こんにちは、あすなろまどかです。
以前から読んでいた、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」を、数日前に読了。
ビートルズのジョン・レノンを殺害したマーク・チャップマンが愛読していた本という話を聞き、読み始めました。
なかなか刺激的な描写もある小説で、チャップマンがジョンを殺してしまったのも、分かるとまでは言いませんが、まあ納得できるな、と思いました。
感想としては、とても面白かったです。
勉強に不真面目な不良青年のホールデン・コールフィールドが、寄宿学校を退学になり、家に帰るまでの2日間、ニューヨークの街を放浪するというストーリー。ホールデンはたった2日間の間に、さまざまな人々に出会います。
…ですが、私ははじめから、この小説を面白いと思っていたわけではありません。
読み終わった直後の率直な感想として、
「こんな小説がこの世に存在していていいのか?」
と思いました。
主人公ホールデンは、大人の世界を「汚い」と拒絶し、極めて純粋な存在である子供たち(特に妹と弟)を愛します。
しかしその一方で、ホールデンは未成年ながら酒を飲み、タバコを吸い、さらには年齢を偽って売春婦とセックスしようとします。このとんでもない矛盾に、私はまず、とまどってしまいました。
極めつけは、読み終わったあとの無力感。この小説を読んだ方なら分かるでしょうが、ホールデンは物語を通して、いっさいの成長を見せません。天邪鬼で、矛盾だらけの不良青年のままです。
そして、読了後の充実感もいっさい味わえません。こんな意味のない物語を読むために、私は膨大な時間を使ったのか…と、正直ガックリしてしまいました。
この小説にいい印象を持ったのは、読了後、しばらくしてからです。
私は触れたばかりのものに影響されやすく、それは今回の小説も例外ではありませんでした。「ライ麦畑でつかまえて」のような小説を書いてみたい、そう思いたったのです。
そして書き始めて分かった、ホールデンのような主人公を書くことの難しさ。
正直、天邪鬼な青年の話を書きさえすれば似るだろうと思っていたのですが、そんな簡単な話ではありませんでした。
ホールデンという青年は、そして「ライ麦畑でつかまえて」という物語は、とても奥が深いのだと分かりました。
自分の中で矛盾を抱えながらも、時々正しいことをポツリとつぶやくホールデン。
彼を書くには、大人の卑しい世界も分かっていながら、世間知らずで反抗ばかりしていた青年の頃も思い出さなければならないのでしょう。矛盾を抱えた青年を書くのならば、大人と子供、2つの気持ちを持っていなければいけませんよね。それに気付けなかったのです。
そう考えると、その2つの気持ちを常に保ち続けながら、あの長い物語を最後まで書き上げたサリンジャーは、とても偉大な作家なのだな、と思いました。
そう思ってから初めて、「この小説面白いな」と感じることができました。
その感想を持てたということは、大人と子供の世界が、以前より鮮明に見えているということかもしれません。
すなわち、この物語でホールデンはいっさいの成長を見せないけれど、私(読者)は成長することができた、と。(もしかしたら、これがサリンジャーの狙いだったの「かも」しれませんね。)
それとも、ホールデンもどこかで少し成長しているけれど、私がそれに気付けなかった、とか。ホールデン自身も、もしかするとサリンジャー自身も気付けなかった、とか。
そう考えだすと、奥が深いし面白いですね。
やはり、「ライ麦畑でつかまえて」は名作だと思います。
今度、もう1度読み返してみようと思います。
ただし、今度はより大人と子供の世界をはっきり見るために、ゆっくりと。