Yes

BIG BLUE SKY    ~旅の空の下で~-2401_drama
[Drama/Yes] (1980)


Side A
1. Machine Messiahh
2. White Car
3. Does It Really Happen?
Side B
1. Into the Lens
2. Run through the Light
3. Tempus Fugit


'80年に、Jon Anderson (Vo),Rick Wakeman (Key) が Yes を脱退したという、衝撃的なニュースが届いた。
そしてさらに驚いたことには、The Buggles の二人 Trevor Horn (Vo),Geoff Downes (Key) が新たに Yes に加入して、ニュー・アルバムをレコーディング中だというではないか。
The Buggles は、'79年に "Video Killed the Radio Star" を英国で No.1 ヒットさせたポップ・デュオ。
どちらかと言うと、New Wave,Techno Pop に属する音だと思っていたので、プログレッシブ・ロックの老舗 Yes と合体するということの意味がよく分からなかった。
多分、Yes ファンの殆どは、この事態を肯定的には受け止めていなかったと思う。

'80年の夏に "Drama" が発表された時、あまり期待しないで聴いたのだが、予想に反して "Drama" は素晴らしい作品に仕上がっていた。
Trevor,Geoff のポップ感覚と、Yes サウンドが見事に融合して、新しい音楽を作り出すことに成功している。
私にとって "Drama" は、"Relayer","Going for the One" とともに、Yes 作品ベスト3の一角を占める大好きな作品である。

Trevor の声質は Jon と全く異なっているが、Trevor の歌う楽曲は、目隠しをして聴いたとしても Yes にしか聞こえない。
何故だろうか? 演奏が Yes にしか聞こえないからだろうか? と考えてみたが、当時は理由が分からなかった。
時は流れて '89年、Anderson Bruford Wakeman Howe (ABWH) のアルバムを聴いた時に、今度は Jon が歌っているにも関わらず、Yes には聞こえなかった。
何故だろうかと考えて、はたと気付いた。
Yes 楽曲を特徴付けていたのは、Chris Squire (B,Vo) のバック・コーラスだったのだ。
Chris の声が聞こえる "Drama" は Yes にしか聞こえず、Chris が参加していない "ABWH" は Yes に聞こえなかったのだ。
"Drama" と "ABWH" とを聴き比べてみて、はっきりと分かった。

一方の Geoff Downes は、Rick Wakeman や Patrick Moraz のような卓越したプレイを見せることはなく、クラッシックやジャズのフレーバーを感じさせることもない。
バッキングに徹した Geoff のプレイからは、インスピレーションを受けることもなく、特別に彼から学んだものはない。

Steve Howe (G,Vo),Chris Squire (B,Vo),Alan White (Ds) の演奏は、円熟したバンドとは思えない瑞々しさに溢れている。
特に、Steve のギターの新鮮な響きはどうしたことだろうか。
"Into The Lens" の PV では、ギター 3本を持ち替えて弾き分ける、見事なプレイが堪能出来る。

ベスト・トラックには "Into the Lens" を推すが、この曲は元々 The Buggles の曲だった。
"Into the Lens" は The Buggles の 2nd アルバム "Adventures in Modern Recording" ('81) に "I Am A Camera" のタイトルでセルフ・リメイクされている。
Yes バージョンはハード・ロックだったが、The Buggles バージョンでは、より空間的な広がりを見せる美しいアレンジが施されており、新時代のプログレッシブ・ロックに仕上がっている。
こちらもまた、アルバム中のベスト・トラックだと思う。

"Drama" は英国ではチャート 2位に達するヒットとなり、米国ツアーも成功を収めた。
しかし、英国ツアーでは、Jon Anderson を求めるファンが Trevor に罵声を浴びせることが重なり、これが Trevor の脱退へとつながって、Yes は '81年に解散した。
Jon のいない Yes は、まるで Mick がいない The Rolling Stones のようなものだったのだろう。
バンドの顔の後釜には、辛い経験が待っているのが常なのかもしれない。


BIG BLUE SKY    ~旅の空の下で~-2402_cometastetheband
[Come Taste the Band/Deep Purple] (1975)


Trevor Horn と "Drama" は、Deep Purple に Ritchie Blackmore の後釜として参加した Tommy Bolin と "Come Taste the Band" によく似ていると思う。
"Drama" と "Come Taste the Band" は、'70年代に一時代を築いた Yes,Deep Purple の最後の作品であり、旧来のファンからは、徒花か鬼っ子のように扱われ続けている。
両方とも素晴らしい作品であるだけに、正当に評価されるることを望んでいる。

(Yes officcial site: http://www.yesworld.com/ )


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