多角化は万能薬ではない

多角化に成功する条件は、市場、技術、価値観の一致である。組織は、多角化していないほどマネジメントしやすい。単純であれば明快である。全員が自らの仕事を理解し、自らの仕事と全体の業績との関係を知る。活動も集中できる。

マネジメント 基本と原則 p 245 P.F.ドラッガー



組織には、もはやマネジメントが出来なくなるという複雑さの限界がある。トップマネジメントが事業とその現実の姿、そこに働く人、経営環境、顧客、技術を自らの目で見、知り、理解することができなくなり、報告、数字、データなど抽象的なものに依存するようになった時、組織は複雑になりすぎ、マネジメントできなくなったと考えてよい。

マネジメント 基本と原則 p 246 P.F.ドラッガー



多角化には、内的な要因と外的な要因がある。


欲求がある。同じことの繰り返しでは飽きる。違うことをしたくなる。働くことが退屈になる。この欲求はふまじめではない。いかなる組織といども、柔軟性を保ち、新しいことを試み続けるべきである。さもなくば変化の能力が委縮する。小さな変化さえできなくなる。かならずそうなる。

マネジメント 基本と原則 p 246 P.F.ドラッガー



通常は、規模の不適切さに対処するためには、経済連鎖における後方つまり原材料方向への一貫化、あるいは前方つまり市場方向への一貫化という形の多角化が必要とされる。事実いずれの一貫化も、規模の不適切さへの対策として行う時に限って効果がある。

マネジメント 基本と原則 p 246 P.F.ドラッガー



「娘の相手を探すときは、誰がよい夫になるかを考えるな。誰のよい妻になるかを考えよ。」ということわざがある。

マネジメント 基本と原則 p 253 P.F.ドラッガー



長期にわたる高度の成長は不可能であり、不健全である。あまりに急速な成長は組織を脆弱化する。マネジメントを不可能にする。緊張、弱点、欠陥をもたらす。それらの緊張、弱点、欠陥のゆえに、ちょっとしたつまずきが致命傷となる。今日の成長企業が明日の問題時になるという宿命には、ほとんど例外がない。成長そのものを目標にすることは間違いである。大きくなること自体に価値はない。良い企業になることが正しい目標である。成長そのものは虚栄でしかない。

マネジメント 基本と原則 p 260 P.F.ドラッガー



成長が必要であるとの結論に達しながら、自らの行動を変えることを欲していないことを自覚するにいたったトップには、一つの道しかない。身を引くことである。法的には企業を所有していても、他の人間の生活まで所有しているわけではない。組織は子供ではない。子供でさえ、独立させらければならなくなったことを認めざるをえない時が来る。組織とは人間の成果である。同時に、その法的な所有関係に関わらず負託である。責任あるトップは、自らが変化を望まないことを自覚する時、それまで育ててきた組織を窒息させ、いじけさせ、抑圧するであろうことを悟る。自らの成果たる組織の要求にこたえられないのであれば、身を引くことが自らの組織に対する責務である。

マネジメント 基本と原則 p 263 P.F.ドラッガー