感想文の最後を飾るのは…もちろんこの作品。


☆「ごんぎつね」ムライ☆
5つのお話の中で一番「色」が違った作品。
そして一番印象に残った作品。

ごんぎつねは、子どもの頃から大好きなお話。
小学校に上がる前かな。
母方のおじいちゃん家に里帰りしていた時。
ちょうど「まんが日本昔ばなし」で映画化されたものが
TVで放映されると知って、おじいちゃんに頼んで
録画してもらったものをそれこそ良大くんのBTTF並みに
繰り返し繰り返し観たのを憶えている。
その映画の絵本も買ってもらって、ずーっと読んでたなぁ。。
っと、その話は置いといて。


孤児院で育ったゴンには「兄」と慕うコージがいた。
何をするのも一緒だった二人は大人になってからも
一緒に「組」の仕事をやりながら暮らす日々。
それでもゴンはコージがいれば、それだけで良かった。
ある日、コージからと消え入るような声で電話が。

「しくじっちまった…」

駆けつけると駅に近い公衆便所には傷を負ったコージの姿が。
病院に行こうと提案するゴンに対し、コージがこう言う。

「だめだよ俺、保険証持ってねえよ」

家に帰りたがるコージをおぶって帰ろうとするけれど、、
そのままゴンの背中で息絶えてしまう。
ひとりぼっちになったゴンの前に現れたのが、
生前コージが気に入っていた女性。
コージの命日に彼が好きだった鰻を食べようと買い物に行くが、
残念ながらラスト一個をその彼女がカゴに入れた後。
その鰻をかっぱらって、逃げるゴン。
しかし数日後、偶然自分のアパートのほど近くに住んでいた
彼女の母親の葬儀に出くわす。
「彼女が買おうとしていた鰻は、母親が食べたかったものなんじゃないか…」
後悔の念に駆られたゴンは、彼女の元へ盗んだ焼き芋を
届けるも逆に彼女が焼き芋泥棒と間違えられてしまう。
それからは彼女の家のポストへ一万円を投函するようになるゴンだが―


大筋は原作どおり。
でもテイストは完全にVシ○マ。
前日に観劇された方の「Vシ○マ・・?」って言葉と、衣装のラフ図。
ビジボでの良大くんの「静かなるゴン」発言で、
ある程度覚悟?していましたが、まさかここまでとは…(苦笑)
にゃ、でも本当に素敵なお話でした。
ドラマ化して欲しいくらい。

コージから「しくじっちまった」って電話がかかってきたとき。
敦盛2011に似ている曲とか「~~に憧れて」が頭をよぎっちゃいましたよ。。
そこくらいかなー。お話とは関係ない世界を彷徨ったのは。


コージがいなくなった日常を感情なく読み進めるゴン。
ムライ先生が奏でる色のない声と想像する情景とが重なり合って。
まるで実際の会話を聴いているかのようでした。
そしてコージが亡くなる時の消え入るような泣き声。
ムライ先生、本当に泣いてる??と錯覚するくらい
リアルすぎて、胸が締めつけられました。

それとは逆に。
子どもの頃の時のちょっぴり甘えたゴンの声と、
コージのぶっきらぼうだけどゴンに対する愛情溢れる声。
それらを聴いていると、二人が本当に本当の兄弟のようで。
普段はやんちゃなたっきー先生(苦笑)が、
ココでは非常に頼もしいお兄ちゃんに見えました。
(ん?なんか失礼なこと言ってる??)
ちょっと前に聴いた滝口王子とは大違い(爆)
そりゃたっきー先生、抜け殻になるわな。。。と思っちゃいました。


幼いころ、公園のブランコで遊んでいて、
足が痛くなったゴンをコージがおんぶした帰り道。
ふたりが眺めた夕陽を照明で表現していたのですが、
カラスの鳴き声が聴こえてきそうなくらいに
リアルでそして本当に綺麗でした。

ちょっと小高い丘に続くような坂道から眺める夕陽。
街全体がオレンジ色に染められていき、
ふたりのほっぺたも夕陽色に染まって。。。

そんな情景が浮かびました。


途中からは原作のお話が頭をちらほらと浮かび。
そうなると聴こえてくるムライ先生のお話と
自分が子どもの頃に読んでいたお話とが
オーバーラップするようになってしまい。。
あらゆる感情が波のように押し寄せてきて、
途中からは泣きながら聴いていました。

悲しい結末に繋がるしかない展開。

ラストシーンのゴンが見た青い空。その後の真っ暗な世界。
コージが亡くなる前と同じこの言葉。

「だめだよ俺、保険証持ってねえよ」

ゴンがこうつぶやいた辺り。
正直、苦しかったです。

最後の「ゴン!」って呼ぶコージの声。
たっきー先生の声が今でも耳に残っています。


悲しい結末だけれども。
コージのいない世界を惰性で過ごしていたゴンにとっては、
これからはずっとずーーっと大好きなコージと一緒にいられる―

もしかしたら幸せな結末なのかもしれないな。