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3/29 コラム

【米経済コラム】米金融当局を無力にするインフレの謎-J・ベリー
3月29日(ブルームバーグ):米金融当局は、有効な手だてがほとんどない一つのインフレ問題を抱えている。それは家賃の上昇だ。

現行5.25%のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を引き上げても、問題は改善されるどころか、悪化するだけだろう。なぜなら、これは住宅価格の急上昇と急降下の結果によるところが大きいからだ。利上げは住宅価格をさらに押し下げかねない。

バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は28日の上下両院合同経済委員会で証言し、この問題を認めた。バーナンキ議長は、コアインフレは「引き続き居心地の悪い高い水準にある。例えば2月のコアCPIは前年同月比で2.7%上昇と、前年同月の2.1%上昇を上回るペースだ」とし、「最近の家賃上昇は、家賃と帰属家賃(旧持ち家経費)ともに、過去1年間のコアインフレの上昇のかなりの部分を占めた」と述べた。

確かに、2007年2月の家賃上昇率は前年比4.6%と、06年2月の同 3.1%から上昇。同等の住居を借りた場合の家賃の調査結果に基づく住宅所有者のコストを示した帰属家賃の上昇率は同4.2%と、1年前の2.5%を上回った。この2つの家賃指標は、コアCPIの構成指標の40%近くを占めており、過去1年間のコアCPIの加速の主因だ。

つまり、労働市場や製品市場のひっ迫はインフレ圧力を高めてはいるものの、金融当局が望む水準以上にコアインフレを押し上げている本当の犯人は家賃だということだ。

家賃上昇

バーナンキ議長は28日、「家計にとって、住宅所有の金銭的魅力は薄いと受け止められるようになり、賃貸住宅に需要がシフトしたことが家賃上昇の加速の一因かもしれない」と述べた。

ストーン・アンド・マッカーシー・リサーチ・アソシエーツのエコノミスト、レイ・ストーン氏は、住宅価格上昇による家賃抑制効果に焦点を当てた3月21日付の分析リポートでこの点に言及。最近の住宅価格の軟化は逆の影響をもたらしたと説明している。

ストーン氏は、「02年前半から05年前半にかけて住宅価格が急上昇したなかで、家賃は総じて抑制されていた」とし、「この時期に帰属家賃のコアCPIへの寄与が約1.4ポイントから0.7ポイントに低下した。これでコアCPIの減速の大部分が説明できるし、一時は存在したデフレ懸念が増したのもこのためだ」と分析。「最近は、住宅価格が大きく鈍化し、家賃は急激に上昇し始めた」とし、「住宅価格の下落期には住まいを探す人は購入よりも賃貸を選ぶため、賃貸物件の需要増加が促され、家賃上昇につながるというのが最も一般的な説明だろう」と述べた。

買う理由

こうした一般的説明は、地元の不動産市場に関する多くの報道でも裏付けられている。一戸建て住宅やマンションの価値が数カ月や数年先に下落する可能性がある時に、買う理由があるだろうか。

バーナンキ議長は議会証言で、「持ち家市場の需要が落ち着き、賃貸物件の供給が増えれば、家賃上昇は減速し始めるはずだ」と述べ、「減速の程度とタイミングはまだ不明だ」と付け加えた。一つ明らかなのは、米金融当局はそのタイミングに影響を及ぼすことがあまりできないという点だ。

ストーン氏は「住宅価格の一層の鈍化を促す可能性のある引き締め気味の金融政策は、皮肉にも帰属家賃を結果的に押し上げ、最終的にコアCPIの上昇を招く恐れがある」と指摘した。

それでは、利下げはどうなのか?

利下げは、想定外の影響を及ぼすことはないかもしれないが、家賃上昇の抑制に必要だとバーナンキ議長が指摘した住宅価格の安定化を促進するかどうかは全く分からない。住宅市場のバブル崩壊は、住宅ローン金利の上昇によるものではないし、経済見通しが弱まらない限り、連邦公開市場委員会(FOMC)は利下げする考えはない。

バーナンキ議長が証言で示唆したように、政策金利が当面は据え置かれるなら、住宅価格が安定し、家賃が落ち着くまでにはしばらく時間がかかるだろう。この調整には長いタイムラグがあると言うのは、ゴールドマン・サックス・グループのエコノミスト、ジャン・ハッチウス氏だ。

現実に目を向ける

ハッチウス氏は「住宅市場では、価格は通常、量に遅行する」とし、「売り手は需要が干上がっても売却希望価格を下げ渋るため、市場鈍化の最初の兆候は、売買件数の減少という形で表れるのが普通だ。売り手が現状を認識して価格を下げるのは、緩やかなペースでしか進まない」と指摘した。同氏は、住宅販売件数と着工件数は近く下げ止まったとしても、住宅価格は今年と08年の大部分は下落する可能性があるとみる。

要するに、米金融当局はにっちもさっちもいかない状態なのだ。住宅価格のバブルは、住宅ローン金利の大幅低下によって生み出された側面が大きい。そしてバブルの破裂はコアインフレを高め、しばらくはその状態が続く公算が大きい。

こうした現実を考えると、金融当局はコアインフレが本当に高過ぎるのかどうかを再検討すべき時なのかもしれない。このような状況での利上げが、理にかなったことでないのは確かだ。(ジョン・ベリー)