高校に入って、少しだけ世界が広がった。

校則も緩くなって、中学の同級生はいないし、みんな自由だった。

「こうしなさい」って言われることも減って、自分で選ぶ場面が増えた。


正直、それは嬉しかった。

息苦しかった中学と比べると、自由ってそれだけで救いだった。


友達ともそれなりにうまくやれて、笑う場面も多くなったし、

「高校生活、けっこう楽しいかも」って思える日も増えていった。




でも、心のどこかではずっと気を張ってた。


感情は、出さないようにしてた。


嫌われたくなかったから、ちょっと無理してでも笑ってたし、

言いたいことがあっても、「ま、いっか」って飲み込むことが当たり前になってた。


たとえ何かにモヤっとしても、

「気にしすぎかも」「こんなことで引かれたらどうしよう」って思って、

自分の気持ちを優先することが怖かった。




自由になったはずなのに、

ほんとの意味では、自分を自由にできなかった。


「うまくやる自分」でいなきゃいけない気がして、

「嫌われない人」になることが、自分の価値みたいに思ってた。


でも、それって結局、

中学の頃に身につけた「あたりさわりのなさ」から抜け出せてなかっただけだった。




心から楽しんでいたか?と聞かれたら、

正直、よくわからない。


楽しかった記憶はあるけど、

「素の自分でいられた」とは言い切れない。