9/7 追加利下げは示唆せず
【米経済コラム】今月のFOMC、追加利下げは示唆せず-J・ベリー
9月7日(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)が18日に開催する連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標が現行の5.25%から引き下げられるかもしれない。だが、それは単なる0.25ポイント利下げであって、追加利下げを示唆するものではない。
多くの市場関係者は既に、金融市場の混乱に対応し利下げすることを拒んだ金融当局にがっかりしているが、次回FOMCで0.5ポイントの利下げを望む向きが、再び失望することは目に見えている。金融当局は景気を大きく落ち込ませないための保険として利下げに踏み切るかもしれないが、住宅市場以外では米経済に深刻な問題があるとの兆候は見受けられない。
新たに発表される統計が次回FOMCの結果に影響を与えることはあり得るが、金融当局者は今、景気の急降下や大手金融機関の経営破たんの可能性についての懸念は全くしていない。
バーナンキFRB議長はワイオミング州ジャクソンホールでの8月31日の講演で、「住宅分野の急激な落ち込みもかかわらず、景気が緩やかなペースで拡大を続けながら夏季に入ったことを新しい統計は示している」と言及。議長は、コマーシャルペーパー(CP)市場を含む金融市場での突然の流動性低下を考慮すると、過去数カ月間、もしくは過去数四半期の統計が「経済活動とインフレの見通しには、通常に比べて有益性が低いかもしれない」ということを認識している。
今回の危機が、住宅市場を除いて全般的に健全な経済活動にとって向かい風であるのは疑いもない。大半の金融機関は高い収益性を維持しているが、こうした異例とも言える時期において、バーナンキ議長は、「最もタイムリーな指標と全米の企業と銀行から集めた情報に特に注視する」とも述べている。
ベージュブック
9月5日公表の地区連銀経済報告(ベージュブック)はそうした全米から集めた最新情報の要旨だが、4地区で景気拡大ペースの低下が見られたものの、 12地区すべてで引き続き景気が拡大していることが示された。個人消費は全般的に伸びており、生産活動も大半の地区で拡大している。雇用も依然として増えている。「金融市場の混乱の経済活動への影響は、不動産以外は限定的だった」というのがベージュブックの結論だ。
金融当局に緊急行動を求めることを示唆するものは何もなく、18日のFOMCで議論されることは恐らくリスク管理の問題だ。経済指標が景気の健全さを示し続けるなら、バーナンキ議長ら当局者は経済見通しに対する極めて大きな不透明感を考慮し、金融市場の混乱が予想以上に大きくなる場合にも備えて、 0.25ポイントの利下げが最善だと判断することになるだろう。
インフレ懸念後退
景気減速の可能性がより大きなリスクとなっていることが明確になりつつある現在でも、金融当局はインフレ懸念をすべて投げ捨てたわけではない。金融当局にとっての良いニュースは、コアインフレ率が落ち着いており、FOMCが経済成長への脅威に対処できる余力が高まったことだ。
7月の食品とエネルギーを除くコア消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.2%上昇。金融当局が好んで目安とする個人消費支出(PCE)は、7月のコア価格指数が1.9%上昇と、バーナンキ議長ら一部の金融当局者がインフレ率の望ましいレンジとしている1-2%にとどまっている。
コアインフレ率とインフレ期待がレンジ内にとどまり続け、住宅問題や金融市場の混乱が広がり景気を悪化させる可能性が高まれば、金融当局者はより積極的な行動で対応するだろう。
ミシュキンFRB理事がジャクソンホールでの会議に提出した論文が示すように、中央銀行が資産価格バブルを特定したり、それに対し多くの対応をすることは不可能だろう。だが、そうしたバブルの崩壊に伴うダメージを最小限にするため、中銀は積極的に先を見越した措置を取ることができ、またそうすべきでもある。
ミシュキン理事は言う。「住宅関連の金融メカニズムをめぐる不透明性は、科学的知識を活用する金融政策が依然としてアートであり続ける1つの理由を提示している」。今年中に金融当局の手になる多くのアートを見てみたいものだ。(ジョン・ベリー)