あれはわたしが30代後半、いわゆるアラフォーの頃。
天気のよい昼下がり、てくてくと歩いていた。
前を歩くのは、わたしよりも若い男子。
今の若い子って可愛いんだなぁ。
なんとなくそんなことを思いながら歩いていた。
ん?
前から視線を感じる・・・。
チラッ。
チラッ。
気のせいじゃない、よね?
前を歩く男子が、チラチラとこちらを振り返っている。
彼の後ろにいるのは、わたしだけ。
え、なんだろう。
何かしました?
怪訝に思い、身構えるわたし。
前を歩く男子は、もじもじしている。恥ずかしそうな素振り。
その後も、何度も何度も振り返る。
何?
何なの?
あまりの挙動不審ぶりに、そのときのわたしの眉間には皺が寄っていたに違いない。
なにかを言いたそうにしていた彼。決心した様子。ついに声を掛けられる。
「あっ、あのっ!」
「はい?」
距離感を保ちつつ、次の言葉を待つ。
まさかこんな言葉を掛けられるなんて。
「ぼくとそこの横断歩道まで一緒に歩いてもらえませんか?」
はいーーー!?お、横断歩道!?
・・・。
新手のナンパである。
なんて斬新な。
アラフォーでしたがナンパされました。年下男子に。
彼はランドセルに交通安全のカバーをしていたから、小学1年生。
えぇ。小1男児に、ナンパされました(笑)
横断歩道までは、徒歩で5分ほど。
その間、ひたすら
「ぼく〇〇できるんだよ!」
「ご飯たくさん食べられるんだ!」
「歯磨きニガテだから虫歯になっちゃった!」
ニコニコ顔の男児の話を
「そうかそうかー」
「それはすごいねぇ」
「わぁ、大変だあ!」
ナドナド相づちを打つことに(笑)
いいんだけどね。楽しいし。
それより、見知らぬ大人にどんどん話しかけるの、今の時代大丈夫?
逆に心配よー。
人懐っこくて可愛いんだけどね。
気をつけてね!
彼とはそれっきり。
名前もわからないまま。
その後会うこともなく。
あれからもう、7、8年は経っている。
今、どんな少年になっているのか、密かに楽しみなのである。