こんにちは、あすなろまどかです。




 中学3年生の春休み、こんな記事を投稿しました↓


 


 今回は久しぶりに、おすすめの本の紹介をしてみようと思います。



 最近読んだおすすめの本は、コチラ↓




 池井戸潤さんの『下町ロケット』です。

 



 エンジン等を造っている中小企業・佃製作所と、その製作所の技術を手に入れようとする大企業・帝国重工を巡る、男たちの汗と情熱にあふれた泥臭い物語です。その泥臭さが最高でした。


 作中での時間経過は、約1年に渡ります。



 佃製作所が製作したバルブシステムを求める帝国重工。そのシステムを使って、帝国重工は自分たちのロケットを飛ばそうというのです。


 しかし、部品供給のみをしたい佃社長と、バルブシステムの特許ごと買いたい帝国重工の社員たちの意見や思惑は噛み合いません。


 さらに佃製作所内でも、部品供給をした方が良いと言う者と、特許を帝国重工に売る方が良いと言う者に分かれていました。その分裂は、まさに佃製作所の社員の絆や団結力の分裂を表します。



 帝国重工に特許使用許可を渡せば、社員たちは安定した給料のもと、家族を養っていくことができます。しかし佃製作所内で一番偉い人間である社長・佃航平が、部品供給という選択をこだわり通します。それは何年も前に夢破れた佃の、その夢の続きを追いたいという、熱い気持ちそのものなのでした…。




 時折 交錯する、それぞれの過去。

 バラバラになった仲間や絆が修復されてゆくシーン。

 思いがけない事件が起こり、再び全てが崩れそうになる佃製作所。

 そしていよいよ、帝国重工にてバルブシステムのテストを行うシーン…。

 


 この物語には、安定なんてありません。あるのは、汗と情熱、拳と煙草、そして崩れた夢や仕事の続き。たったそれだけ。そして皆が、その不安定な状況の中で一所懸命です。社長も、元銀行員の社員も、本部長も、後輩も、若手も、弁護士も、思惑は違えど熱意は一緒。だから感動させられる。社内での立場の違いはあれど、全員が自分の意見や思惑を通そうと、ぶつかってゆくんです。



 そのせいで、ややこしい展開になったり、物事が上手く運ばなくなったりして、読んでいてイライラすることもありましたが、結局、誰が悪いのでもない。様々な立場の様々な人間がいるから、いざこざもある。そして、会社や社会とは、そういう場所なのだろうと思います。そのことを、この小説は教えてくれました。 


 その「様々な人間」の内面を、池井戸さんは丁寧に描かれていて、彼は本当に登場人物を好きなんだなあと思いました。




 私は、この小説に登場する、社内の後輩や若手たちが好きです。ネタバレになるので書きませんが、後半の彼らがいい味を出しています。


 後輩や若手に限りませんが、この物語の登場人物たちはとても魅力的で、読んでいる間、ほぼ全員に感情移入してしまいました。



 社員が激昂する場面では、自分の体も熱くなる。

 社員が涙する場面では、自分の目も潤んでしまう。

 社員たちが歓喜する場面では、自分の頬も緩んでしまう。



 木枯らしの朝も、茜色にビルの窓が染まった夕方も、星の一切ない夜も、まるで自分が社員と一緒にいるかのように、目の前に見えてきます。風を、空気を、時刻を、季節を、感じるのです。




 物語があまりに面白かったので、読み終えたあと、今までめくってきた何百ものページを、また1枚ずつめくってみたり、本を置いて物語を最初から頭で追ったりして、しばらくの間ぼーっとしていました。


 それから、熱くなった胸に、すうっと冷たい爽やかな風が抜けていって、とにかく幸せな気持ちになれました。小難しい用語がたくさん出てきたし、480ページとかなり長い小説でしたが、結局、最後に行き着いた先は、そういう単純な感情でした




 …デコボコの道を、男たちは歩いてゆく。違う思惑をそれぞれ抱えて。そして佃は夢も背負って…。

 

 この最高に泥臭い物語、おすすめです。大人になって働き始めたら、また読み返してみようかな。

 



 次回は、恩田陸さんの『夜のピクニック』を紹介します。