7/3 満井忠男、緒方重威氏
【本誌バックナンバー】
05年2月28日号に今、時の人となった、満井忠男、緒方重威氏を嵌め、1億円を詐取したとして1審で懲役3年6月、控訴中の事件が出ているので再録する
●はじめに
本誌は05年2月28日号で<【人と事件】、旧知の会社社長から「弁護士に騙された」と電話あり、京都何有荘1億円詐欺事件>という見出しの記事を掲載した、旧知の会社社長というのは今、注目の元不動産会社「三正」社長、満井忠男容疑者だ。満井・緒方氏の関係を知る上で参考になるのでは、と考え再録することにした。記事の本文は次の通り。
●26日午後7時頃
26日19時頃、旧知の不動産会社社長T氏(71)から本誌に「今まで京都に行っていた。1億円詐欺事件は弁護士が付き添い、その弁護士が買手の大学の代理人であるかのように振る舞い(大学が買うという)買い付け協定書は間違いないというから信用し1億円を出した。その弁護士も逮捕されるだろうが、逮捕されないにしても損害賠償請求訴訟を提起するし、京都弁護士会に懲戒請求する」などという内容の電話があった。
話の内容からインターネット上で報じられていた、明治時代の実業家の元別邸で回遊式の庭園で知られる「何有荘(かゆうそう)」(京都市左京区南禅寺福地町)の売買に絡む詐欺事件について言っているように感じられたが、Tは携帯電話からかけていた模様で記者(鷲見一雄)の問いには答えず、間もなく切れてしまった。
●1億円が9億円になる
情報を集めてみると、
「京都府警捜査二課と川端署が26日、東京の不動産業者に虚偽の契約書類を示し1億円をだまし取ったとして、詐欺などの疑いで、京都市左京区の建設会社「日本工業」社長大山進容疑者(66)と大阪市東成区玉津、不動産業富美本勝治容疑者(57)を逮捕したこと。
大山容疑者らは、京都地裁で競売中の何有荘の担保権抹消や立ち退き費用名目で金をだまし取ろうと計画。02年3月中旬ごろ、東京都の不動産業者Tらに「権利関係をきれいにすれば、京都市内で大学を運営する学校法人が38億円で何有荘を購入する。担保抹消の費用を提供してくれれば9億円を配分する」などとうそをいい、虚偽の買い付け協定書を示し、同年4月に現金1億円をだましとった」疑いがかかっていること。
そしてさらに、大山容疑者が、架空の売買話をした際、京都弁護士会所属のN弁護士が同席、大学を経営する学校法人の代理人でもあるとうそを言ったとかで、府警はN弁護士からも任意で事情を聴いていること」
などが分かった。
前述したTはまぎれもなく1億円詐欺の被害者で告訴人だった。
●主役は京都の影の権力者
大山容疑者といえば京都の政財界のフィクサーとして知られた人物。「日本工業」は旧住宅金融専門会社(住専)「日本住宅金融」の大口貸付先で、全国11位。
同容疑者は61年、日本工業は設立。公共土木事業や大型開発などを請負い成長、一時は京都でトップ級の建設会社に育てあげたが、バブル景気時に金融機関から膨大な融資を受け、その後、資金繰りが悪化。00年に事実上、業務を休止した。99年に整理回収機構から貸金約380億円の返還を求めて提訴された。
大山容疑者が約20年前に取得した何有荘は91年に、関係する宗教法人「大日山法華経寺」に所有権を移したが、住専の大口融資先だった日本工業が経営破たんしたため、担保の何有荘は差し押さえられ、京都地裁で競売されたが、大山容疑者は敷地内に住み、占有を続けてきた。
大山容疑者は、会津小鉄会の元会長(故人)ら他の4人とともに、名前に「山」の一字が付くことから「京都五山」と呼ばれる陰の権力者の1人。京都の土木建築、不動産業界のフィクサーとして知られた。
●被害者の説明
27日朝、被害者のTは次のように説明した。
「大山は5000坪からの豪邸に住んでいた。紹介者があり、02年3月16日に初めて会った。京都市内の大学を経営する学校法人U学園の顧問と称するN弁護士も同席した。4月27日にはこちらもA顧問弁護士(注・緒方弁護士のこと)を同道してNの事務所に行った。
その際、A顧問弁護士が『38億円で買うという買い付け協定書は先生が作ったのか』と質問すると、N弁護士は『自分が作ったわけではないが、間違いない』という返事だった。
こっちは十何億円を出して土地に付いている諸々を整理するわけだから履行できない場合は双方が38億円の20%のペナルティを払う契約だった。
A弁護士はさらに『学校法人が買わない場合は20%のペナルティの支払いを履行することになっているが、その金は先生が預かっておいてほしい』と言うと、N弁護士は『理事長に聞いて履行します』と確約した。それで1億円を出した。N弁護士が存在していなければ出さなかった。告訴は2年前にした。」
京都の不動産関係者は「T氏も大山容疑者たけではなくN弁護士が太鼓判を押すので濡れ手に粟の金儲けができると誤信させられたのだろう。大山容疑者は逮捕されても塀の中には落ちないことで知られていたが、今度ばかりはそうはいかないのではないか」と言っていた。(以上、本誌05年2月28日号)
●改めて鷲見本誌編集長のコメント
「大山被告は05年11月9日、懲役3年6月(求刑、懲役5年)を言い渡した京都地裁判決(1日)を不服として、8日までに大阪高裁に控訴した。この話を満井氏から聞いた時、2年3月余後、同氏や緒方氏が詐欺罪で逮捕されるなど夢にも思わなかった」
by「司法ジャーナル」