皆さん、新年あけましておめでとうございます^ ^

 

 今回は、小説「クリムルーレの花」の続編「キャンコロトンの森」の第12章です。

 

 

 もくじ&主な登場人物はコチラ↓

 

 

 

 前回の第11章はコチラ↓

 

 

 

第12章 発表

 

 次の日。空がくっきりと澄んだ朝に、タットがアンダリを連れて、クリムルーレ家に戻ってきた。タットはフィーダに会うため、アンダリはシャウィーに会うためだ。

 

 フィーダは、ベル・フラワーフィールド(美しい花畑)で摘んできた、綺麗なダイヤーズ・カモミールをアンダリに手渡して、言った。

 

「ねえ、あんたの誕生日をめちゃくちゃにして、私、悪かったわ。ごめんなさい。」

 

「いいえ、いいのよ。私にも問題があったもの。私こそごめんなさい。」アンダリはそう言って、カモミールを受け取った。「このお花、とっても可愛いわ。」

 

 互いに謝ると、フィーダとアンダリの心は不思議な気持ちで満たされた。特にフィーダは、ほんの少し前まで、こんな女を絶対に好きになるかとかんしゃくを起こしていたのに、今ではアンダリのことがいとおしくさえ思えて、なんだか以前の自分が恥ずかしいほどだった。

 

 

 

 そのあと、アンダリはタットとフィーダに、屋根裏部屋でこんな発表をした。

 

「これからよろしくね、タット、フィーダ。」

 

「え? ああ、これからも引き続きよろしく。」

 

「なに言ってんのよ、まるで初対面みたいに。」タットと違い、フィーダはあからさまに違和感を口に出した。「急にどうしたの。」

 

「実はな、」アンダリの代わりに、彼女の隣にいたシャウィーが口を開いた。「アンダリはこの家に住むことになったんだ。」

 

「ああ、そうなんだ。」

「へえ、この家に。」

 

 タットとフィーダはそう言ってうなずいたが、すぐに「えーっ。」とさけんだ。

 

「なんだよ、その漫画みたいな反応は。」シャウィーは笑いながら言った。「俺たち、婚約したんだ。」

 

「は?」

「こ、婚約?」

 

 タットとフィーダは、状況を呑み込めずに顔を見合わせた。シャウィーとアンダリは頬を桃色に染めながら、「そう。」とうなずいた。

 

「もちろん、母親とケットさんの許しはもらったんだぜ。」

 

「い、いや、婚約って。スノーボールは?」

 タットは、それが一番気がかりなようだった。

 

「お別れしてきたわ。大丈夫よ、たまにはウォーム・フォレスト(暖かい森)に戻るつもりだから。それに、スノーボールは野生の鳥よ。ひとりでも生きていけるわ。」

 

 平然と答えるアンダリに、タットは開いた口がふさがらなかった。

 

 しかし、彼は知らなかった。いや、フィーダ以外の誰も知らなかったのだ。このあとのフィーダが、シャウィーとアンダリの婚約話よりも衝撃的な報告を持ってくるとは。

 

「そう。良かったわね、アンダリ。あんたの部屋、ちゃんとあるわよ。」

 

「ええ。シャウィーと一緒に部屋を使うの。ちょっと狭くなるけど_」

 

「違うの。」フィーダは、アンダリの言葉を遮った。「私の部屋をあんたにあげるわ。この屋根裏部屋をね。」

 

 

 みんなは、驚いてフィーダを見た。

 

 フィーダにとって、大切な本やシーディーで埋め尽くされているフィーダのこの部屋は、何よりも神聖な場所なのだ。

 

 ゆえに、彼女は心を許した者以外、この部屋に入れない。心を許した者でさえ、この部屋で寝ることは許されない。そんなフィーダが、アンダリに簡単に部屋を譲るとは、一体どういう風の吹き回しだろう?

 

 

「どういうこと?」

 

 アンダリが尋ねると、フィーダは意味ありげに微笑んだ。

 

 

 それから、今までにないほど穏やかな顔をして、澄んだ海色の瞳をきらめかせ、みんなを見つめた。しかし、その瞳の奥はどこか寂しげで、また、何かに好奇心を抱きながらも、それを恐れているように見えた。

 

 

 フィーダは深く息を吸い込んで、はっきりとこう言った。

 

「私、この家を出ていこうと思うの。」

 

 〜第13章へ続く〜