去年書いた小説で投稿していないものがあったので、投稿します。

 

 『アーネスト・ダム』の題名でコンクールに応募予定の、『ナオミ』です(『ナオミ』を加筆・修正して、『アーネスト・ダム』に仕上げるつもりです)。

 

 精神的に不安定な少女ナオミが約一年にわたって日記をつける、という内容の日記体小説で、全9章です。
 

 今回は、『ナオミ』の第1章です。

 

 

二千二十三年四月三日

 

 今日、お姉ちゃんが大学の寮に入るために、家を出ていった。

 

 うちはやたらと兄弟が多いけど、そのうちのひとりがいなくなっただけで、すごく寂しい。お姉ちゃんと、お兄ちゃんと、私と、妹の恵美(めぐみ)と、それから弟の譲二(じょうじ)の五人兄弟なの。もっとも、ジョージ(譲二のあだ名ね)は、飼い犬のポールは僕の弟だって言い張ってるから、六人兄弟とも言えるかもだけど。

 

 一応、私たち兄弟の年齢と学年を書いておくわね。って、なんで日記帳相手にこんなに真面目にしゃべってんだか分かんないけど。お姉ちゃんが十九歳の大学一年生(昨日の四月二日が誕生日だった)、お兄ちゃんと私が十六歳の高校二年生(双子なんだけど、「お兄ちゃん」って呼ばないとめちゃくちゃ怒られる)、妹が九歳の小学四年生、弟が八歳の小学三年生、そしてポールが一歳。

 

 お姉ちゃんは昔から、すごく頭が良くてしっかりしてる。大学では心理学を専攻するらしい。お姉ちゃんが心理学を学ぶために大学に行きたいって言ったとき、私はすぐ納得した。お姉ちゃんは昔から人の気持ちとか行動原理を考えるのが大好きで、心理学の本をいっぱい読んでたの。

 

 お兄ちゃんは口が悪くて生意気で、家族みんなに当たりが強いけど、メグ(妹の恵美のあだ名ね)にはすごく優しい。あと、昔から絵を描くこととサッカーが好きで得意で、どっちもすごく上手い。

 

 メグは可愛らしいものが大好きで、一緒に雑貨屋さんに行ったりすると、絶対に一時間はかかる。あと、バレエ教室に通ってて、体幹がすごくしっかりしてる。何にぶつかっても、決して倒れない強さがあるの。おまけに、宇宙で一番負けず嫌いで可愛い最高の女の子。

 

 ジョージは元気いっぱいの男の子で、ブルース・リーとジャッキー・チェンが大好き。家の中ではお兄ちゃんと喧嘩してるか、ジークンドーを練習してるかのどっちかね。それで、お母さんに怒られる。

 

 で、私は小説を読むのと書くのが大好き(あと、映画を観るのと音楽を聴くのもね。たまに作曲もする)。でも、夢は小説家なのかと聞かれたら、イェスでもあるしノーでもある。私はただ永遠の場所を作りたいだけ。そこで一生遊んでたいだけよ。

 

 あと、小説とか詩に関してどんなことを書きたいか、正直なところ自分でもよく分かんない。ただ、そのとき心にあるものを書くだけ。ちょっと前までは、『殺される前に死んでやる』っていう小説を書いてた。うつ病の女がひたすら悩んで自殺するまでを書いた話。このときは私もかなりひどくてね。

 

 音楽…っていうかロックに関しては、「ビートルズやオアシスやニルヴァーナみたいな曲を作ろう」って常に思いながら作ってる。だからなかなか完成しないし、完成しても「オアシスそのままじゃん、これ」とかなることが多い。憧れの存在にはしたいけど、同じものを(劣化させて)作ったって意味がない。そんなわけで私のロックは『ロックン・ロール』と『ライフ・イズ・イージー』しかない。そしてこの二曲もほんとは納得できてなくて、もっとよくしたいって思ってる。だから私にはロックの才能が一ミリもないのよ。悲しいわよね、私はこんなにロックが好きなのに。

 

 ま、しょうがない。他にも楽しいことはいっぱいあるしね。

 

 本棚には、本やらシーディーやらが色々ある。本は主にサリンジャーとか…『裸のランチ』とか…アリス、ナルニア、マーニー…日本の作品で言ったら賢治とか、梶井基次郎とか、恩田陸とか…池井戸潤もある…さくらももこのエッセイも大好き…あとこれか、『遺書』と『松本』。ダウンタウンはあんまり知らないんだけど、お母さんが大ファンでね。お母さんが持ってたこの二冊をよく勝手に引っ張り出してさ、気に入って何回も読んでたら、お母さんが譲ってくれたのよ。面白いところに付箋貼りまくって、今じゃ参考書みたいになってる。

 

 シーディーはほとんどエルヴィス、ビートルズ、オアシス、ニルヴァーナ、サザン、ブルーハーツね。あとアドも一枚ある。ビートルズとオアシスとニルヴァーナの曲は全部聴いた。エルヴィスの曲は、まだあんまり聴けてない。

 

 あと、私について何か書くことあったかな。ああ、そうそう。中学三年生のときから吃音症。最初は酷かったけど、最近はだいぶマシ。

 

 ところで、私は直美(ナオミ)って名前なんだけど、メグはこの名前を羨ましがってる。私は、恵美の方が可愛い名前だと思うんだけどな。

 

 そんなメグは、お姉ちゃんが出ていったことを、私やお兄ちゃんやお父さんやお母さんに比べると、そんなに寂しがってない。ジョージもそんなに寂しがってないかな。たぶん、お姉ちゃんが勉強や習い事で忙しかったせいね。私とお兄ちゃんより、家にいることが少なかった。私とお兄ちゃんは、小さい頃によくお姉ちゃんと遊んだけどね。

 

 私の想像の中の友だちの話をすると、その子はルーナスっていってね、髪を葉脈で作ったリボンで縛ってて、目はバリバリ燃える炎でできてるの。彼女のボーイ・フレンドがさらにクールな奴で、ネーラヴィンストっていうんだけど、髪は月光の色をしてて、目には流れ星がときどきひゅうひゅう流れて、大きな大きな銀河のチョッキを着てる。イカしてるでしょ?

 

 宗教に関して書いておくと、神様は信じてるわけでもないし、信じてないわけでもない。ていうか、どっちでもいい。私にはどうでもいい。いようがいまいが、結局生きるのは自分なんだから。

 

 って、なんでこんなこと書いてるんだろう。どうでもいいことなのにな。まあ、また気が向いたら書くね。

 

 

 

 

 

二千二十三年四月四日

 

 お姉ちゃんがいなくなってから、毎日ほんとに寂しい。お姉ちゃんは、寮で寂しくなったりしないのかな?

 

 あと、私も来年は大学受験だから、英語の勉強をしたり作文や小論文を書いたり、色んなことをしてる(ちなみに、総合型選抜で受けることにした)。そのおかげか分かんないけど、ちょっとは文章が上手くなったような気がする。

 

 他のみんなは変わらず元気。お父さんとお母さんは、お姉ちゃんがいなくなってから、ちょっと寂しそうだけど。お兄ちゃんは、「姉貴がいなくなってくれたから、家が広くなったぜ」って言ってるけど、ほんとは寂しそう。ポールはたまに家じゅう歩き回ってお姉ちゃんを探してる。

 

 今日はこれで終わりにしようっと。お母さんが「ごはんよー」って言ってるから。